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機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第25話 〜 罪の在処 〜

■新OP

EDはrie-fuさんの楽曲だと思っていましたが、変更ないんでしょうか。新OPに関しては、曲は「僕たちは迷いながらたどり着く場所を探し続け♪」他がデス種ストーリーを反映してるっぽくて好みなんですけど、曲と映像があってないような…。慣れの問題?

内容的には深読みし放題。本格的な三主人公体制への移行、ホーク姉妹物語、ミリィのAA参入&カガリ脱退、巨大Gにステラ搭乗など、おもしろそうなネタはいくつかありますが、特に気になるのがシンとルナのペアショット(←ミリィの青化もかなり意外でしたが)。二人あわせてミネルバ内異端分子化?

もちろん、全てマジネタとして捉えるわけにはいきませんけど、本編でもレイ物語やAA的正義の否定に絡んで人間関係が交錯していますから、序盤から固定されてきた所属関係がかなり激しく動きそうな気配です。一番のオモシロネタはジェットストリーム!×3ですが。


■続・すれ違う視線

すれ違いの中心点は、プラント的正義の正当性ですね。視聴者的神目線で見ていると気づきづらいところですが、見ているものが違うからこそすれ違い、道を分かち、争いに至る(?)というのがいかにもデス種的。しかも、見ているものは実は同じで、誰かさんが違うように見せかけているっぽいところも妙にデス種的。アスランの見ている戦局、AAの見ている戦局、シン他ミネルバクルーが見ている戦局、ファントムペインの見ている戦局。そのズレによってすれ違った個々の勢力が、今後どう交わることになるのやら。

内容的には、完全別離&キラの軽い自己否定と、見どころたっぷり。理想一辺倒のキラに対して「お前の手だって、既に何人もの命を奪ってるんだぞ!」と行動が伴っていない愚を指摘するアスラン。「自分だけわかったような、キレイ事を言うな!」の台詞なんてシンそのものですから、アスランのミネルバ化は完了したようですね。とはいえ、回想をベースに自分解釈&思考停止するアスランの姿がいかにもデス種的で、前後の状況から考えて当然の帰結ではあるにせよ、根っこから自分解釈をひっくり返される気配が濃厚すぎ。

さりげに気になるのが婚約指輪のカットイン。カガリとアスランの別離が深刻であることをアピっていますけど、裏を返して最終的によりを戻す路線につながるような、逆にそのまま別離しつづけることもありえるような。しかも後者の場合、典型的なパターンとして「一方の死→それを受けてもう一方が改心」という古典文法がありますから、見ようによってはかなり不吉かも。タメにタメた成長物語の先に待つものは生か死か。心情的には後者はきついなぁ…。


■AA的正義の否定

AA的正義が否定的に描かれてきましたが、今回もその流れは健在で、アスランだけでなくキラも「だからもう、本当に嫌なんだ、こんなことは」と、己の行為に否定的。できればキラやカガリの自省をもう少し見たいところですが、ま、種ですし、このくらいの軽い自己否定で締めるような気がします。これで底をうっておいて、今後は、否定されたAA的正義がより高次の正しさを目指して再始動する、というのが順当なところかと。

今後に関しては、天使湯の会話で「やり遂げる意志」を再確認したラクスとカガリが軸になりそうですが、意志そのものは再確認できていますから、動き出したらサクサク話は転がりそう。どう転がっていくことやら。真・ラクスの復活に期待しまくりです。ロジカルトーク炸裂してほしい…


■ロドニアのラボ(?)

ミネルバクルーから見ればAAも連合もオーブも失点だらけで、そんな相手と戦う自分たちは正しいんだ、と。敵失メインの典型的詭弁テクニックですが、それをより一層促すためのラボ情報漏えいだったような。パズルのピースが少ないので断定的なことはわかりませんが、ストーリーの内容的中核ネタ(≠テーマ的中核、キャラ描写的中核)がようやく転がりはじめたので、ワクドキです♪

内容的には、強化系開発の施設っぽい感じ。新旧3人組の出身地であるところを見ると、ブルコスやロゴスとのつながりが深そうですが、レイの記憶の中に議長と赤服金髪の男(←クルーゼ?)も登場しますから、プラントにも関係者はいそうな気配。そのまま受けとめると議長はブルコスやロゴスの関係者ってことになりますが…。レイの記憶については、記憶の中のレイが外出用の洋装をしているところからすると、外部からこの施設に来訪した時の記憶でしょうか。

断定的なことはわかりませんが、とにかく深読みし放題。ただ、構成やキャラ描写と異なり、あまり先入観持ちすぎても今一つ楽しめなさそうなんで、あたま真っ白にして期待だけしておきます。


■ブロックワード使い勝手よすぎ

どんな突発的ご都合主義展開も「ブロックワードが発動して壊れたから」で理由づけ。設定がそのまま伏線になりますから、ストーリー制作上ものすごく便利ですね。

今回のステラの無断出動にしても、ミネルバvsファントムペインの乱戦内でステラ一人を捕獲することは難しかったでしょうから、ステラ単機との戦闘に持ちこむ必要があったはず。けれど、ステラが一人で出動するような伏線はなく、というか、電波娘一人をMSに乗せて単独行動させる理由なんて待機以外は考えられませんから、伏線も理由づけもないまま「そんな気がしたから」程度の動機で出動させるしか手はなかったでしょう。それを「壊れたんだから仕方ないよね」と違和感なく演出したのが、ブロックワード発動&混乱という設定的な伏線だったわけで。

しかも、大きく混乱するのはブロックワードが発動した時だけ。通常時はそこそこまとも(?)な言動ですから、使い分けも可能。今回のようなケース以外でも大抵の突発的行動に対して「壊れたから」と理由づけることができますから、話を作る上でこれほど便利な設定はないような。


■シン&ステラ、戦場での邂逅

AAは戦場を混乱させるだけ、連合は非道行為をやりたい放題、オーブは連合に尻尾ふりふり。そんなムチャな他勢力に対してプラントは和解の道を模索しながら自衛路線を貫いてきたのですから、シン目線で見ると、23〜25話中盤は自分正義の一人勝ちだったわけです(←敵失メインなんですけどね)。ところが、そうやってシン的正義を持ち上げておいて、最後の最後にステラを通じて問題提起。流れがスムーズで心地良いです。

ラボ出身のステラは、シンにとって守るべき弱者であるはず。けれど、そんな弱者であるステラが敵のパイロットであるというもう一つの真実。守るべき弱者=戦うべき敵。しかも、ステラはアウルのママンやラボを「守る」ために出撃したっぽいですから、それ自身がもろにシン的正義ともかぶります。さらに、ステラ→シンのつながりも僅かながらも残っている模様。それらがシン的正義に亀裂を入れまくるでしょうから、シンが己の正義について見つめなおすきっかけになりそう。敵って誰だよ、みたいな。

加えて気になるのが、シン的「守るべき弱者」がプラント市民に限定されるかどうかです。仮に限定されない場合、シンとミネルバが道を違えることもありえるような…。ま、どう転がるかは今後の展開待ちですけどね。どちらにせよ、何のため、誰のために戦うことになるのか、シン的正義が動き出す気配ですよ〜♪


■ファントムペイン的正義?

気になりまくったのがステラやアウルの「守る」ですよ。キラも守るため、シンも守るため、そしてファントムペインも守るため。そうやって見ると、PPサイド的「守る」も三主人公的正義に割って入る対等な価値観になるような気がしたりしなかったり。ネオも何か秘めたものがありそうですし。第3クールでは、これまで悪者的ポジションにいたPPが、AAとは逆の意味で相対化されるのかも。


■記憶ってのは、あった方が幸せなのか、ない方が幸せなのか

前回から今回にかけて、「記憶」というのがポイントになっていたような気がします。しかも、自分解釈&思考停止やブロックワード発動&混乱を呼びよせる一ファクターとして、ネガに描かれていた印象がチラホラ。

けれど、種世界の価値観を考えてみると、「理屈で考えればない方が幸せだったとしても、それでも守りたい記憶があるんだ」みたいな帰結の方が順当な気がしたりしなかったり。記憶にはネガだけでなくポジな側面もありますしね。

今のところ、記憶をメタに象徴するものとして「マユの携帯」「ステラがくれた貝殻(?)」がありますが、その行方が妙に気になり始めた25話。思いつき先行ですが、第3クールはその辺も深めてくるような気がします。



というわけで24話の感想終了。序盤からの三主人公すれ違い物語は一段落つきましたから、これからは個々の「正義」リニューアルに向けて話が動きだすことになるんでしょうね。人間関係も大きく変化していく予感。ただ、大筋としての課題設定はありますけど、基本的なベクトルが一旦リセットされてしまったために方向性が見えづらく、妙に感想が書きづらい…。見ている分には普通に面白いんでかまいませんが、おそらく2〜3話ほどの間で新たな伏線がはられることになるでしょうから、要経過観察です。



機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第26話 〜 約束 〜

■シンの「子どもっぽさ」

死ぬの駄目、怖い。そんなステラに、死なせてしまった妹を重ね、今度こそ死なせないために動くシン。軍務であることを解さずに自己中に動くネガ面と、直情的にステラを思いやり助けようと尽くすポジ面。やっぱ「子どもっぽさ」ってのはこういう両面ネタなんですねぇ。ネガドキポジドキ♪しかも、前回レビューで触れたように、そんな直情径行なシンの「ミネルバ所属パイロットとしての任務<守るべき存在を守る」という価値観が強くアピールされてオモシロ。やはりミネルバとの別離路線かなぁ。

ちょっと面白かったのは、今回のシンが前作10話でラクスを逃がしたキラと同じような行動をとっている点。同じような行動を描いておいて、今回はその行動をぷり尻艦長がきっちり否定するあたり、前作的正義の否定がここでも感じられて(・∀・)イイ!。シン=ステラ物語の中に前作的正義の否定話も同時につっこむ構成は、素直に上手かったです。


■ルナマリア物語

シンを見送るアスランに気づいていながら、これまでのように声をかけることをせず、アスランを避けたルナマリア。ぷり尻艦長に報告に行かないあたり、個人的なストーカー行為だったように思えますが(←艦長からも報告を促されていませんし)、そんな痛い子ちゃんなところは華麗にスルー。見るところはアスランとの距離が変化した点ですね。タメこんできていますよ〜。ホーク姉妹物語とあわせて動き出しそうな気配ですが、どう転がることになるのやら。


■シン=ステラ物語

予想通りにすれ違いました。片やステラを守るべき大切な存在として思いやるシンと(←「大切な」はまだ早いかも?)、片やシンのことを断片的にしか思い出せないステラ。出会いの記憶を自分解釈した二人がすれ違うところが、もう毎度おなじみの種パターンです。

なんてボケボケ考えていたら、ステラがシンのこと思い出しましたよ!まだ不安定なように見えますけど、前のパターンが「思い出作り→忘れる」でしたから、それを引っくり返した「忘れる→思い出す」のパターンにメラ燃え。しかも、引っくり返した要因はシンの献身。実際には脳内回路が偶然つながっただけなんでしょうが、シンの献身的な対応がそんな偶然に必然性を持たせているのがGoodです。

すれ違いの末にわかり合えた二人。そんな二人の刹那の接近に、物語全体の帰結が透けて見えたような気がしたりしなかったり。るろうにリスペクトだった前作に対して、今回は直情直球勝負のワンピースリスペクト路線かな?まずは棒球ストレートなシン的正義がステラという存在によってどう問題提起されるのかに注目です。


■3人組の行方

アウルとスティングの記憶を残したステラと、ステラの記憶を消されたアウルとスティング。シンポジションにステラ、ステラポジションにアウル&スティングが入り、ここでも出会いの記憶を軸に自分解釈がすれ違う予感です。となると、シン的正義への問題提起になるシン=ステラの関係性に対して、こっちはステラ的死生観への問題提起になるのか、はたまたファントムペイン的「守る」を深めるファクターになるのか。ラヴリー♪


■ロジカルラクスたん、復活!

わからない、だから、見る。

前大戦での失敗から戦うことを躊躇っていたラクスが、ついに、ついにッ、ついにッッ!、再始動!!!。当たり前の一歩、さりとて力強い一歩。ラクスファンな自分としては、そんな一歩を踏み出したラクスに燃えまくりです。躊躇いの中で動くことができなかった13話のフリーダム発進前シーンを回想しながら「わたくしももう、大丈夫ですから」と語るラクスにも、これまでのタメの深さとこれからのやり遂げる意志がうかがえて、ピカっと光る好ポイント。しかもこの台詞、明らかに13話のキラの「僕は大丈夫だから」に掛けていますから、ピカっと光るどころかビカビカ輝いているわけで。なんちゃって関西弁な虎、ラクスのアイドルっぷりに口を半開きな虎も笑えたw

先々を見ると、ここではミーアvsラクスを通じて、真の存在と偽の存在ってところを深めるんでしょうか。力を持った偽の存在と、力を失った真の存在。真とは?偽とは?みたいな。


■キラ的正義の再肯定&再始動、そして…

そんなラクスを「守る」ために戦うキラ。23話では意味を持たなかったキラ的正義ですが、こういう状況だとやはり(・∀・)イイ!。やはり、新キラ的正義はこういう路線に進むことになるんでしょうか。

などと思いつつ、気になったのは前作42話を思い出させるステキ構成。ラクスメインで虎操縦、ピンチの時に自由翔来。種42話とそっくりさん。ただし、その後に合流した42話と異なり、今回はノイズで会話がしりすぼみになったままそれぞれの道へ。なんかめっさ不吉…。カガリも不吉な気配を漂わせていますが、どっちも死んでおかしくない流れなんですけど…。ただ、進む道は別れても「大丈夫」のフレーズでつながった二人ですから、その言葉どおり「大丈夫」パターンも十分あり。しかもラクスだし。逝っちゃう場面が想像できん…。


■新ED

…良すぎ…

「♪いつでも思い出すけど、もうどこにも戻れない」。求めたもの、願ったもの、無くしたもの。そんな儚い幻を思い描きながら、それでも現実の中で強く生きる登場人物たちの今をアピールする構成。その対比構成がキレイすぎます。

迷いながらたどり着く未来を探し続けるOPと、理想を思い描きながら今を生きようとするED。一つの楽曲としては「ignited」や「life goes on」などの方が好みですが、OPとEDのつながりやバランスなどを見てみると、今期が種〜デス種を通したNo1かも。まぁ、求めすぎると堕ちていくのが種世界なので、夢幻はほどほどに、ってところですが。



そんな感じで第26話終了。ざっくり見てみると、シン方面ではシン的正義への疑問提起、AA方面では新しいAA的正義に向けたアプローチ開始、ファントムペイン方面は掘り下げ路線、ってところかと。これにアスランが絡みつつ、ミーア=ラクス物語やホーク姉妹物語が進展を見せれば、一気に動き出すことになるんでしょうね。



機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第27話 〜 届かぬ想い 〜

■「やつら」

チェスのゲームマスターは、どこまで盤面を読み、その盤面の中でどう駒を操っているのでしょう。ゲーム(?)の相手にしても、邪魔者ラクスだけでなく「そして、キラ・ヤマト」も入る模様。明らかにキラ個人を意識しているその台詞に(←しかも順番的にキラの方が重要視されているっぽい。遺伝子操作系?)、水面下で進む謀略の匂いがプンプン漂います。しかも、キラやラクスを「やつら」呼ばわり。今まで怪しい雰囲気はありましたけど、直接的に反ラクス&キラであることを口にしたのは今回が初めて。悪かどうかはわかりませんが、アンチAAであることは確定ということで。


■ジブリール&ネオの狙い

これが隠され続けていることが、パズルをわかりづらくしていますね。一応、ミネルバ追撃については「反連合のヒーローであるミネルバが目障りだから」と言っていますけど、再開戦前からミネルバをつけ狙っていましたから、額面どおりに受けとるわけにもいかず。

そこが見えないために、そんなジブっちに従うネオの真意も闇の中。はっきり描かれるまでは、もうしばらく待機ですね。パターンとしては「ジブっち自身は無能&裏で誰かさんが暗躍&ネオは実際にはその誰かさんの下僕+密約あり」みたいな展開もありですし。話の上で一つの鍵になるかも。

少し気になるのがジブっちのポジショニング。9話でのジャイアニズム全開なトークからして、ワガママ自己中キャラなのは確定だと思いますけど、それだけかなぁ…。感覚優先ですが「今自分たちの都合の良いことばかりを考えている」「なぜああも簡単に騙されるのか、あのコーディネーターどもに」なんて聞くと、ジブっちはプラント(←というか議長)の裏を知っているような気がするんですけど…。

現状では「正義や悪なんてものは相対的なものなんだよ〜」みたいな話が進んでいますが、その方向にあわせるなら、強烈にアピールされている「プラント的正義」「連合的悪」にしても、どこかで相対化する必要があるんですよね。そのためにジブっちの悪路線を裏返すってのはありじゃないかなぁ…。もちろん、ベースはワガママ自己中キャラに据え置いたままでしょうけど。


■ストーキング疑惑解消

艦長の指示でしたとさ。アスランのスパイ疑惑というよりAAの動向探索がメイン。ルナと艦長の会話の後、艦長と議長が対になって描写されるあたりを見ると、これも議長が命令の発信源だったんでしょうね。っつか、アスランは19話でAAの情報を議長に報告すると約束したはずですが、報告しないあたりを見ると完全信仰状態ではなくなったのでしょうか?さりげに微・疑いモード?

構成的には、単に謀略ネタアピールだけでなく、前作終盤〜現在に至るまでのAA行動の是非と善悪ポジショニングを、艦長→ルナに説明していると見せかけて、実は思いっきり視聴者に説明しているんですよね。前作終盤では状況が状況だけに遊撃的な役割を果たして戦争終結に貢献したけれど(=善)、今は絡みあう思惑の中で猪突猛進に動き回って戦場&戦局を混乱させるだけ(=悪)。

手法的に見て、軍議や上官との公的会話を使って説明臭いセリフを違和感なく表現するやり方ですが、地味に上手い。本編評価の状況的に、視聴者には「AA=絶対正義じゃない」ということが伝わっていないような所がありますから、しつこいくらいに説明する必要があるんでしょうけど、たぶんここまでしても伝わらないっす。一度装備した自分解釈フィルターはなかなか外れないっす。


■デストロイガンダム

あのねあのね、議長のPCに「デストロイガンダム」が表示されてるのねん(←ルナと艦長の会話後)。おかしいのねん。あれ、連合側の秘密兵器のはずなのねん(←冒頭でジブっちのPCにも表示されています)。

とりあえずは「議長=間をつなぐ存在=ジブっち」という構図が考えられますが、レイネタも踏まえながら見ると「議長=ロゴス=連合」疑惑がどんどん深まります。今はまだ、プラントの情報戦略の賜物という可能性もありますが、この先どうなっていくんでしょう。


■シンのステラに対する認識

シンのステラに対する認識は「薬漬け&怪しい技術で強制的に戦闘マシーンにされた弱者」といったところでしょうか。んで、シン的正義の公式にあてはめて「守らなきゃ」モードが発動しているのでしょう。どう転がっていくのやら。この手のネタは色んなパターンがありますしねぇ。


■オーブサイド

ユウナが全力でネオに操作されていますが、あそこまでおバカボンなら自分でも操作できるような気がしたりしなかったり。で、そんなおバカボンの横で静かに葛藤するトダカさんに燃え。軍人としての使命、国を守る責任、改革への希望。それらに折り合いをつけながら必死に戦っている姿がカッチョ良すぎです。まぁ、大人としてはアレな言動ですが、わかりやすさ重視の表現ってことで。

カガリも早く期待に応えにゃならんところですが、ヘッポコモードが続いているわけで。パチスロでいうなら天井一直線って感じ?このパターンだと「天井到達→REG単発」「天井到達→BIG連荘」のどちらもありえますが、はてさて。


■ファントムペインの思い

記憶をなくした二人と、記憶を奪った一人。何か大事なことを忘れている気がするアウルが、弔い合戦を胸に秘めたネオが、ステラが捕縛されているミネルバを攻撃。目に見えないすれ違いが、いい具合にタメモード。そして、ネオの「あの妙な艦(=AA)」発言。ネオ自身は記憶を有しているのかいないのか。PPはアスランの1クール宜しくタメてきてますよ〜。


■ミリアリア的「守る」発動

あたしのやることにあーだこーだ文句言ってフラレたのね、グゥレイトッな人は…。

ま、アホはほっとくとして、来ました!ミリアリア的「守る」宣言。無色→青への回帰は少し残念でしたが、それでもデス種的には「守る」を胸に秘めたキャラは重要キャラなわけで。しかも私『も』ですよ、私『も』。わかりあうことが難しいものとして描かれている種世界ですが、共通体験がベースにあればわかりあうこともできる模様。というか、おそらくその辺りが福田監督的な「NT」へのアンチテーゼなんでしょうね。

けど、ミリィは完全に青になるんでしょうか?ジャーナリストとしての取材成果、特に偽ラクス騒動(&議長陰謀路線)については、自身がラクスと知り合いだということもあってジョーカー的重要ポジションにいると思うんですけど…。う〜みゅ。


■やり遂げられる?やり遂げられない?

信念に基づき、自分のできることをやり遂げるためにAAが再発進。海底深くに潜っていった14話のマイナス演出とは異なり、今度は空高く飛翔していったあたりがプラス演出っぽいのですが、なんかこうミスリード狙いのダミー演出気配が濃厚なんですけど…。だって、23話からAA的正義はほとんど変わっていないんですもん。

もちろん、種的には「やり遂げる意志」あたりがプラスに働くこともありえますけど、それだけではどうにも中途半端かなぁと。状況的にはオーブ&連合艦隊からミネルバを守ることがメインになりそうですが、結果としては、ここ最近の流れを踏まえてマイナス方向に働く予感です。

ただ、23話と違ってAA的正義を再度否定するだけでは尺がもったいないんですよね。話を転がさにゃならんのが2〜3クールですから、5話たっても同じことをするだけでは意味がありませんし。伏線や構成的に見ても、転がさにゃならんネタは盛りだくさん。その辺りのネタを混ぜ混ぜしながらどうやって全体の調和を図るのか。そういった構成面の練りこみも、28話の見どころの一つになるのではないでしょうか。逆に、このタイミングでAA的正義の再否定だけだとしたら、話をまとめきれるか不安になるかも。


■「真とは?偽とは?」祭りの予感…

前回のレビューでラクス復活に掛けて「真とは?偽とは?みたいな話になるのかも」と触れましたが、今回のアウルの「な〜んか大事なこと、忘れてるような気がするんだよな」の台詞にも同じことを感じまくり。

真の存在と偽の存在、真の記憶と偽の記憶。自分解釈は人によって異なるものであり、そのすれ違いによって争いも起こるけれど、元になる現実は一つ。ならば、その「元になる現実」を共有することで争いはなくなるんじゃまいかん、みたいな話に持っていくのかなぁ。偽りの記憶や自分解釈で歪んだ視界ではなく、そこにある揺るぎない現実こそが大切なんだよ、それを探そうとする人の意志こそが大事なんだよ、みたいな。

だいぶ前にも触れましたが、シン的子供っぽさのポジ面=しがらみに囚われない純粋さはそのためのファクターになるのかも。と、再度思いつきで話してみる。


■第26話感想追記 〜「必ず帰ってきます、あなたの元へ」〜

ラクスの復活ネタに絡んでのものですが、ラクスの「必ず帰ってきます、あなたの元へ」は、種48話での「帰ってきてくださいね、私の元へ」に掛かってるんですよね。種48話のラクスの言葉は、これから戦場に向かうキラにかけた言葉だったわけですが、その言葉を今回使ったということは、今回のラクスもあの時のキラと同じく「戦いにいく」モードなわけで。

憎しみの連鎖に対して武力で抗うことしかできず、大切な仲間も死なせてしまった悔い。そんな失意の底から立ち上がり、再び戦う決意を固めたラクス。そんなラクスの復活に長期的な掛け台詞を絡めて深みを持たせたところが、いかにも種演出っぽくて良かったです。



という感じで28話へ。第3クールに入って3話たちますが、各勢力&人物についてのネタふりは為されましたから、次の28話で進んでいく方向がはっきりしそう。どうなるんかねぇ。



機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第28話 〜 残る命 散る命 〜

■第28話雑感

予想通りにAA的正義轟沈。やはりミスリード狙いのダミー演出だったようで、23話以上に否定されてEND。というか、ウズミンとトダカさんを入れ替えれば23話そのもの。そんな28話です。

というかですね。「一部の媒体で新型ガンダムが別の名称で発表されました」の「一部の媒体」ってオマイんとこの公式HPやん?それと、ザクはPS装甲なしですかい?ルナザク、実弾ミサイルでダメージくらいまくってるんですけど。さらに、ブラストのビームが水中を突き進むって?

などなど。ただ、話全体としては、個々の価値観が錯綜している辺りに「争い」というものをよく表現できていて、見ていて面白かったです。ということで、そろそろレビューをば。今回は特に長いです。


■戦闘シーン

珍しく気合入っていましたね。ただ、主力MSが強すぎなところや、飛び回り→止め絵アタック→ハッタリ全開なところは相変わらずですから、もう狙ってやっていると見ていいかと。情報量を多くしてある程度の大人でも楽しめるようにするのではなく、情報量を少なくして単純化&派手さ重視にすることで対象層を子ども&ライト視聴者に絞り込んでいるのでしょう。

ま、見ていてモリモリ燃える戦闘ではありませんが、これはこれであり。むしろ、聖闘士星矢やテニプリレベルのビジュアル重視な止め絵必殺技合戦までハッチャケてもらいたいかも。


■アスラン・ザラ

さすが回想王です。AA的思考とミネルバ的思考の間を行ったり来たりした結果、場に流されるままに自分を見失うあたりが、いかにもアスラン・ザラ。芯がフワフワしていますから、キラのように「やり遂げる意志」を持った相手にかなうわけもなく、種割れすらせずに瞬殺。

こうやって見てみると、パトリック&ザフト依存→AA依存→カガリ&オーブ依存→議長&ミネルバ依存と、依って立つ相手が変わっただけで、結局は昔と同じ無脊椎動物。8話で自立完了と見せて、この期に及んでフニャフニャなのがステキすぎ。とりあえず、他人の言に右往左往するのではなく、自分の頭で考えることを徹底し、自立せねば。逆に言うと、種割れしたキラ&シンはそれができているということなんでしょうね(←それが正しいか間違っているかは別ですが)。

ということで、今後のアスランの課題は「いかに種割れさせるか」です。まぁ、種割れは象徴的なものですから、内容的には「強い信念ゲットだぜー」ですね。アスラン中心に見るならば「その過程を楽しむ→種割れした時に爆燃え」というのが楽しめる見方かも。それ以外にも、新型機拝領やAAサイドへの揺れ戻しイベントなど、ストーリー上の必須事項はそこかしこ。新型機拝領に際して一度プラントに戻るかもしれませんが、ついでにラクスに再説教されれば話が早いんですけどねぇ。


■キラ・ヤマト

23話&種35話と同じシチュ&構図で飛来したキラ自由。どうやら「戦争で誰も死なせたくない」「同じ願いを持ったカガリを守る」的な想いにモチベイトされているようです。ラクス襲撃の時もそうですが、「眸にうつる身近な人を守りたい」というボトムアップな視点で戦うあたりがいかにもキラ・ヤマト。フワフワ種なしアスランを「やり遂げる意志→種割れ」コンボで圧倒するあたりとあわせて、まさしく少年マンガ的パターンの王道です。

ただし、少年マンガ的パターンを戦場にあてはめた結果は惨憺たるもの。セイバーを破壊したフリーダムの表情がダークに描かれている辺りを見ても、キラ的正義はカガリ的正義と共にかなり強烈に否定されています。今後の変化&成長は必然ですが、ベースに「やり遂げる意志」がありますから、新キラ的正義にも期待できる予感。キラ的正義のリニューアル過程とあわせて、今から期待しておきます。

期待ついでに予測してみると、今のキラは、想いも力もあるけれど、それを発揮すべき場所が違っているんですよね。ボトムアップな想いを形にすることのできる力の使い道。想いと力を発揮すべき場所。それを見つけるのが今後のキラの課題になるように思えます。ミドルアップダウン路線が理想ですが、さすがにそこまで突っ込めないでしょうから、ボトムがトップに渡りをつけるヤングマンガ化しそう(←ナゾ


■オーブ軍隊長さん

この人、14話でアスランに防衛アタックしてきた人ですね。前作のウズミさんといい今回のこの人&トダカさんといい、オーブの人って自爆シークエンス梱包タイプの強化人間ばかり?

ポジション的にはトダカさんとほぼ同列。軍人として、それが間違った命令だとしても、国を守るためには命を懸けて命令を死守すべし。そう唱えて戦い抜いたオーブ軍隊長さん&トダカさんペアは、カガリに対して「オマイの戦うべき場所はどこやねん!」と訴えるキャラのように見えました。

戦うべき場所にこだわりぬいてミネルバに大ダメージを与えたオーブ軍隊長さんと、停戦を訴えるだけで何の結果も得られずに泣き叫ぶだけのカガリ。現時点での優劣(?)は決したかな、という印象です。追い撃ちのようにトダカさんの特攻も入り、カガリ的正義は否定されたと見ていいでしょう。二人の姿を見たカガリが「自分の戦うべき場所」に戻る説に一票です。

ただね、自爆(・A・)イクナイですよ。カガリ的正義を否定するために勇壮に描かれましたが、後々きっちり相対化してほしいでっす。


■カガリ・ユラ・アスハ

ボロボロですが、まだ底は深い気配。タケミカヅチクルーがAAに緊急避難してくるようですから、そこでオーブ兵から何を言われるのかに注目でしょう。個人的にはボコ批判モードに一票。国を捨てるわ、今さら勝手なことを言うわ、勝てたはずの戦闘を邪魔してオーブ軍の被害を増やす原因にもなるわ、泣くだけだわで良いところがありませんから、きっちりボコにしてほしいところです。

というか、因果応報論的な意味だけではなく、成長物語としても残り話数的にも、限界ラインが接近中。ラインをこえると「死亡→アスラン成長に貢献」的なオチしかなくなります。駄目モードに底をうって国家元首として成長するか、はたまた駄目モードを直進して死亡&起爆剤路線を歩むか。第3クールはカガリにとってのターニングポイントになりそうですね(←ターンしなかったら死亡)。

ただ、キラ的正義と共に否定されていますけど、ボトム重視の考え方自体は間違っちゃいないんですよ。戦場ではタリア曰く「馬鹿」ですが、日常では「人殺し(・A・)イクナイ」が基本。単に、装備している常識フィルターが違うだけ。要は、各々が装備している「常識フィルター」の違いに気づかず、勝手に「相手も自分と同じフィルターを装備しているんだろうな」と自分解釈しているからこそ、いつまでも解決の糸口が見つからないわけで。

そうなると、その違いを認識し、戦場フィルターや憎しみフィルターではなく日常フィルターを供するための行動に転ずる、というのがありな気が。今回のオーブ軍隊長さん&トダカさんの姿を通じて「想いを形に変えるために自分が戦うべき場所」を自覚した時、いろんな意味で大化けするんじゃないかと超予想。アスランからもそれを匂わせることを言われていますしね。


■トダカさん特攻の流れ

ミネルバを落とすために自軍機が次々と爆散
 ↓
ユウナ「ミネルバを!さぁ、早くミネルバを!あれさえ落とせばいいんだから、俺たちは」
 ↓
オーブ軍隊長がミネルバ特攻、ミネルバ大損壊
 ↓
ユウナ「そうだよ、それでいいんだよ、僕らは。ミネルバを落としさえすれば」(味方の死をスルー)
 ↓
トダカさんブチぎれ。ならばと、トダカさんも「ミネルバを落」とすためにタケミカヅチ特攻
 ↓
ユウナ「お前、お前ぇ!何をやってるんだ、トダカぁ!」
 ↓
トダカさん「ミネルバを落とせとのご命令は、最後まで私が守ります」「これでオーブの勇猛も、世界中に轟くことでありましょう!」


■トダカさん特攻の意味

ということで、トダカさんはユウナの「ミネルバを落としさえすれば」を受ける形で、タケミカヅチを特攻させる暴挙に出ています。勝てばいい、味方の損害は気にしない。そんなユウナ論理に対して、旗艦特攻と自らの死を以って「現オーブの行く末」を示したのでしょう。そして、そんな未来にならぬよう、他の兵士に希望を託してAAに渡らせたのでしょう。

ですから、単純な戦果を以ってトダカさん特攻の意味を測っても「アホだ」と見えるのは当然のこと。その「アホだ」という評価は、セイラン中心の現オーブ政権に対する評価に他なりませんし、トダカさん自身は己の死を以ってそれを諌めたにすぎません。軍人の立場から、死を賭して国を守る。そんなトダカさんに涙です。

ただね、トダカさんといい神風隊長さんといいウズミ様といい、自爆はいかんのですよ、自爆は。どこまでいっても「死」はネガティブでないといかんのですよ。たしかに今のカガリ的にはトダカさんやウズミ様は高い壁です。乗りこえるどころか、並ぶだけでも精一杯でしょう。けれど、こと「生き抜くことへのこだわり」という一点においては、カガリは絶対的なイニシアティブを持っているわけで(←種最終話参照)。

そうやって見てみると、カガリもシンのようにネガポジ二面キャラなのかなぁと思えてみたり。ネガ面として「生死にとらわれて大局的な判断ができない」、ポジ面として「どこまでも生き抜こうとこだわることができる」。ネガ面を裏返してポジ面とする。そうなるような気がする今日この頃。


■トダカさん特攻に関する演出

そんなトダカさんの特攻ですが、ラストのトダカさんの言(「既にない命を思うのなら、想いを同じくする者を集めて、アークエンジェルへ行け!」他)は、種40話のウズミ様を意識したフレーズが使われていました。また、話全体の構成としても23話をトレースした構成になっていて、その上で比較すると、今回のトダカさん特攻は23話ではウズミンの演説に該当する部分だったりします。

意識的にトダカさんとウズミンをかぶせたのでしょうが、そんなトダカさん=ウズミンの言葉を受けたタケミカヅチの面々が、カガリにどんな影響を促すのか。ウズミ様はカガリにとって追いつき追い越すべき壁ですから、かなり重要なカガリイベントになりそうです。想いを託されたタケミカヅチクルーは、2年以上も元首として成長できないでいるカガリに怒りの鉄槌ぶちかましておくんなまし。

そしてもう一つ。そんなトダカさんの特攻を受ける形で映し出された面々。ミネルバ、AA、PP、キラ、カガリ、オーブ軍兵士、そして、シン・アスカ。トダカさんが命をもって放った「希望」は、彼らにどう届くのでしょう。特に重要なのはシンですね。


第20話レビュー「オッサン」より抜粋
先読みすると、このオッサンなりに思うところがあってシンをプラントへと送り出したわけですが、オーブの現状を考えると、オッサンも連合&新生オーブの一員としてプラントと戦うことになるのは自明。オッサンの思いを自分解釈しているシンが、このオッサンと戦場であいまみえることになる流れですよ。となると、ステラと同じようにこのオッサンも、シンが見せられるもう一つの真実に関わってくるんだろうなぁ。敵兵の命や異なる正義の存在はもちろんのこと、シンの家族が心の底から願ったであろうシンの幸せとかも。そんな真実にシンがどんなリアクションを示すのか。今から楽しみで楽しみで。ワクワク♪

20話でトダカさんの放った「言葉」はシンには届かず、すれ違いのままで終わりました。しかし、トダカさんの放った「希望」は望みをつないでいます。それはシンにどう届くことになるのでしょう。今回の話単発では「戦争って切ないよね〜」という感想になりますし、爆炎に重ねて挿入されたあの日のトダカさん=シンの絵もやりきれないものがあります。ただ、そんな戦争の切なさを描くだけでなく、できれば長期的なタメ描写として先につなげてもらいたい、シンの変化と救いにつなげてもらいたい。それがぐらすの希望です。


■アウル・ニーダ

トダカさんの同じように23話と比較してみると、アウルの死はハイネの死に該当する部分になります。二人は「戦争だと割り切って戦っている」という点ではそっくりさんで、所属する軍が異なるだけ。その上でオモシロなのは、ハイネの死を悔しがっていたシンが、同じスタンスで戦っているアウルを殺したという点。

アウルの正義はハイネの正義とほとんど同じなんですよ。そして、シンの正義とも。同じ正義を持った人間を殺してしまった以上、シンの正義は「正義である」とは断言できなくなりますし、加えてアウルはステラと同じ「シンにとって守るべき弱者」ですから、そこでも矛盾が生まれてしまいます。そういったシン的正義の歪みが次回以降にどう影響を与えるかに注目です。

ただねぇ、正直、死の必然性は弱かったですよ。というか、アウル的正義の描写(←ママンを守る)やシン的正義の揺らぎ(←ステラが守るべき弱者であり敵でもあるという矛盾)をもう少し掘り下げてからの方が、同じ死ぬにしても深みが出たように思うんですよね。それがないために、単にシンのブチぎれ具合をアピールするために逝ってしまった印象も。次回以降のフォロー次第ですが、少しあっさりしすぎかなぁと。


■シン・アスカ

戦場において、今さら「誰も死なせたくない」とキレイ事をのたまうカガリ&キラにブチぎれ、怒りによってSEED発動。泣きじゃくるカガリ、戦場を混乱させただけのキラ、迷うだけのアスラン、特攻の末に果てたトダカさんなど、他全てが無力感に苛まれる中、唯一シンだけが「ミネルバを守る」という結果を残せました。結果として評価できるのがシン一人というのもまた事実だったりするわけで。

今のシンは、決して間違っちゃいないんですよ。「悪」だと描写されてもいません。ただ「やるせないもの」「切ないもの」「悲しい現実」として描かれているんですよね。もちろん、シーン単体で見れば「悪」っぽいのですが、最後に20話のトダカさん=シンの絵が挿入されることで「すれ違う両者の想い」がかなり強調されており、それが争いの切なさをうまく表現しているように感じられました。

キュピィィィン

そういう意味では、シン・アスカこそが「争い」そのものなんじゃないかなぁと超発想。だとするなら、ラスボスが誰であるとか、何が悪いとか、そういう帰結じゃないような気がします(←それもあるでしょうけど)。シンがいかに自らの呪縛から解き放たれるか、どう未来に向かって生きていくのか。それが、機動戦士ガンダムSEED-DESTINYの最終的な帰結になるんじゃないかなぁ、と。

家族の死、トダカさんを殺してしまったこと、ステラとの出会いと記憶、戦友とのつながり。そういった真の現実を介して受けとる痛みや哀しみを、シンがどう受けとめ、どう胸に刻み、その上でどう明日に向かって進んでいくのか。それがシンにとっての成長であり、デス種の帰結になるんじゃないかなぁと。倒すべき敵が「ラスボス」なのではなく、シン自身の内面の弱さこそが「ラスボス」になるんじゃないかなぁと。そう超妄想してみます。違っても怒らんといてね。


■ユウナ・ロマ・セイラン

トダカさん「ユウナ・ロマではないっ、国を守るためにっ!」。

ガツンとやられちゃったのねん。ED前のシーンでも、他陣営まで映し出される中、ユウナの姿はなし。ユウナに関しては相対化もなにもなく、これでショボーン路線かなぁ。個人的には、ユウナにもトダカさんのいう「希望」になってもらいたいところですが…。


■音響、グゥレイト!

全編とおして、場面に合わせて音響をうまく使い分け。例えば、インパルスのフォースシルエット換装&デュートリオンビーム受発信のシーンなんかが顕著ですが、シーン内の起承転結の流れと音楽の流れを同調させてきているので、もんのすごく(・∀・)イイ!

加えて、今回特に感じられたのが3期EDの良さ。本編自体はかなり切なくやるせないラストでしたが、そこから「♪いつでも思い出すけど、もうどこにも戻れない♪」EDへ。なぜか英歌詞だったので英語に疎いぐらすにはとんと意味はわかりませんでしたが、それでもキレイな曲と映像が切なさ溢れるラストを反語的に彩っていてグゥレイトッ!でした。



そんな感じで28話終了。種文法の基本公式では「戦闘による内面&関係性の変化→ドラマパートで整理」がワンセットですから、29話では人間関係や個々の想いが整理されて(←というか底をうって)本格的に第3クールが動き出すことになりそう。29話が折り返し地点になりそうですね。



機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第29話 〜 Fates 〜

もう一つの27話。修羅の刻風にいうと「機動戦士ガンダムSEED-DESTINY第27話[裏]」といったところでしょうか。ラクス再出撃を受けて「やり遂げる意志」を確認したのは(&相対化されたのは)、キラやカガリたち以外にも、もう一人いたわけで。それぞれの正義を相対化しつつ、旧主人公&クルーゼ&議長の価値観を対比描写する構図の妙が気持ち良い。そんな「Fates」(←複数形)に燃え燃え涙です。

…というかですね。いつからZは「シリーズの頂点」になったのよ?どちらかと言うと下の方なんですけど…。


■Fates

旧主人公、デュランダル、クルーゼ。それぞれの価値観を対比し、「絶対的正義でも絶対悪でもないんだよ」と相対化しまくり。今回のタイトル、そしていくつかの台詞で明暗示されていましたが、ポイントはタイトルどおり「運命」ですね。

要約するなら、運命の過酷さに耐えきれずに滅びを選んだクルーゼと、運命の過酷さに耐えながら生きようとする旧主人公&議長。その耐え方として、人の自由意志があれば運命の過酷さにも耐えられると信じた旧主人公と、人の力で楽(?)な運命を作り出そうとする議長。といったところでしょうか。クルーゼは、そんな旧主人公&議長を「血の道を彷徨」っていると揶揄していますね。

まぁ、デュランダルのスタンスは推測になりますが、神の方程式(←遺伝子操作技術?)を解き明かすことで、定められた運命に束縛されない自由な未来を恣意的に捏造しようとする、そんな「運命&神意への強反抗モード」「私こそが神になるモード」っぽい感じです。彼がチェスのゲームマスターとして描かれるのは、今回の戦争を動かす黒幕であることと、運命を司る神になろうとしていることの二つを暗喩しているのではないでしょうか。


■選びえなかった道の先にこそ、本当に望んだものがあったのではないか

そんな具合に、どこか歪んだ印象を抱かせるクルーゼ&デュランダルの「道」ですが、その道は共に「願いは叶わぬものと知った時、それが定めと知った時」に「抗い、求めた」道。心の奥底では「もしもあの時、もしもあの時」と考え、いつまでも「選びえなかった道の先」にある「本当に望んだもの」を意識&否定しながら生きている(いた)わけで。

希望を抱くから絶望する。期待も関心もないのなら、希望もしないし絶望もしない。絶望する人間は、それでも心の奥底に希望を抱き、どこかで救いを求めるけれど、そんな光があるからこそ、絶望の影はより濃く深く、その身と心を苛む。スイカにかける塩みたいなもんですね>人間心理。

そう考えると、全人類の滅亡を願うほどに激しく絶望したクルーゼは、破滅と共に「希望」を求めたんじゃないかと思えるんですよね。誰よりも強く「選びえなかった道の先」にある「本当に望んだもの」を感じながら、それでも、その身を苛む肉体的定めゆえに滅びの道を歩むことしかできなかった。それがクルーゼという男だと思えます。

ですから、その歪んだ道の裏側には、もう一つの「選ばなかった道」が透けて見えまくるんですよ。そして、それこそが、旧主人公たちの選んだ道なのでしょう。種50話のクルーゼも、キラの「守りたい世界があるんだ!」の一言に「もう一人の自分」「もう一つの道」を透かし見たからこそ、どこか満ち満ちた、それでいてどこか嘲笑じみたスマイルでご逝去されたように思えまくり。

そして今、デュランダルも。クルーゼと違って破滅を望みはしないものの、光を求めつつも、闇を生きることしか選べないのでしょうね。


■デュランダルの選びえなかった道、本当に望んだもの

そしてもう一つ。デュランダルは、旧主人公たちと同じように「運命に呑まれることなく生きる」ことを選んだ。そういう共通項があることを意識して今回の話を見ていると、ジワッと滲んでくる事実が見えたり見えなかったり。

アスランから離れてキラと添うたラクス。大事な友達から貰った大事な存在。親友の死。想いだけでも力だけでも叶わなかった願い。手にした力。コーディネーターとしての肉体。カテゴリーからの脱却…。

これ、全てデュランダルにも共通する過去なんじゃないかと。彼も旧主人公たちと重なる過去を生き、同じように「運命に呑まれることなく生きる道」を選んだんじゃないかと。

デュランダルから離れて別の男と添うたタリア(?)。大事な友達から貰った大事なレイ。クルーゼの死。想いだけでも力だけでも叶わなかった願い。手にした遺伝子技術。コーディネーターとしての肉体。カテゴリーからの脱却…。

今回映し出された旧主人公の辿った過去とその想いは、まさしくデュランダルにも共通する過去であり、想いであると。そう見えてくるんですよね。

ならば、彼もカガリと同じように「生きる方が戦いだ」と考え、キラと同じように彼の「守りたい世界」を守るため、AAの皆と同じように「己のできること、己のすべきこと」を為し、戦っているのではないでしょうか。その上で、ラクス再出撃を受けて、キラたちと同じように「やり遂げる意志」を再確認したのではないでしょうか。

だとするならば、彼も生きるために、己の守りたい世界を守るために、「戻れぬというのなら、はじめから正しい道を」「己のできること、己のすべきこと。それは自身が一番よく知っているのだから」と念じながら、自分にできる精一杯の「血の道」を彷徨っているんでしょうね。選びえなかった道の先、本当に望んだ未来。そこから目を背け、どこかで己を偽りながら…。

今回の前作映像は、そんなデュランダルの過去を彩る対比描写の一部として、意図を伴った確信的演出っぽい感じ(←鳥肌たった…)。そうなると、単なる相対化だけではありませんよ。デュランダルは、もう一人のキラであり、もう一人のアスランであり、もう一人のカガリであり、もう一人のラクスであり。選んだ道は異なるにせよ、そのスタンスは旧主人公たちと同じものですから、無碍に否定はできないわけで。ヤヴァイっす。超楽しみっす。


■友

でもね、クルーゼは人の孤独に絶望して死を選んだけれど、それでも「友」と呼べる人間がいたんだと思うんですよ。キラにはアスランがいて、アスランにはキラがいて、ラクスがいて、カガリがいて、AAメンバーがいて。それと同じように、クルーゼにはデュランダルがいて、デュランダルにはクルーゼがいて、レイにはシン他ミネルバの戦友がいて…。

言葉を介さずともわかりあえる人、共に生きたいと思える人。旧主人公たちにもそんな人がいて、そんな人とのつながりを守るために、守りたい世界を守るために、それが「血の道」と知りながらも過酷な生を選んだはずなんですよ。

叶わぬ未来に絶望するのではなく、願う未来を模造するのではなく、たとえ運命から拒絶されても、確かに存在する人とのつながりの中で今を生きることの大切さ。それでこそ生まれうる必然の未来。そこに救いと希望を見出してもらいたい。そんな人間賛歌を見せてもらいたい。個人的には、そこも一つのポイントになるような気がしたりしなかったり。そして、できることならクルーゼやデュランダルも救ってもらいたい。そう願いながらEDへ。


■I wanna go to a place…

今でも気付かないでしょう この静かな空に いつでも思い出すけど もうどこにも戻れない
そしてずっと心で 醒めてそっと気付いて いつかきっとやさしさ 見えてくるように

What’s stopping me? I get stuck again Is it really OK? It’s never OK for me
What’s got into me? I get lost again Is it really OK? It’s never going to be

願った未来。戻れない過去。儚い幻。幻の中でも惑いもがくのではなく、幻から目醒めて、今確かに存在する現実に優しさを。そう願わずにはいられないエピソードでした…。

というか、この歌、新旧主人公全ての歌であると同時に、デュランダル(真)用の歌なんじゃ…


■真偽路線?

そういうわけで、デュランダルは「もう一人の旧主人公」でありそうですから、無碍に否定はできなさそうです(←旧主人公サイドの根っこまで破壊してしまうことになりますから)。しかも、「選びえなかった道の先に〜」の台詞から、議長自身も「本当に望んではいなかった偽りの自分」と自覚していそう。ますます「正しさは相対的だけど、真偽は証すことができる。己こそが知っている」的な帰結がありえそうですね。

思えば3話で「偽りの存在」というフレーズが出ていましたが、終盤、この「真偽」ネタが強烈につながってくるかも。真偽の定義について掘り下げてきそうなラクス&ミーアネタと共に「偽(・A・)イクナイ!」的帰結になったら燃え。そこにシンの携帯やステラの記憶を重ねてきたら発火するかも。

まぁ、現状では直感的なイメージなのですが、そういった価値基準をベースにそれそれを肯定or否定した上で、光を示す部分で「本当に願った未来」「人とのつながり」をデュランダル&クルーゼに与えて「救い」を描くように思えまくりです。


■登場人物の台詞

ものすご〜〜〜くNT的キュピーン発想なのですが、福田監督、おそらく富野監督と同じように、登場人物の台詞を介して視聴者に物申しています。ZやVを破綻させて「アニメなんてくだらね〜んだよ」と言い放った富野監督とは異なり、物語は破綻させない上でですけどね(←というか最初から言いたいことをテーマにした作品なんでしょうけど)。前作もそんな色合いが濃かったのですが、今回はかなり確信犯的にやっているような気配が濃厚。ちょっとオモシロw



という感じで29話終了。倒れた駒に、想定外のラクスの行動によってデュランダルの棋譜に乱れが生じたことを暗示しつつ、30話へ。ここで相対化&対比路線が示されたことが終盤のデュランダル描写にどう影響を及ぼすのか、超期待です。なんというか、ますます衒学&ヘーゲル弁証法のノリが加速化していきますね。因果関係や伏線が全部回収されたら気持ちいいだろうな〜。



機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第30話 〜 刹那の夢 〜

■カガリターニングポイント

22話レビューより抜粋 :現場も、そして一般市民も、心情的にはカガリを支持しているのではないでしょうか。そういった「オーブ国民全体の意思」が視聴者に伝わる形で表現できれば、同じ結果オーライにするにしても、ある程度認められる形で落ち着くような気がします。

カガリに対する現場の期待を盛りこんでおいたおかげで「現場の期待に応えられないでいる自分に情けなさを感じるカガリ」にスムーズに着地。キラの口から「泣きカガリ」に対する否定も出ましたし、ボコ否定ではありませんけど、これはこれでありでしょう。

今後は、乱入以前の「このままじゃ駄目だ」「何をどうしたらいいのかわからない」な謙虚モードに戻って、再度「正しい道」探しを進めそう。敵を倒しても憎しみの連鎖は終わらない。ならば「プラントも地球も幸せに暮らす世界」にするためには、どうすればいいのか。難しいですけど、そんな難問にどんなメルヘン燃え回答を掲げるか、超楽しみっす。

た〜だねぇ、いくらなんでもキラが正論吐きすぎじゃないっすか?


■キラの価値観

冒頭で28話がフィードバックされましたけど、改めてキラの「カガリは今泣いているんだぞ」を聞いて(゚Д゚)ウマー

まずは、11話「トールやフレイの死を回想→拳をグッと握りこむ」や、14話「母:必ず帰ってきて→キラ:うん」をベースに敷いてみてくださいな。その上で「カガリは今泣いているんだぞ」を見ると、場面&象徴的に「カガリ」という対象が明示されていますけど、そこには「身近な人」というニュアンスが梱包&集約されていて、且つ、トールやフレイを「目の前」で失った過去も「今」というフレーズに換言されているわけで。まさにキラの価値観そのもの。さりげない(゚Д゚)ウマーです。

ただ、その想いが戦場で暴発し、場に流されるままに力を使ってしまうことが、現時点でのキラの欠点かと。推測ですが、デュランダルもそういったキラの性質を読んだ上でミネルバやハイネを操作し(←PPも?)、チェスの駒を操るようにして「会戦乱入→アスラン不和」へと誘導したような気もしたりしなかったり。今後はカガリと共に再度「正しい道」探しに戻りそうですけど、力の使い道&力を使う場について、一旦じっくり考えることが必要かも。カガリと一緒に一度オーブに戻ることもありですが、どう動くにせよ、キラなりの答えを出してほしいですね。


■シン的「守る」発動

ステラやつれてるよステラ→元気づけようと「貝殻」を見せる→「…シン…テラ…守…」→シン的「守る」発動→ステラ解放。合間の八つ当たり気味なアスランいじめ&軍規を無視してステラを逃がすあたりにネガなお子様っぽさ全開ですが、逆にポジお子様な「一途さ」も全開です。どこまでも少年漫画の覚醒前主人公キャラなシン君に燃え。

その上で、ステラの衰弱と、そんなステラを「実験動物」扱いしようとする評議会の対応、医師と艦長の「何であんなのに思い入れるんだか、わかりませんけどね」「そう…」な会話(←シン的正義の否定に捉えた?)をきっかけに、少しずつシン的正義とミネルバ的正義がズレ始め。

今はミネルバ所属を前提とした正義ですが、胡散臭いネオにステラを託すことしか選べなかった自分にも憤りを感じている気配。今回の件についての懲罰もありそうですが、この先どう転がっていくことやら(←ミネルバはシンの戦力に依存しているため、厳罰はなさそうですけど)。


■何のために戦うのか、そんなことを考えはじめたら終わりだな、俺たちも

スティング一人の調整を見つめるネオが、最近アピールされてきたPP的「守る」に反するようにこぼしたこの台詞。ざっくり考えるに二つの意味がありそう。一つは額面どおりに「軍人はただ戦うだけ、個人の意志なんて関係ない」という意味。その言葉どおりにステラも兵器として再利用するんでしょうし、だからこその「刹那の夢」なんでしょう。

ただし、この台詞はもう一パターンの解釈ができて、それが「軍人としては終わり」という意味。そんな含意があると見て、その上で古典的に考えれば、ネオの仮面は「軍人モードのオンオフを司るメタアイテム」である気配が濃厚です。

その場合、仮面着装時はどこまでいっても軍人としての言動でしょうけど(←仮面オンでシンと交わした約束も破られそう)、仮面を外した時に語られる言葉は個人としての言葉である可能性が大。ここでも「真の自分と偽りの自分」が錯綜することになるのかもしれません。仮面をはずした時に語られるであろうネオの真意、そしてPP的「守る」の行方。要チェキです(←全然違う方向に持っていかれる可能性もありますけどね)。


■逆17話

30秒以上マターリ回想。さすが回想王アスランたん。回想シーンを見るに「パトリック的思想→ウズミ的思想→デュランダル的思想→キラ的思想→何が正しいのかわからない。本当の自分はどこに?」な感じですが、かなりディープに悩んで自分喪失している模様です。

そんな精神的グロッキー状態のところで、17話末と同じ「夕焼け+対峙」シチュエーションでシンにイジメられるアスランたんがステキすぎ。あの時はシンが軍人としての自分を見失っていましたが、今はアスランが軍人&私人として自分を見失っているわけで。なんというか、価値観相対化の影響を一番大きく受けて、三半規管をもろに破壊されまくっている印象です。今後どうやって種割れまで持っていくのか必見?(←真の己に気づく系?)。


■タリア「これもあの人からの指示?」→レイ「今回のことは私の一存です。通常の処分をお願いします」

タリアはギル&レイの関係と策謀をある程度知っている、それはエクステンドッド絡みの謀ではない、それに配慮して「通常じゃない処分」をすることもある。確実なのはこのくらいでしょうか。29話のギル&タリア(?)の関係もそうですが、このあたりは未だ伏線配備中って感じですね。デュランダル的正義の中核に関係しそうな部分なので、これまでは明らかにできなかったとしても、そろそろ動き出してもいいような。

その上で、一連の動きが「私(レイ)の一存」であるならば、レイ個人としては「生」「友」といった概念をポジに捉えている模様。その上で、シンの「実験動物」発言を受けた「どんな命でも、生きられるのなら、生きたいだろ」の台詞に見られるように、自分とステラを重ねあわせて本格的にシンの援護に回った、というのが今回のシン援護の真相っぽいですね。タリアとの会話を聞いても、何か裏があるようではありませんでしたし。

そうなると、クルーゼと同じように己の命の由来について理解しながらも、クルーゼとはまた違った価値観を持っていることになります(最優先はギルでしょうけど)。レイというキャラを見ていく上では、デュランダルとの絡みだけでなく、そういった面でのクルーゼ的価値観との対比もポイントになっていきそうですね。


■種との対比

ステラをPPのもとへ帰した行動(→ラクス返還)、レイのバックアップ&「お前は戻ってくるんだな」(→サイ援護)を見るに、明らかに種10話のラクス返還にかぶせているのですが、ベースになる「守りたい」という想いは同じであっても、その帰結はまったくの逆。いかにも種な演出です(←種の話自体が、途中まで1stやZのストーリーをなぞりながら帰結を変えていく「リメイク&再構成」の典型ですから)。

ラクスを平和に暮らせるプラントに帰したキラと、ステラを帰したところで軍に利用されるだけだと認識しているシン。コーディネーターというカテゴリーに戻るのではなく仲間を守る道を選んだキラと、ステラを守り抜くのではなく軍というカテゴリーに戻ったシン。言ってみれば「あなたがステラを怪しい地球軍将校に託したのは、あなたがザフト軍人だからでしょう」なわけで、シン自身も、そんな道を選ぶことしかできないでいる己に不甲斐なさを感じている模様。

加えて、意志の強さ的には「やり遂げる意志を再確認したキラ=守り抜く道を選べなかったシン」を、仲間描写的には「特に裏もなくシンを援護したレイ=実は『キラ退艦→AA撃墜?→怖い』なネガ支援だったサイ」を、力依存型暴走的には「アスランを軽視するシン=迷言『やめてよね!』を残した種2クールのキラ」を、比較することができるわけで。

29話の運命論を見るに、運命を作り出す神から「デスティニー」を与えられるシンと、人としての自由意志を抱いて「フリーダム」に運命と戦うキラの対峙が近そうですが、様々な点における類似&対極ポジションが、二人+αの対峙に深みを加えそうですね。

とはいえ、ミネルバ内の軍律を破る形でステラ解放に踏み切るところを見るに、素養(?)的には、シンもキラと同じように「守るべき人を守る」路線にシフトしていく可能性はありあり。現時点で軍の一員として戦うことを選んだシンですけど、彼の今後の変化にも注目でしょう。


■デスティニー

上の「運命を作り出す神から『デスティニー』を与えられるシンと、人としての自由意志を抱いて『フリーダム』に運命と戦うキラ」について、二言三言。21話レビューの「デスティニーガンダム」の項でも触れましたけど、その「デスティニー」だと妙にネガなんですよね。

クルーゼは神と己を同一化しようとして「神意」を駆り、デュランダルは神を超えようとして「運命」を作った。そして、シンは「戦争だから仕方ない」的な諦観をもって、与えられる「運命」に乗りこもうとしている。そういった含意を読むと、シンの「デスティニー」搭乗は、そのままではネガ全開な気がしまくります。

超妄想ですが、神に与えられた運命=今確かに存在する現実は真正面から受け止めた上で、未来に関しては、人の意志で作り上げていく道を選ぶんじゃないかと。そして、未来を作り上げようとする瞬間(←ステラ絡み?)、シンは「デスティニー」のコクピットから抜け出して、生身の人間として行動するんじゃないかと。そう思えるんですよね。

デスティニーはまだ登場すらしていませんが、29〜30話を見ていてそんなことを感じた次第です。


■夕焼け+対峙=すれ違い

8話のキラ&ラクス=シン(夕)、17話のアスラン=シン(夕)、29話のデュラ=タリア(夕〜夜)。他にもいくつかありますが、デス種的には「夕焼け&夜+対峙」というシチュエーションは、マイナス演出なんですよね。次回も「明けない夜」ですから、ネオとシンの約束、貝殻でつながったシンとステラの記憶、ステラと交わした「忘れないで」の誓いは、儚く消えていく気配です。まさしく「明けない夜」に見た「刹那の夢」になりそう。

その上で、個人的に超期待しているのが「朝日+対峙=相互理解」シチュ。三主人公+αが相互理解に至った時に使ってほしいっす。タイトル的にも、31話「明けない夜」に対して、いずれ「朝」「夜明け」といったタイトルを持ってくるんじゃないかなぁと思えまくり(←瞳ネタもありそうですけど)。


■難しいですけど、そんな難問にどんなメルヘン燃え回答を掲げるか、超楽しみっす。

と、上でまとめましたが、ぐらす的には「皆の想いにはそれぞれ言い分があるから、一概に肯定も否定もできないけれど、自分解釈によって事実を歪めて捉えてしまうのはダメ。事実をきちんと見つめる目を持って、自他の真偽を見極めることが大切。何をもって真偽と定義するかは難しいけれど、自分自身と真摯に向き合えば真実は見えてくるよね」的なオチが順当かなぁと思ってみたり。

もちろん、それが難しいからこそ世の争いはなくならないわけですが、少年向けメルヘン燃え物語的には十分あり。ま、どうなるかはわかりませんが、難問に対してどんなメルヘン燃え回答を掲げるか、超楽しみに待っています。

ちなみに、それが前回レビューで触れた「視聴者への物申し」だと思っていたり。「アニメの良し悪しなんて相対的なもの。皆の評価にはそれぞれ言い分があるから、一概に肯定も否定もできないけれど、自分解釈によって事実を歪めて捉えてしまうのはダメ。事実をきちんと見つめる目を持って、自他の真偽を見極めることが大切。何をもって真偽と定義するかは難しいけれど、自分自身と真摯に向き合えば真実は見えてくるよね」みたいな感じ?

ついでに前作の「視聴者への物申し」を想像するなら、「信者&アンチ&ガンダムなんていうカテゴリーで事物を認識し、あげくそんなカテゴリーに依存しまくって批判を展開しても意味ないよ。ありのままの在り様に目を向けて、自分の頭で正否を考えなきゃダメ〜」みたいな感じ?

ぐらす的に、レビュー内で「戦争」ではなく「争い」という言葉を使うことが多いのですが、なんというか、種はリアル戦争を語ろうとしているアニメじゃないと思えるからなんですよね(←小中学生相手の「入口」的な側面はありますが)。UCのようにリアルっぽい戦局を描こうとするアニメではなく、むしろ、日本という戦争から離れた国における日常的な「争い」を描こうとしているイメージ。人との接し方、相手の価値観の認め方、自分の頭で考えることの大切さ。そういったものを伝えようとしてテーマ&メッセージを構築しているような気がしまくりです。そういう視点で見て楽しんでいますが、実際はどうなんでしょうね。



そんな感じで、いくつかの面で折り返し地点が近くなってきたことを匂わしつつ、新しい伏線がモリモリ盛り込まれた30話が終了。予告でもデストロイ登場を匂わせていましたし、タイミング的にもD&SF&IJ登場が近そう。第3クール分のタメもそれなりに作れているので、そろそろ物語が動き始めるかも。伏線回収展開マダー(・ ・ )っ/凵チンチン。



機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第31話 〜 明けない夜 〜

刹那の夢は、明けない夜に見た幻か。希望を夢見ながらも現実に拒絶されたシンとステラ。自分たちを翻弄する運命に気づくことすらないまま彷徨いつづける二人にやるせなさ全開ですが、逆に、悪夢にうなされながらも現実に立ち向かう決意を固めた直情径行娘もいるわけで。そんな違いをピコッと感じながら、31話本編感想です。


■ラクス返還とステラ返還

前作で肯定的に描かれたラクス返還と重ねながらも、意味的には裏返し、デス種では否定的に描いてきたステラ返還。行為的には肯定も否定もできると描かれたわけですが、マリューの「大切な誰かを守ることは、決して馬鹿げたことでも、間違ったことでもないわ」を聞くに、根っこの「守りたい想い」そのものを肯定する形で落着しましたね。

そんな想いを認めて「大切な人もいるから、世界も愛せるんじゃないかって」思うコーチングマスターなマリューさんですが、このあたりはネオとの遭遇にもつながってきそう。今まで乳=ネオ絡みの伏線は見当たりませんでしたが、一連の台詞&回想が入ったことで、ピコッと楽しみなネタに。


■乳=尻

軍規をベースにシンを否定することしかできないトップダウン方式タリアっちと、キラの想いを受容しつつ自発的な答え探しを促すコーチング理論マリューさん。さりげないこの対比がステキすぎ。ビバ、コーチング理論。カルロス・ゴーンもびっくりです。

この二人、部下に対する接し方も対比的に描かれていますし、男関係でもタリア=デュランダル間とマリュー=ネオ間の「相互理解」が比較できそうな気配ですが、それ以上にオモシロなのが、7話の「先のことはわからない」だったり。デュランダルに誘導されるままに動くタリアと、自らの意志で明日を切り開こうとするマリュー。そんな構図につながってきそうで、個人的にはかなり期待中。

ちなみに、どちらが自分の好みかと問われれば、おっぱいです。おっぱいおっぱい。


■ただ祈って明日を待つだけだ、俺たちは皆

29話を見るに、議長は運命を作り出す神になろうとしている気配ですが、そんな議長の作り出した運命の中で、ただ明日(=議長の作り出す未来)を待ちながら生きることが、レイにとっての生きる意味なんでしょうね。

神の作り出した運命に身を委ねて神意を遂行しようとしたクルーゼと、ギルの作り出した運命に身を委ねてギルの意を遂行しようとするレイ。今回のこの台詞で、そんなクルーゼ=レイの対比がさらに見えてきた気がしました。

さりげに「俺たちは皆」のフレーズがオモシロ。レイの言葉をそのまま受けとめるなら、「明日」を待つのは「俺」ではなく「俺たち」なんですよね。かな〜り意味深。


■レイ「ならよかったな」→シン「ありがとう」

でもね、優先順位はギルより下ですけど、レイの中には「シンという戦友を大切にしたい」という価値観も確かに存在するんですよね。シンの暴走を不問としたデュランダルを見るに、デュランダルからシンを大切にするように命令されているのかもしれませんが、それでも、交わした友情は確かに存在するわけで。

そんなレイとシンのつながりが、クルーゼとデュランダルのつながりに重なって見えてタメモード。デュランダルの作り出す運命に身を委ねるレイが、シンとのつながりに何を見出すのか。その帰結にクルーゼの何を描くのか。マリューさんの台詞はレイのシン援護にもかかっていそうですけど、かな〜りディープに期待中です。


■PP的「守る」の行方

スティング健忘症&ステラ再兵器化&三都市破壊などを見るに、仮面モードのネオは、今まで以上に軍人としての責務を遂行しようとしているようです。が、仮面を外してシャワーを浴びるネオは、そうすることしかできないでいる自分に憤りを感じている模様。まだ見ぬネオとスティングの「守る」に想いを馳せながら、今は待ちます。

さりげに気になったのが、ネオの「君らは、知らないことが多すぎるんだ。今さら、それも知らなくていいことさ」な記憶不要論。各所で「記憶」の要不要が問われる中で、仮面モードのネオがこぼしたこの台詞。PP的「守る」と共に、終盤の燃えネタになるかも?


■カガリ

祝・カガリたん上向きモード。想いだけで突っ走っているのは同じですが、いずれオーブに戻って国家元首として戦う覚悟を固めた点で、責任を放り出していた今までとは大違いです。

現状では、連合が一元的に悪いかどうかを判断しかね、AAに同行して戦争全体の構図を見極めようとしているようですが、オーブ国内の親アスハ派の存在や国民の期待もアピールされていましたから、棚ボタ結果オーライではあるものの、ある程度スムーズに着地できそうですね。ラクスと共にキーマン化していけそうですが、ベクトル的に「シン>アスラン=カガリ<キラ」な掛け橋役になったらステキかも。


■チェスマスター

シンの懲罰免除に、チェス卓を前にしたデュランダルの姿がかぶせられていましたが、そんな「駒を動かすデュランダル」「駒として動くシン」のメタ描写がオモシロです。

駒であるシンは、その「守りたい」という想いを「自分こそが正しい」という独善に変え、ただ駒として力を振るうのみ。そして、同じように「想い」を消され、破壊の神と化したステラの待つ戦場へ。皮肉にも「会いに行く」という約束を果たす形で…。

シンもミネルバも、PPもステラも、全ての存在が「力」に傾く戦場。そこで待つ運命は?ということで、やヴぁいっす、来週が超待ち遠しいっす。


■デストロイ

巨大な黒ガンダムの上に巨大MAを積んだ感じ。わかりやすくいうと、ビグザムキタ━(゚∀゚)━ッ!


■シン

ステラ返還に対してのお咎めがなかったため、先週の夕焼けシーン以上に増長し、自分の正しさを確信してしまうシン君。ですが、その「正しさ」の拠りどころになっているのは軍の命令系統(←上意下達)。ステラを守りたいという「想い」が正しいと認められたのではなく、お偉いさん=カテゴリーからのお墨付きに依存した「正しさ」なんですよね。

スタートラインは「守りたい」という想いであったはず。その想いに殉じ、懲罰も覚悟してステラを逃がした。けれども、結局はステラを敵の変態仮面に託すことしかできず、軍というカテゴリーに戻る道しか選べなかった。ステラを「守り抜く」ことはできなかった。その上、軍というカテゴリーによって認められた「正しさ」に充実感を感じ、ステラを守り抜けなかったことから目を背けてしまう。

そうやって無意識に自分を偽ったまま、想いを持たない「駒」として戦場へと向かうシンですが、そこで皮肉にも「会いに行く」という約束を果たしてしまい、守りたかったステラと死闘を繰り広げることになるわけで。シンは「あの子が死ぬってこと、誰も気にもしない。地球軍だって酷いけど、艦長たちだって同じです」「ステラだって被害者なんです、なのに皆、そのことを忘れて、ただ連合のエクステンデッドだからって、死んでもしょうがないみたいに」と怒っていますが、その台詞が直に跳ね返ってきそうなんですよね。救いも何もあったもんじゃありませんが、物語的には、シン的正義への強烈なボディーブローになりそう。そこから進む方向性に注目、といったところでしょう。



といったお題をモリモリ積みこんで、次回『ステラ』へ。因果応報+シンへの問題提起+ビグザム搭乗者=死の気配がムンムンですが、久々の名前タイトルに期待しまくりです。



機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第32話 〜 ステラ 〜

そこにコーディネーターがいるから滅ぼす。そんな登山家モードなジブリールがステキに笑えたのですが、その後エラいことに。名前タイトルまでつけてもらった我らがヒロイン、ステラたんですが、その結末は激切なすぎ。シン、どん底一直線やなぁ。そんな感じの第32話です。


■MSの性能で強さが決まるわけじゃない

オマージュぶっぱなしながら、カオスより性能の劣っているムラサメ隊にやられてしまうスティングに涙。記憶いじられた戦闘マシーンを、ベルリン市民を守るという信念に拠って戦うムラサメ隊が凌駕するあたり、MSの性能やパイロットの腕ではなく、意志や信念の強さがモノをいうようで(in種世界)。というか、アスランより先にオーブ軍人さんが種割れするかも。

ただ、そういったアテ馬要素と、ステラ的「守る」が叶わぬ様を描くためとはいえ、あっさり死にすぎすぎ…。当座の敵がリストラされた場合のお約束として、デフォルトで「今まで戦っていた敵がいなくなる→実は身内が悪→敵って誰だよ(byアスラン)」な展開がありますけど、その前振り?

仮に、デュランダルが牙を剥くとなると、デュランダルに対するミネルバ内の「疑:アスラン&ルナ=中間:タリア=従:レイ&シン」な構図が意味を持つはずですが…。いろいろと動き出すかも。


■シンvsステラ

ネオを守る為に、怖いものをなくそうとして、自分を守ってくれるはずのシンと戦うステラ。
ベルリン市民を守る為に、デストロイを破壊しようとして、守りたい存在であるステラと戦うシン。

そんな二人のすれ違いにやるせなさを感じつつ、シンの「この化け物」発言に、先週の「ステラだって被害者なんです、なのに皆、そのことを忘れて、ただ連合のエクステンデッドだからって、死んでもしょうがないみたいに」が重なって、もう…もう…

つД`)・゚・。・゚゚・*:. 。..。.:*・゚


■ステラ

ステラは「ネオたちを守りたい」「怖いものをなくす」という想いにモチベイトされて(させられて)戦っていましたが、それはプログラムされただけのもので、実体がないんですよね。善悪どころか、自我すらない。個々の戦う動機が相対化されていっていますが、そのラストがここだった印象がチラホラ。そして、作られた「戦う動機」「守りたいという想い」は、叶うことなく散っていったわけで。

ですが、作られた「想い」が散っていった一方で、ステラが心から願った「シンと会いたい」という想いは叶い、一瞬とはいえ、シンと意識をつなげる事もできました。また、プログラムされた幻想とは言え、ステラの「ネオを守りたい」という想いは真に近かったようで、そちらの方も皮一枚でつながっています。以前から触れてきた真偽ネタがここにも仄見えつつ、そんなステラが死ななくてはならない現実も悲しくて、切な好かった。

つД`)・゚・。・゚゚・*:. 。..。.:*・゚


■フレイの最期

少し前にあいばさんのところで「種50話でキラは霊フレイを見えてはいなかった。キラは単に自分の心情を吐露しただけ。でも、キラとフレイが理解しあえていたため、キラの独白が奇跡的に霊フレイの語り掛けと微シンクロした」とお聞きしました。キラがフレイのことを深く理解していたために、言葉を聞くまでもなくフレイの想いを理解できた、ということですね。

その上で、今のキラは、そんなフレイ理解をベースに、フレイが望んだ世界を叶えたくて戦っているんじゃないかと思えたり。ありのままのキラを間近で見、そんなキラと素直にわかりあうことができたフレイの望んだ世界。カテゴリーに囚われることなく、ありのままの在り様を認めあうことのできる世界。そんなフレイの望んだ世界を目指し、フレイの思いを引き継いで、キラは戦っているんじゃないかと思えるんですよね(←もちろん、それはキラ自身も望んだ世界ですけど)。


■ステラの最期

そういった解釈でフレイの最期をとらえ、同じ視点で今回のシンを見てみると…アレ?となるわけで。毎度おなじみ、見た目を重ねつつも意味的には裏返す種演出、ってやつではないでしょうか。

前述しましたが、ステラは「シンと会いたい」という想いを抱いていたはずです。再びシンと出会い、21話のようにシンと穏やかにすごしたかった。それがステラの真の想いだったように思えます(←ちなみに「シン…好き」の「好き」は幼児レベルの「好き」かと)。では、シンがステラのそんな想いを引き継ぎ、皆が穏やかに暮らせる世界を目指して戦っていくのかと見ると、…う〜みゅ…。

シンは家族を亡くした際に、家族が本当に願ったであろう「シンだけでも無事に平和に生きて(←トダカさん補完)」という想いを、怒りと憎しみに心を歪めたままに「オーブ(理想)が悪い」「連合が悪い」と自分解釈し、戦いに身を投じました。

ならば今回も、ステラが本当に願った「シンと穏やかにすごしたい」という想いを、怒りと憎しみに心を歪めたままに自分解釈し、よりディープに戦いに身を投じてしまうのではないでしょうか。ステラの死と家族の死が重ねて描かれていますし、今のシンは「自分は正しい」な増長モードですから、その可能性は大。つまり、今回は「連合が悪い」「フリーダム(理想)が悪い」となるわけですね。

8話の「花を手向けるキラ&ラクス」「そんな二人に背を向けて歩き出すシン」を皮切りに、これまで対比されてきたキラとシンですが、今回の「フレイの想いを受けとめたキラ」「ステラの想いを歪めてしまう(であろう)シン」の対描写を以って、本格的直接対決に至る気配。複数エピソードがモリモリ詰めこまれた重い対決になりそうで、めっさ楽しみっす。


■シンの行く末

そんな具合に、当面のシンは家族やステラの本当の想いを歪めて暗黒化していきそうですが、そうなると、カガリが再確認した「真の想いを貫き通すことの大切さ」がアンチテーゼになるような。そのアンチテーゼによって、家族やステラの本当の想いに気づくことができれば覚醒モード、気づかずじまいであれば暗黒モード。どちらに転ぶかはわかりませんが(※1)、そんな具合に見ていけば楽しめるかもしれませんね。


■マリュー=ネオ物語、リスタート

今回、ステラはネオを「守る」ために戦っていると描かれていましたが、開始直後、そんなステラがAAのローエングリンを防いでネオを守るシーンがありました。最初は「偶然かな〜」とも思いましたが、今話で描かれた「ステラ→守る→ネオ」の想いを見るに、前作49話を重ねてきた気配です。

そして再会(?)する乳=兄。かたや正義の味方の大天使として、かたや悪な連合の手先として、それぞれに「守りたいもの」を抱いた立場の異なる者として再会する二人ですが、今回はどうなることやら。ぐらす的には、ネオの仮面オンオフを追いかけていこうかなぁと思います。

それにしても、兄ぃはスゴいっす。MS爆発も宇宙空間も敵じゃないっす(←作中価値観的に、ステラの想いも目に見えないバリア効果を果たしているんでしょうけどね)。


■偶然は運命になる

運命論が一つのポイントになってきそうな気配ですが、今日、第1クールED『Reason』を聞いていて思ったことをば。

この『Reason』という歌、歌詞を追いかけると、カガリを想うアスランを歌っているようで、バリ切なさ全開。物語が進んだ今の時期に改めて聞くと、かなり心地良い歌だったりするのですが、その中で「偶然は運命になる」というフレーズが使われていたりします。

運命(=必然&未来)というものは、偶然(日々)を積み重ねることによって形成られるもの。そんな意味で時折見かける言い回しですが、含意もあわせて見れば「誰かによって最初から定められた運命などない。ネガな昨日、ポジな今日。そんな毎日を積み重ねた先に、明日という日はやってくる。運命は誰かに定められたものではなく、自分自身が作りだすものなんだ」的に言い換えられるかと。これ、デュランダル的な運命論(=神/デュランダルが定める)の対極にある概念でしょう。

常々触れてきたように、シンの搭乗機名が「デスティニー(運命)」だというのはネガですし、展開的にもデスティニー発進はダミー燃え気配が濃厚です。ですが、今日『Reason』を聞いていて、最終的には前述した意味合いで裏返してくるような気がチラホラ。日々(偶然)を積み重ねた先に未来(運命)は在る、日々(偶然)の積み重ねこそが大切、そういった日々(偶然)の記憶を忘れないことこそが幸せ。そういったメッセージを伝えてくるような、そんな着想を抱いた『Reason』再聴でした。


■最終奥義

その上で、最終奥義のお告げが…。見た目はZを踏襲しつつ、そこに「偶然は運命になる」な含意を持たせてくるような…。新旧キャラが積み重ねてきた日々(偶然)を各MSの力としてメタ描写し、それをシン&デスティニーが集約→全てを込めた「必然」の一撃と化して、デュランダルの捏造した運命を突き崩す。そんなメタ含意ありまくりな燃え奥義になるような…。


■※1………どちらに転ぶかはわかりませんが

♪それぞれの夢を叶えて、まためぐり逢う時、偶然は運命になる
♪破れた約束さえも、誓いに変えたなら、あの場所で出会う時、あの頃の二人に戻るかな?
♪優しさに似ている、懐かしい面影、目を閉じて見えるから、手を触れず、在ることを知るから

自分が制作スタッフだったら、120%そうします。


■デス種ソング

物語とリンクした歌詞でありつつも、アニメアニメした曲調にならず、万人受けするエンタメメロディーに編曲しているのがウマウマ。4期EDの「君は僕に似ている」も期待していますが、ぐらす的に気になるのは「似ている」という表現。似ているってことは、同じではないってことなんですよね。平和を目指しつつも、そのための経路はバリエーション豊富。そんな帰結になるのではないでしょうか。



そんな感じで、やるせなさ全開の32話感想+最近の雑感終了。近づく自由vs運命の戦いに思いを馳せつつ、戦闘→整理の種公式にあてはめるなら、次回は物語の整理中心+ちょこっとネタフリな話になりそう。



機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第33話 〜 示される世界 〜

♪冬に咲く花が咲く景色彩る〜強さは優しさ、そう謡いかけてる〜。シンが優しさに気づく日を待ちながら、今はどん底一直線モードなタメを楽しむ日々。シンの怒りの矛先はどこへ?チェスマスターから示される世界とは?デュランダルは偽りの世界を示したっぽいですが、種スタッフはどんな展開を示すのでしょう。ちなみに今週はちょっと毒吐きモードです。


■水葬演出

今回はアバンだけでご飯3杯もの。なにが良いって、湖底に沈んでいくステラの掌&腕の角度を巧みに使った演出ですよ。

途中で掌が上を向き、つづいて腕全体が湖面に伸びて、そんな姿勢で湖底に沈んでゆくステラの姿は、シンを抱きしめるようでいて、シンを求めるようでいて…。そんなステラを、ステラの本当の想いを、シンは自ら離してしまうんですよね。二人の想いがつまった貝殻と共に…。そこにBGM「深海の孤独」も重なって、もう、もう、、、

つД`)・゚・。・゚゚・*:. 。..。.:*・゚


■フレイの本当の想い、ステラの本当の想い

これだけでボ〜ロボロ涙がとまらんかったのですが、ステラの姿勢的に、おそらく「本当の想いがあなたを守るから」と言った霊フレイの姿勢にも重ねている気配。フレイの本当の想いと共に争いのない世界を目指すキラ、ステラの本当の想いを離して復讐に身を投じるシン。本人は気づくことはなくとも相互理解→共棲できているキラ、いったん相互理解→自らの手でつながりを放棄したシン。この対比が実にわかりやすくて、ばり良かった…。OP前におなか一杯でした。

そして、シンの怒れる瞳の向く先は、フリーダム、キラ・ヤマト。重ねたエピソード、幾重にも積まれた対比点。そういったものが裏昇華される燃えバトルになりそうですね。やヴぁいっす、タメなのにはげしく燃えるっす。

そういう演出意図を読まずに「FF7のエリアス水葬と同じだ」と叩くのって、実際どうなのよ。思うさま浅いんですけど…。そういう人は「デュランダルって競走馬のパクリだよね」「タンホイザって銀英伝のパクリだよね」「フリーダムって英語のパクリだよね」と言っていればいいと思います。


■シン⇔キラ

虐げられし弱者を守る。そんな信念をどこか置き去りにして、連合とフリーダムへの怒りにモチベイトされて力を振るうシン。13&16話以上に怒りや憎しみを前面に押し出し戦うことになるシンに、17話アスランの「力を手にしたその時から、今度は自分が誰かを泣かせる者となる」「それを忘れて、勝手な理屈と正義でただ闇雲に力をふるえば、それはただの破壊者だ」が虚しく響きます。

確かにキラも「力を手にした〜誰かを泣かせる者」であることに変わりはないのですが、前々回のマリューさんとの会話を見るに、少なくとも「それを忘れて」はいない模様。ですが、今のシンは「それを忘れて」います。結果を見れば同じですが、過程においては「キラ:問題意識あり(成長可能)⇔シン:問題意識なし(成長不可能)」の差は大きいんですよね。

ただ、両者ともに「守ると誓った相手を死なせてしまった」という痛みを抱いている点では共通しています。種の相互理解は、NT的な超常の力ではなく、相手の痛みや苦しみを知るからこそ到達できるステップとして描かれてきましたから、ステラの死も、憎しみの要因というネガ要素から相互理解への架け橋というポジ要素に裏返る可能性は十分ありかと。もちろん、そのためには壁となるイベントが必要不可欠ですし、しばらくは闇モードも続きそうですが、最後はきっちり裏返ってエンタメ燃えを見せてほしいなぁ。と思いつつ、ダース・シンを楽しむ日々。

そしてもう一つ。キラも、過程において問題意識を持っていることを評価できるにしても、結果として誰かを泣かせてきたことは事実。そう考えると、次回「悪夢」は、そんなキラに対する一時断罪パートにもなるかもしれませんね。


■ネオ

記憶を欲するフォウポジションは実はステラでなくネオ!?挿入歌「深海の孤独」も、最初から記憶を持たないステラの歌というより、昔の記憶を失ったネオの歌に聞こえるような…。デス種主人公はシンでもキラでもアスランでもなく、マリューさん!?と突っこんでみたり。


■そういうところも好きですけどね

祝、ルナマリア告白。ですが相手は超絶鈍感アスラン。それが告白だと気づくことすらないまま、華麗にスルー。あらためて「色気&恋気のカケラもないカガリとよくくっついたよなぁ」と感心しきりです。さりげに「告白できたルナ=声もかけられないメイリン」の図がオモシロ。ルナ=メイリンネタはまだですか?


■アスラン=ルナマリア

バカップル化することはありませんでしたが、二人がそろって議長への疑いを抱いていることは確かでしょう。今回の議長演説でも、ルナは偽ラクスをさらに意識し、アスランは議長への疑いを一層強めたはず。二人がミネルバ内で孤立&仲間化していきそうですけど、そろそろ爆発するかな?

ミネルバvsAA戦が近づいていますけど、種の基本公式どおりならば、戦闘によって変化した内面&人間関係を整理する回が35〜36話あたりでやってくるはず。そのあたりでイベントが起こってもおかしくないかもしれませんね。徹底して前作を重ねてくるなら、種42話のように「アスラン拘束→脱出→ラクス合流」かなぁ。ダコスタ役がルナマリア、契機イベントがラクスの説教とかだったら燃え燃えです。


■アスラン

ふらふらふらふら揺れつづけていますなぁ。24〜25話で強烈にミネルバサイドに傾きましたが、またAAサイドに揺れ戻っている様子。たしかに、不要な戦いを避けてさえいればAA自ら喧嘩を売ってくることはありませんから、そういう意味では「敵」ではないわけで。でも、軍令を邪魔する存在としては、確かに「敵」であるわけで。ふ〜らふらふ〜らふら。

と、しておいて、ルナの言葉から、プラントに戻ってフェイス称号を受けた際の初心を思い出すアスラン。平和への想い。カガリへの想い。そんな想いとともに力を手にしながら、想いを忘れて力を振るう今の自分。何してんだオレ?昔と変わってないじゃん、みたいな。

さらに、そんな疑念をより一層膨らます議長演説が炸裂。フリーダムの映像削除+プラント議長の言葉に思考依存する市民の姿+力による敵の殲滅を叫ぶデュランダル宣言=ED前のビックリ顔。あの「マジっすか!?」な表情を見るに、AAサイドへの揺れ戻しパート到来の気配ですね。次回のAA討伐戦は「キラvsシン」だけでなく「アスランのAAサイドへの揺れ戻し」もポイントになるかも。


■議長演説分析

衝撃的なデストロイの映像を見せつけることで、平和を乱す者が連合サイドであることを示し、どちらが悪いのかを明らかにする。その上で、皆が欲している「平和」という餌を目の前にぶら下げ、さらに偽ラクスの語りによって、餌である「平和」をさも美味しそうに見せびらかしつつ、聴き手を「平和」という餌を核に据えた「私たち」という一集団にまとめあげる。

最後に、そんな美味しい「平和」という餌をとりあげる邪魔者ロゴスの存在を示し、ロゴス討伐は平和をかちとるために必要不可欠な聖戦だとして、ロゴス討伐のための「戦い」も平和と相反するという事実から聴き手の目を逸らせば完成です。合間に、一方的に連合サイドが悪いというだけではなく、自分たちにもユニウス7の件で非があることを認めていますから、好感度も高い。


■旧主人公たちのリアクション解釈

ポイントは「ロゴスこそが真の敵」発言でしょう。

旧主人公たちは、前大戦のラストでクルーゼ&パトリック&アズラエル他の「敵」を撃ちました。しかし、敵を倒すことでは「憎しみ」を消し去ることにはならず、燻りつづけた火種はユニウス7で再爆発し、現在の混沌とした状況に至っています。キラたちからすれば、デュランダルの主張する「敵を撃て」路線は、自分たちが過去に通り、その上で間違っていると知った道に他なりません。

しかも、これまで積極的自衛路線を進んでいたプラントが攻勢に転じれば、連合vsプラントの本格的な全面衝突が始まる可能性が大。仮に全面衝突は回避できたとしても、今度はナチュラルがロゴスに与した愚か者として差別&弾圧対象になりますから、その過程で憎しみの連鎖はますます広がっていくでしょう。そんな演説をぶっぱなし、しかも民衆を煽るために偽ラクスを使ったとあれば、そりゃキラたちも慌てますよ。

と、物語を順々に理解していれば当たり前の反応で、別におかしくも何ともないんですけど…。パクリと共に「『大変なこと』ってなんやねん!わからんのじゃボッケ〜!」な叩きが今週の流行りのようですが、自分の理解力不足をさらけ出すようなもんでしょ。みっともない。


■議長演説評

理屈としての自説の正しさを示した上で、感情的にも聞き手が主体的に同調するよう、美味しい餌を見せつけて誘導する。これが演説の基本です。その視点から議長の演説を見てみると、際立つのは偽ラクスの使い方でしょう。誰もが欲する「平和」という餌をさも美味しそうに表現し、それを核にして「私たち」という表現で聴衆をまとめあげる。ここが実に巧かった、自説の矛盾や主体性のなさをスルーさせるほどに。

ロゴスを倒すことで本当に平和がくるのか、平和を唱えながらロゴスを倒すことに矛盾はないのか、ロゴス討伐以外に平和へと至る道はないのか。そういった「理屈としての自説の正しさ」がないんですよ、デュランダルの演説には。あるのは連合やロゴスサイドの敵失のみ。言ってみれば「○民党のやり方は間違っている!だから民○党に投票してください!」な選挙演説と同じです。そんな欺瞞臭さを、偽ラクスを使うことで巧く消臭しているんですよね。

もちろん、それは本来の意味での演説の上手下手とは別のものですが、下手な演説を上手に聞かせる欺瞞テクニック的な意味で、実に巧かった。餌を美味しそうに見せつけることもせず、自説の正当性を立証することもせず、ただ単に敵失と権威依存に終始したどこぞの駄目演説よりは、数段上だったかと(←しかも、あれは上手い演説を狙っての本気の駄目演説でしたからねぇ…)。


■デュランダルの狙い

演説前の「チェス盤」を使ったメタ描写からわかるように、計算づくでここへと至った感のあるデュランダル議長。デストロイ暴走はもちろんのこと、ユニウス7落としも事前に察知していた可能性がありますが、自らの手で運命を作り出すため、世界的に大きな影響力を持つロゴス&AAを盤上から除こうとして動いてきた、といったところでしょうか。

だとすると、今回でロゴス打倒に近づきましたから、次回でAAを盤上から除けば計画通り、といったところでしょう。そうなると、次回「悪夢」でキラ&AAは戦線離脱/死亡する可能性が大ですが、どう転ぶにせよ、物語が大きく動き出すことは間違いなさそうですね。ただ、最近のカガリ上向きモードや今回のアスラン覚醒前兆モードを見るに、序盤で軽くあしらわれた彼らこそが、議長が唯一想定しなかった「世界に大きな影響力を持つ存在」として復活&リベンジかます気配。かなり燃える展開なんですけど…。


■デュランダル演説=真ラクス演説

デュランダル演説を概約すると「ロゴスを撃てば平和になる(=撃たなければ平和にならない)」ですよね。平和のためには敵を撃たねばならない。そのためには力が必要。デュランダルのスタンスは「争いがなくならぬから力が必要」という第1話の台詞そのものでしょう。

一方、ラクスは種49話で「私たち、人は、おそらく戦わなくとも良かったはずの存在。なのに戦ってしまった者たち。何のために?守るために?何を?自らを?未来を?誰かを撃たねば守れぬ未来、自分、それは何?なぜ?そして撃たれた者にはない未来、では撃った者たちには?その手でつかむこの果ての未来、幸福?本当に?」と語っています。そもそも人は戦わなくとも良い存在、誰かを撃たねば守れぬ未来などない、誰かを撃つことで作られる未来には本当の幸せなどない、と考えているわけですね。

種ではラクスが完璧超人、デス種ではデュランダルが完璧超人。事あるごとに同ポジションの存在として描かれてきた二人ですが、ロジカル経由で「正しさ」に辿りつくのはどちらになるのでしょう。ここも一つの視聴ポイントとして押さえにゃ損々。



そんな感じで、議長が積極的自衛路線を放棄して攻勢へと転じた33話感想を終了。本格的に牙をむいてくる前兆モードに入りましたが、それと同時に物語も大きく動き出す気配。どうなる?



機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第34話 〜 悪夢 〜

エンジェルダウン作戦。青vs赤、理想vs現実。意志vs諦観。その結末やいかに。ということで34話感想スタートです。小ネタがピョコピョコあって、感想書くのがけっこう大変かも。


■開戦時防衛戦の折、申し上げた言葉を、今一度繰り返したい

・ 今、再び手に取るその銃が、今度こそ全ての戦いを終わらせるものにならんことを、切に願います。(11話)
・ 再び手に取るその銃が、今度こそすべての戦いを終わらせるものとならんことを(34話)

言葉は同じですから、一見すると首尾一貫しているように見えて好感が持てるのですが、積極的自衛路線を標榜した11話の言葉と全面戦争を促す34話の言葉では、込められた意味がまるで違うわけで。言葉って怖いなぁ。というか、議長はこの頃から今に至るまでの布石を打ち続けていたってことですよねぇ。議長って怖いなぁ。


■時が経てば、状況も人の心も変わるわ。あなただって変わったでしょう。

と言われながらも回想を欠かさない回想王アスランがステキすぎますが、そこですかさず「ちゃんと今を見て!」と突っこむタリア艦長に爆笑。

それはともかく、先週半ばから始まった自分再確認の旅は順調に進行中ですね。デュランダルの言葉、ハイネの言葉、現実の戦場。それらを受け入れたことで、いつの間にか失っていた本当の自分の想い。赤紫に青みが入り、また真紫〜青紫に近づいてきた模様ですが、はてさて、どう動く?


■AA「撃墜」命令

デュランダルが計算づくで棋譜を動かしているとするならば、このタイミングでカガリがオーブに戻ることも計算していたはず。AA「撃墜」命令であるところからして、キラ退治だけでなく、そちらについても妨害しにかかったと見てよさげっぽい感じ。だとすると、デュランダルとしてはカガリをそこまで過小評価していないのかも。

流れ的には、連合&ロゴス、AA、キラ、カガリと順々に動きを封じてきており、アスランは掌中の虫状態、オーブはセイラン=ロゴス関係で介入可能。残るはラクスか…といったところではないでしょうか。ロジカルマスター同士の真正面からの対峙希望っす。


■オーブ

カガリの台詞からも舞台がオーブに移ることが窺えますが、フリーダムという「理想」を撃ったシンにとって、フリーダムの次に「理想」に対する復讐戦の舞台になるのはオーブかと。デュランダルにとっても、動かしやすい世界を作るためにはオーブは重要な政策ポイントになるはず。政権中枢のセイラン一族がロゴスに与したとあれば、ちょっかいかける口実も作りやすいでしょうしね。

そうなると、この地で大きなイベントが続出するかも。順当なところではカガリのウズミン越え&シン的価値観への問題提起かなぁ。シチュエーション的には「アズラエルに攻めたてられるオーブの図」みたいなところに持っていきやすいでしょうから、デス種定番の重ね対比演出を使いながら、カガリのウズミン越え&シン的価値観への問題提起+αを掘り下げてほしいところです。


■連合でもナチュラルでもない、ロゴスこそ撃たねば、また繰り返しです

カテゴリー依存の対象が「ナチュラル&コーディネーター」から「争いを促す者&平和を愛する者」に変わり、撃つべき敵がはっきりしただけのこと。ゴールが見えている分だけ今の方がマシですが、パラダイムそのものが大きく転換したわけじゃないんですよね。

とはいえ、前作の帰結がこの地点だったことも事実。そこからさらに踏み込んだ理想を求めてAAサイド&ラクスは動いていますが、はたして、誰かを討つことで手に入れる平和に幸福はありやなしや、撃たずに手に入れられる平和はありやなしや。デュランダル的現実論のアンチテーゼとなるラクスの動向、そして、デュランダル的現実論とラクス的理想論の間でもがくカガリの成長。そのあたりが鍵になりそうですが、リアルでこの問題に解答提示→実現できたらノーベル平和賞以上だよなぁ…。内容的にハンチントン系の匂いを感じますが(←『文明の衝突』)、そのあたり(←共通点探しの方向)に落ち着きそうな気もしたりしなかったり。


■燃え

ジャミング弾にハッタリ燃え。ノイマンのテクニカルハンドリングに脇役燃え。シンに怒鳴られてビビるメイリンに笑い燃え。


■ポジショニング

キラ←アスラン→シン、ラクス←カガリ→デュランダル、AA艦長←ミネルバ艦長→PP艦長、プラント←オーブ→連合、など。今週のタリアの迷いを見ていて感じたのですが、それぞれの対立関係には中間に位置する存在がいます。順当に考えれば、中間にいる彼らこそが、それぞれの対立解消の鍵になるような気がしたりしなかったり。PP艦長もAA離脱→部隊再編→復活してくるんじゃないかなぁ。

さらにその上で超予測を立てるなら、デュランダルがラスボス系だとして、対立関係が解消された他の関係性の中から、ラクス←カガリ→デュランダル対立の援護にまわるキャラが出てもおかしくないんですよね。ラクス←カガリ→デュランダル対立に、自分たちが属した対立関係の解消を重ねるようにして。それがシンの主人公としての役割だと思えます。


■理想vs現実、意志vs諦観

できることなら殺したくない。そんな理想を掲げ、憎しみの連鎖に囚われずに自由意志を貫こうとするキラ。勝つために破壊しつくす。そんな現実的戦法で、怒りと憎しみを纏いながらデュランダル的運命に身を委ねて戦うシン。死闘の末、爆炎の中から現れた勝者は……シン・アスカ。

バトルエンタメもさることながら、一番の見所はキラ=シンの対比の行方でしょう。理想vs現実の側面では不殺モードを必殺アタックが凌駕し、自由意志vs諦観運命の側面ではクルーゼ的諦観を示すシンがフリーダムvsプロヴィデンス戦を髣髴とさせる構図でキラを貫砕する。青種割れなキラと赤種割れなシン。冷静なキラを勢いで圧倒するシン。積み重ねた二人の対比を絶妙な構図&演出で裏昇華させていく構成が、めっさ綺麗でした。

もちろん、バトルエンタメ的にもなかなかのもの。合体&換装のギミックをバリバリ使ってフリーダムを追い込みながら問答無用の対艦刀ブッ刺しに至る流れは勢い十分で、アニメアニメしたエンタメ燃えを感じさせてくれましたね。純粋な意味で戦闘シーンに燃えたのは18話以来かも。

贅沢を言えば、勝敗が読めすぎていたところがマイナスでしょうか。自由vs運命ではない以上、物語上の含意としてもプラモ販促戦略としても、山場は第2ラウンドに持ちこされる可能性が大。ちょっくら先読みできすぎな気がしたりしなかったり。と見せかけて実はSFパイロットがイザークだったら燃え、ラクスだったら萌えですが、さすがにそれはないかしらん。


■勝因分析

戦術的な意味ではフリーダムサイドの不殺モードならではの隙がポイントでしたが、物語的な含意を読むと、レイの存在が大きなポイントでしょう。

フリーダムvsプロヴィデンス戦では、クルーゼサイドに「友」と呼べる存在がいなかったんですよね。イザークやアデスは捨て駒扱いされましたし、フレイも鍵扱いされましたし。デュランダルとの関係が示唆されていますが、それも戦友というより「負け犬同盟(←ともに運命に拒絶されている)」みたいなもののようですから、キラが実感した「守りたい世界」とは別物でしょう。

そうやって孤独の中で敗れ去ったクルーゼと比べると、今のシンにはレイという戦友の存在が見とれます。友というより道具扱いされている向きもありますが、それでもステラ返還時のようにほのかな友情は在るようですから、その存在がメタな意味での強化ポイントとしてキラ打倒につながった、と見るのが自然ではないでしょうか。

とはいえ、その関係は議長の命令一つでフイっと消えてなくなる可能性が高く、砂上の楼閣みたいなもの。シンにとっての確かなつながりとは、欺瞞に満ちたレイとの友情ではなく、愛に溢れたステラとの友愛でしょうから、そのあたりの含意が今後の展開に大きな影響を及ぼしそうですね。


■敗因分析

逆にキラサイドを見ると、理想を掲げながら現実に人を殺めてきた報いが、今回ようやく到来した気配です。誰も殺したくなかった、けれど「守りたい世界」を守るために人を殺しつづけてきた、その現実から目を逸らすように「できることなら誰も殺したくない」という理想を掲げるも、同時に「力」によって人の命を奪いつづけるという矛盾を背負い、そんな矛盾から、原罪から、目を逸らしつづけてきた。その末に、シンという「現実」の前に屈したキラ。応報断罪パートに至るまで長かった…。

結局キラも、理想という甘い逃げに浸りながら、無意識に「所詮人は己の知ることしか知らぬッ!」と諦め、答えが見えなくとも「いつかは、やがていつかはとッッ!」甘い毒に踊らされつづけていたわけで。前・変態仮面もよく言ったものです。「正義と信じ、わからぬと逃げ、知らず、引かず、その果ての」敗北だ!みたいな。クルーゼは最期に笑いながら逝きましたが、これを見越していたのかもしれませんね。キラ、自由意志を以ってしても運命の前に敗北す、の巻。といったところでしょう。

ただし、今回の戦闘シーンの中では、そんな人という種の運命に対して前作ラストでキラが力強く吠えた「守りたい世界」の存在が皆無でした(←13話以降は不思議なくらいに回想していないんですよね)。ここが再起のポイントになるように思えます。前提として「生きる方が戦いだ!」の燃え価値観を据え、その上で、死という形での「逃げ」ではなく、生という形での「完遂」を選ぶことになるんじゃないかと。そう思えるんですよね。

そんなわけで、キラ復活に至る過程のタメも楽しめそう。『るろうに剣心』でいう落人村状態といったところですが、そこで己の罪とどう向き合い、どんな信念を再設定し、どんな形で「守りたい世界」を守っていくのかに超期待中。その上で描かれるであろうキラvsシン第2ラウンドで、今回不思議なくらいに描かれなかった二人の対比描写における共通項、つまりステラ&フレイの幽体離脱邂逅シーンが、対峙昇華の段階でメイン描写されるんじゃないかと超予想中です。


■議長は悪?

29話以降しばらく考えていたのですが、デュランダル議長っていわゆる「悪者」「ラスボス」的な存在ではないような。本格的に牙をむき始めたのは最近のことで、それまでは旧主人公たちへのアンチテーゼ&疑問提起キャラであり、新主人公たちへの知識&秩序提示キャラであり。今の「ロゴスを撃て」路線にしても、旧主人公たちが辿った路線を再提示することで「その路線も実はやヴぁいんだよね〜」と一歩踏み込んで問題提起する形になっていますしね。

そういった描写を見ていると、最終的に倒すべき存在になるとしても、単純な善悪論では語れないような気がします。バックボーンとしても何やら秘めていそうですしね。物語のテーマ構造において価値観をシャッフルするために用意されたNPC。それがデュランダルの位置付けではないでしょうか。ぐらすの好きなRPGに『英雄伝説6〜空の軌跡』というゲームがありますが、そこでいう○○○○○○○や△△△△みたいな存在?

ま、そうやって善悪の価値観をシャッフルされると「じゃぁどうすればええのん?どちらの言い分にも一理あるんでしょ?」という状態になりますが、このパターンには定番があって、それがこれまでの感想の中でも触れてきた「本当の想いと偽りの想い」「真の存在と偽りの存在」「想いを貫く/自分を偽る」といった視点+人と人とのつながりなんですよね。デス種でも、そこをベースに「偽り(・A・)イクナイ!」「人のつながりは大切」系でまとめるんじゃないかなぁ。

ちなみに『英雄伝説6〜空の軌跡』の帰結がどうなったかは秘密ですが、ご期待に沿えるものかと。物語構造として種シリーズと英雄伝説シリーズは類似点が見受けられますから、種好きなら『英雄伝説3〜5(ガガーブトリロジー)』を、デス種好きなら『英雄伝説6〜空の軌跡』を、お奨めいたしやす。バージョンは色々ありますが、無難なのはWin版かと。


■レイのサポートは友情?

ステラ返還時の援護は純粋な友情だったはずですが(←対フリーダム戦闘要員のシンが帰ってきさえすればOK?)、フリーダムの戦術分析については完全に議長の命令でしょう。友情云々言うならば、暗黒モードなシンに対するツッコミの一つや二つ、あってもおかしくないですからね。そう見ると、レイはシンに対してほのかな友情を抱いているけれど、それは議長の命令に影響を及ぼさない程度のドライな感情、といったところかと。この微妙な切り替えに、今作で追いかけられてきた「真と偽」のテーマ描写が仄見えて、プチ燃え。


■マリュー⇔タリア

8話で「先のことはわからないから」と語り合った二人が、戦場にて再接近。わからなかった未来が現実となった今、タリアの選んだ道は、降伏勧告→追撃→タンホイザ発射→AA消息不明。恋人としてのデュランダルとの別離から後、時がたって状況も人の心も変わった今、軍人としてのタリアさんもデュランダルとは異なる道を選んだようです。

今のデュランダルの原点は恋人としてのタリアとの別離のようですが、今回のタリアの軍令違反で二人の溝はさらに深まる気配。時がたって状況も人の心も変わった結果、二人の距離は大きく離れました。ただ、さらに時がたてば、状況も人の心も今とは変わってゆく可能性もあるんですよね。種物語の構成を考えれば、原点回帰→原点越えが基本ですから、真偽ネタとしての「デュランダルの本当の想い」とともに、デュランダルとタリアの(最終的な)変化に超期待中です。


■AA⇔ミネルバ

理想を掲げていたAAが落ち、現実サイドに与するミネルバが勝ち残り。全種世界的にもロゴス打倒という現実的政策が幅を利かせていますから、理想と現実のパワーバランスが崩れ、決定的に現実サイドが上回った状態で、舞台はオーブへ。そして宇宙へ。拮抗→バランス崩壊→???


■どうして…ここはいつも、こう……ん?

兄貴!?


■ダース・シン

カミーユ街道一直線ですなぁ。ただ、人の絆が(間接的にとはいえ)精神崩壊を助長したカミーユに対し、今のシンは人の絆を捨て去って暗黒街道爆走中。逆に言えば、人の絆を意識することができれば覚醒することも可能でしょう。その差を使ってZを再構成してもらいたいものですが、はてさて。


■ドムドムドム

誰が踏むんだろう…。予告を見る限りではエターナル所属っぽいから、シンに踏まれるのかなぁ。


■浮上

カガリ上向き、アスラン前兆モード入り、キラは底をうつ気配、シンの闇はまだ続きそう。順々に落下→浮上のベルトコンベアに乗っていますが、このペースだと旧主人公サイドは40話までには再覚醒しそうですね。問題はシン。最終話近辺まで落とすのも一つの手ですが、浮上&再覚醒した面々に説教されるってのもありかなぁ。ぐらす的にはカガリ→シンになると思いますが、はてさて。


■「大切な人がいるから、世界も愛せるんじゃないかって」
■「思うことが違っちゃうこともあるわ、その誰かがいてこその世界なのにね」
(※ 32話、マリューさんのセリフより)

大切な人がいない世界であったなら。愛することのできない世界であったなら。大切な人と思うことが違ってしまったなら。誰かがいてこその世界でなくなってしまったなら。人は、どうすればいいのだろう。愛する者を奪った罪。愛する者を失った悲しみ。愛する者との道の違い。人は、どう向き合えばいいのだろう。

少し振り返ってみて、これがデス種の根幹を成す問題提起なんだろうなぁと、改めて思ってみたり。第2〜3クールではAAが「奪った者」として断罪されつづけていますが、今回ラストのシンの壊れっぷりにも見られるように、同時にシンにも「奪った罪」に対する因果が巡ってきている気配です。というか、キラやシン以外についても、なんらかの形で犯した「罪」が、廻り廻って「戦争=憎しみの連鎖」という形で応報しているんだろうなぁ。

そうなると、現在進行中の断罪パートの中で、新旧主人公たちがデス種の根幹をなす問題提起に気づくことができるのか、提起された問題に真正面から向き合うことができるのか、そんな罪に対する逃げ以外の答えを見出すことができるのかが、物語上の因果解になるでしょうね。

物語世界全体の帰結にしても、そうやって主人公周辺の人物関係における因果解を描くことで「希望」を示し、その上で、全種世界規模の「憎しみの連鎖」については「解進行中」的な投げっぱなしジャーマンスープレックス手法を取るんじゃないかと。前作もそうでしたしね。願わくば、登場人物たちが、その解に、解に至る道に、気づくことを祈って…


■声

ぐらすは日本語吹替やアニメの声がどうとかよくわかりませんが、シン役の人、さりげに上手くないですか?種シリーズの場合、総じて言葉メインの台詞回しではないため、間やイントネーションを使い分けて想いや葛藤を表現する高い技量が必要になるんじゃないかと思いますけど、今回ラストのシンの泣き笑い方、メラ切なくて鳥肌立ちました。

今のシンみたいな状態になると、心がぶっ壊れて感情がまともな反応示さなくなるんですよね〜。それが悪循環してさらに壊れていきますから、エンドレスにおかしくなったりするわけで。ま、本当の自分を素直に見つめれば、ボロ泣き→一瞬で元に戻ったりするんですけどね(←経験者談)。そのあたりは物語的にも楽しみなポイントですが、今回のシンの泣き方を聴いていて、声の演技としても追いかけてみようかと思った次第です。



というわけで、キラvsシンの新旧主人公バトルに目を奪われがちでしたが、さりげに盛りこまれた小ネタ&含意の構成美に目を奪われた34話感想終了。深読みしまくって感想かいてたら2日かかりましたとさ(←超遅筆なもので)。31話あたりからキャラの内面変化が細かく描かれていたり、新旧主人公バトルでもキラフリーダムvsクルーゼプロヴィデンスを重ねる演出手法で物語性を高めていましたが、こういう渋い表現力&構成美は大好きです。伏線回収パートになる最終クールでも、是非、この表現力&構成力を活かしてほしいざんす。



機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第35話 〜 混沌の先に 〜

馬鹿な!って、カガリも死んだかもしれないのにキラだけ心配ですか?と軽く突っこみつつ、第35話感想ドゾー


■生存

以外にあっけなく生存。まぁ、エマージェンシーで核反応を停止させていますし、核エンジン≠核爆弾ですから、威力もそこまで大きくないわけで。ぶっちゃけ爆発よりも放射能の方が怖いのですが、MSは宇宙線遮断処理をしてあって問題なし。コクピットに全力ダメージをくらわず、物理的ショックをPS装甲+耐熱処理で耐え切れば大丈夫、ってところかと。

で、大丈夫だったわけで。核エンジン破損→エンジン爆発→各種防御→機体半壊(コクピットは無事)→救出→機体爆発ってところでしょうけど、だとすると、パイロットへのダメージはコクピットへの間接衝撃による打撲傷+高水圧にともなう減圧症くらいのものですから、十分ありっちゃあり。スーパーコーディネーターは体も丈夫みたいですしね。

内面に関しては、フリーダムという「力」が堕ちたことでアイデンティティー喪失モードに入った模様。憎しみの連鎖をなくすための戦いで「力」を行使した結果、新たな憎しみを生みだす矛盾。力は想いを実現するためのものだとわかっていながらも、想い叶わず、力だけを行使しつづける現状。想いを実現するために必要な「力」とはなんなのか。自らの罪と向きあい、葛藤モードに入るのはこれからかな?


■安心モード

AAの偽装→逃走モードを聞いたタリアさんに微・笑顔。落とす必要のないAAを落とさずに済んだというネガティブな想いなのか、AAにはがんばってもらいたいというポジティブな想いなのか。本心あかさんからねぇ、この人。要、経過観察。


■ありがとう、レイのおかげだ

前回感想の「勝因分析」がもろに引っかかりましたけど、こういう台詞を入れてもらえると「物語」を読んでいてよかったなぁと嬉しくなりますね。ま、どこまでが本当の友情で、どこからが偽りの関係なのか、残り15話で追いかけるとしますか。


■やり遂げたのはお前だ

上の「ありがとう、レイのおかげだ」の後にレイが発したこのセリフが、実にさりげにオモシロい。

やり遂げる=善。天使湯でのラクス発言以降、この価値観は絶対といえるほど肯定的に描かれています。だとするなら、AA&現アスラン視点ではネガティブに見えるフリーダム撃墜も、見方を変えればポジティブに捉えることもできると描かれているわけですね。

ポジティブだともネガティブだとも言える、その点では均衡している、シンは絶対的に良くもないが絶対的に悪くもない、だがその上で、シンがステラの本当の想いを歪め、怒りと憎しみにモチベイトされて戦っていることはネガティブだ、だからシンは壊れていく。

それが今のダークモードなシン描写だと思えますが、このセリフを聞いて&そんな描写を見て、デス種全体の話の構図がかなり鮮明に見えてきた気がしたりしなかったり(※1…後述)。


■仇はとりましたよ

レイのクルーゼ回想を見るに、レイはキラがクルーゼの「仇」であることを理解していた模様。クルーゼの仇を討ったことも含めての「よくやったな、シン、見事だった」の賛辞でしょうか。

ただ、ステラ返還支援時他のセリフを聞くに、レイは「生きる」ということをポジティブに捉えているようですから、クルーゼ全肯定というわけでもないんですよね。むしろ、運命に抗うことを諦めたクルーゼに対してではなく、運命に抗う道を選んだデュランダルに忠心を抱いているわけで。このあたりのレイ=クルーゼの微妙な関係が、終盤、どんな影響を及ぼすことになるのやら。

ついでに言うなら、クルーゼを倒したことを「僕達はどうしてこんな所に来てしまったんだろう」と嘆くキラと、ステラの仇を討ったことを喜ぶシンの対比もオモシロです。


■泣いて哀しめってんですか、祈れってんですか

キラの死をシンに哀しめとは言いませんが(←実際に死んでもいませんけど)、ステラの死に関してならば、怒りや憎しみに囚われて仇を討つという自分本位なマイナス思考は、抑えこむ方が理想なんですよね。強さは優しさ、のはずですから…。本当の悲しみを知った瞳が愛に溢れる日は来るのか来ないのか…


■レイ

「アークエンジェルとフリーダムを撃てというのは本国から命令です」「敵です」「本国がそうと定めたなら、敵です」「我々はザフトですから」「なにが敵であるかそうでないかなど、陣営によって違います、人によっても違う、相対的なものです、ご存知でしょう、そこに絶対はない」「我々はザフトであり、議長と最高評議会に従うものなんですから、それが定めた敵は敵です。」


■ラクスin種36話

「アスランが信じて戦うものはなんですか、戴いた勲章ですか、お父様の命令ですか」「そうであるなら、キラは再びあなたの敵となるかもしれません、そして私も…」「敵だというのなら、私を撃ちますか、ザフトのアスラン・ザラ!」


■アスラン

その対立構図を再認識したアスラン。

これまでのアスランは、プラント(デュランダル)は世界をカテゴライズすることなく共存の道を模索しようとしていると認識し、そんなトップの下であれば、フェイスとして軍の指揮系統に身を委ねていても異種族共存の道は模索できると信じていました。軍に所属することと、共存の道を模索すること。その二つは相反するものではないと考えていたわけですね。

ところが、結局はカテゴライズする枠組を「種族」から「平和を愛する者/嫌う者」にすり替えただけで、思考依存→盲目的な他者否定へといざなうことには変わりなし。示されたのは、撃つべき「敵」を設定し、それを滅ぼすことで平和を得るという道。ナチュラルとコーディネーターという枠組ではなく、平和を望む者と平和を壊す者という枠組にカテゴライズされた世界。

結果、今のプラントにおいては、軍に所属することと共存の道を模索することが見事に相反してしまったわけで。当然、アスランは議長の真意を問うでしょうが、はてさてどうなることやら。


■脱走支援

ダコスタ役はルナマリアではなくメイリンのようで。ようやく姉妹ネタが動きそう。ヘリオポリス組エピソードと同じような位置づけのサブエピソードになりそうで、かなり楽しみです。予告ラストでアスランが誰かに手を差し伸べていますが、議長&ミーアへの疑念同盟でルナマリアか、ホーク姉妹ネタ要員のメイリンか、自分と同じように議長に騙されていると思ってミーアを誘うか(→その上で真実を告げられてビックリ、とか)。


■少しは自分でも考えろ、その頭はただの飾りか!

種終盤で自分の頭で考えて答えを出したイザークにしてみれば、思考依存→停止している世論はありえないわけで。デス種で描かれてきた「カテゴリー依存→思考停止」というテーマについて、まさかイザークから突っこみが入るとは思わなかったので、ちょっと感動。2年前の今頃はキラに踏まれていたくせに。

…ん……踏まれた?………ま…ましゃか……

ドムに乗って踏まれるのはイザークですか!?そんな小技をつかってさらにキラ=シンを対比しようとするつもりですか!?っていうか、そんな対比をされたら「不殺キラ⇔必殺シン」のあおりでイザーク死んじゃいますよ!?イザークピ〜ンチ!

と、暴走してみる。それと、イザークの従者化しているディアッカが切ない。前作ではミリィとラブ寸前まで出世したのに、今作では落ちる一方。悲惨やなぁ


■ロゴス弾圧

連合vsザフトの第2次全面戦争にはならなさそうですが(←あとは追いつめられたジブリールの暴走くらい?)、ロゴスへの差別&弾圧は順当にスタート。

ロゴス狩りに精を出す民衆。デュランダルというプラント議長に思考を依存して、自分の頭で考えることなくロゴスメンバーを殺っていく様は、ブルコスによるコーディネーター弾圧とまったく同じ。世界をカテゴライズし、相異なるカテゴリーへの弾圧を誘う様は、ロゴスによるブルコス扇動とまったく同じ。

確かに、その果てに平和が見えるというのは素晴らしいことですが、システム設計者が神→ロゴス→デュランダルと変わっただけで「敵」を倒すことに変わりなし。はたして、それで本当に平和になるのか。正義と信じ、わからぬと逃げ、知らず、引かず、その果てに待つものは平和なのか。それが平和のためならば、相手が「化け物」ならば、人殺しも許されるのか。新しい憎しみを生み出し、果てない争いの世界を作るだけではないのか。その果ての平和とは、平和の意味とは何なのか。

仮にその果てに平和な世界を構築できたとしても、憎しみそのものが消え去るわけじゃない。ただシステム設計者が隠蔽処理を施しただけで、何かしらのきっかけがあれば再燃する可能性が大。それこそ、ユニウス7事件のように。デュランダルはそういった

あらためて「デュランダルって問題提起キャラだよな〜」と感じさせられますけど、その結果がこんな殺戮じゃ、そりゃクルーゼ閣下も笑いますよ…


■でも、もういないわ…

ムウ=ラ=フラガは、もういない。そうこぼすマリューさんですが、先週の「ん?」を見るかぎり、ネオにはムウとしての記憶が戻っているような、そうでないような。今回のセリフも素のムウ・ラ・フラガとして言っているんじゃなかろ〜か。タメタメモード全開ですよ〜。


■チェス盤

白の大駒(←キングとビショップ?)を黒のポーンが追い詰めるの図。ただ、まだ白の大駒2つは盤上に残っていますから、完全に排したことにはなっておらず。窮地脱出なるか


■こちらが手をつかねているうちに、こんなことにまでなってしまうとは

腹芸モードなデュランダル議長ですが、直後の「白のクイーンは強敵だ」発言を聞くに、120%計算どおりのはず。と同時に、ラクスとの直接対峙の日も近そうです。


■ラクス

そんな具合にライバル視されているラクスですが、なんだかんだ言っても、武力を用意せざるをえないんですよね。もちろん、敵を撃つための「力」ではなく布教活動の中で身を守るために必要な「力」でしょうけど、ここまで用意周到に布石を打って動きを封じてきたデュランダル相手に「力」抜きでどう抗うのやら。このまま行っても、また敵を撃つために「力」を使わざるをえなくなりますが…

ただ、気になるのは、結局ラクスは「力」を手にせざるをえんのかと。身を守るために「力」が必要というのはわかりますけど、物語として「現実:デュランダル←中間:カガリ→理想:ラクス」という構図であるにもかかわらず、理想サイドのラクスが現実サイドの「力」を手にするという状況が激しく疑問。それだと「争いがあるから力が必要」というデュランダル説を、議論する前から肯定してしまっているんじゃないかと。最終的には矛盾を昇華して成長へとつなげる物語だというのはわかるのですが、それはカガリの役目なんじゃ…?


■剣をとらせるには、なによりその大義が重要である

次いで「撃つべき敵と、その理由が納得できなきゃ、誰も戦わないものね」「今私たちには、はっきりとそれが示された」「ありがたいことかしら、軍人としては」とのこと。

示された大義に信をよせ、決意を新たにするシンたちザフト軍人。示された大義に疑いを抱き、軍から離れようと決意するアスラン。予告タイトルで「脱走」と全バレしたのはポカーンでしたが、前兆モードから当確モードに入った模様。次回は回想王の底力を見せつけてくれそうですが、好きなだけ回想した上で覚醒しておくんなまし。それこそ10分でも20分でもOKっす。


■さて…と、これが最後のカードとなるか否か

議長、目つきが黒いっす。


■レジェンド拝領

キラ・ストライク撃墜→ラクス説教(表)→ジャスティス拝領。キラ・フリーダム撃墜→レイ説教(裏)→レジェンド拝領(?)。表裏を成す主張から、反語的に裏返った構図でレジェンド拝領へ。半盲目状態でジャスティスを受領した前作とは異なり、今回のアスランは明らかにレジェンド拝領を拒絶する流れですが、こういう渋い二層構図がたまらないのねん。


■※1

シンの「議長やるんだ、諦めないんだ、って」もそうですが、やり遂げるという点においては、AAサイドもデュランダルサイドも同等にポジティブ。どちらも等価な存在なんですよね。この辺がお話を読みとくミソかと。

1話の「争いがなくならないから力が必要/力があるから争いがおこる」が典型で、今の「誰かを撃って平和を得る/撃たずに平和へと至る道を探す」もそうですが、デュランダルは旧主人公たちと反対のスタンスを示しつづけています。第2クール〜第3クールにかけて前作の善悪価値観がシャッフル&相対化されましたが、その状況を生んだのもチェスマスターであるデュランダルですから、そういう意味では、前作で「善」とされた旧主人公たちに対して疑問を呈するアンチテーゼキャラクターがデュランダルなんでしょうね。

そうやって見ると、現実サイドと理想サイドの二つの考え方を示し、両者を対比することで、視聴者に「さぁ、あなたはどう思います?」と問題提起しているのがデス種のお話だというのが見えてくるんですよね。結果、色々なところで「誰々のいうことは正しい」「誰々は馬鹿」「誰々のやっていることは偽善」などと意見が分かれていますから、みんなして思いっきり制作サイドの思惑通りのリアクションを示しているわけで。個人的に、次ステップへの入口要素をピコッと盛りこんだお話は大好きなのですが、上手いこと話を作ったもんだよなぁ。


■その上で

その上で見どころなのは、平和や力に対する「考え方」とは別次元のファクターとして、真実を偽る→イクナイ→ダーク描写だったり、思考依存する→イクナイ→ネガティブ描写だったり、理想サイドのキラ&AAが現実サイドのシン&ミネルバに撃たれてパワーバランスが崩れたりしている点でしょう。

それらの影響で「考え方」以外にもいくつかの論点が入り乱れ、何が善で何が悪かがややこしい&わかりづらくなっていますけど、逆に言うなら、平和や力に対する「考え方」においてはイーブンである両者の是非を、考え方ではなく「信と偽」「自立思考と思考依存」といった別の角度から問う形になるんじゃなかろ〜かと思ってみたり。



そんな具合で35話感想終了ざんす。感想をまとめた印象では、今回がデス種が開始してから一番内容が濃かったような気がします。まもなく4クールですが、いくつも貼られた伏線や問題提起にどう答えを出すことになるのか、前作も終盤で一気に追い込みましたから、今回もかなり期待中です♪



機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第36話 〜 アスラン脱走 〜

全編回想だと思っていたのですが、意外と回想が少なくてショボーン。でも、あいかわらず丁寧な物語構成に燃え。富野ガンダムにはないからなぁ、こういうの。単発エピソードを接着剤なしで直列につなぐような真似されても、アッサリというか味がないというか、薄っぺらいんじゃよ。よく言われる「名言」にしても、芝居がかったネタとしての面白さがある反面、長期的な伏線があるからこそ生きる類のセリフじゃないっすからねぇ。広がりのある世界観や人間味のあるキャラクターを造形する表現力はスゴいのに、もったいない。と、軽く富野ガンダムを批判しながら36話感想スタート。


■デスティニー

と言いながら、単発セリフに萎え。火力、防御力、機動力、信頼性、その全てにおいてインパルスを凌ぐ最強の機体。なのは結構なことですが、今までシンが機体の限界にイラつく描写はなかったのに、いきなり「インパルスでは、機体の限界にイラつくことも多かったと思うが」と言われてもポカーンなんですけど…。あいかわらずMSバトル関係はテキトーやなぁ。


■それでは戦うしかなくなる

言葉を聞かない乱暴者を鎮めるためには武力を行使する以外に道はない。一見すると筋のとおった話なのですが、デュランダル=チェスマスターという描写を見るに、ロゴス&連合がプラントの言葉に耳を傾けない状況を作ったのも、AAがプラントと道を共にしなかったのも、見えない部分で彼らをデュランダルが操ったから、という可能性が大。

特にAAに対してはそれは明らかでしょう。デュランダルに会いに来なかった→13話での襲撃により危機感を抱いた、勧告もした→理由も告げずに攻撃した上での降伏勧告なんて信頼できず、ラクスという同士もプラントに来ている→偽者。ロゴスや連合の動向についても、デストロイの情報バレしていたところから内通者がいることは明らかですから、いろいろと画策した気配はありあり。ユニウス7落としも1〜2枚からんでいるかも。

プラントの裏を読んで動いたAAサイドのさらに裏を突く、みたいな感じですが、これまでの暗躍路線がビシビシつながってメラ気持ちいいっす。


■彼らは言葉を聞かないのだから

日本語しか話せない日本人に英語で語りかけても意味はないんですよね。相手に理解してもらえるように慮り、互いに理解できる「共通言語」を使ってこそ、言葉は意味を持つのですから。それをせず、自分の価値観や文化を絶対的なものだと勘違いし、自分にしかわからない「一方通行言語」で語りかけたところで、会話になるはずもなく。

たしかに、言葉というのはものすごく理性的なフレーズです。けれども、拠って立つ価値観や文化が異なる相手に対して、土台の違いを考慮せずに言葉を伝えた「つもり」になってしまうのは超危険。自分は「言葉」を伝えた、けれども相手は理解しない、問題なのは「言葉」を理解しない相手だ、自分にはなんの落ち度もない。そう勘違いしてしまうと、場合によっては「アイツは馬鹿だ」と罵ったり、酷くなると「言葉が通じないなら力でねじ伏せる」と暴れたりと、ひどく乱暴な対応になりかねないんですよね。

議長は確信犯的にそういった状況を作り出しているわけですが、そういった描写を見るに、2クールから顕著になってきた「自分解釈盲信→他人解釈軽視→争いがおこる」のテーマ描写をきっちり「言葉」に落としこんでいて燃え燃え。脳髄シビれるフレーズが良い感じです。と同時に、改めて「デス種って問題提起型だよなぁ」と思わされまくり。まぁ、種の段階で「言葉以上に共通体験が必要」と答えを示していますから、デス種でも最終的にはそこに結実していくんでしょうけど。


■マキャベリ系

「人は自分を知り、精一杯できることをして役立ち、満ち足りて生きるのが、一番幸せだろ」
「この戦争が終わったら私は、是非ともそんな世界を作りあげたいと思っているんだよ」
「誰もが皆、幸福に生きられる世界になれば、もう二度と戦争など起きはしないだろ」


■幸せ、不幸

持っている力にあわせて与えられる役割。そんな役割を精一杯こなしていくところにこそ幸せがあるのだから、役割を与えて考える必要のない世界を作ることができれば、個の欲求にとらわれた戦争など起こりようがない。これまで肯定されてきた「想い」「自発的思考」を「欲望」という形に置きかえ、欲望=想いがあるから争いがおこる、それをなくして思考を誰かに依存すれば争いはおこらない、という具合に論を展開。

想いを重視しているラクスサイドとは相反する考え方ですが、二つの考えをそれぞれ「想いをベースに戦って葛藤するキラ」「役割をベースに戦って喜ぶシン」の姿に象徴させて対比したカットインがメラきれい。表裏をなす二つの考え方を提示することで「さぁ君はどう考える?」と問いかけてくる物語構成に燃え燃えです。

ミーア&メイリンネタでも描かれていたように、今後はこのあたりの「自立⇔依存」がメインテーマになっていきそうですね。そこに「真と偽」「想いと力」「意志と諦観」といったテーマを絡め、最終的には「想いを持つ=自発的に考える=真の自分=自由意志」vs「力重視=思考を依存=偽りの自分=運命諦観」という構図に落としこみ、現代的な社会テーマと絡めるように問題提起してくるお話になるんじゃまいかん。


■議長話術

議長サイドの主張の長所とAAサイドの主張の短所が表裏をなす論理構造なんですよね。議長サイドの主張の長所を否定すること=AAサイドの主張の短所を肯定することとなってしまうため、二者択一的に考えてしまうと反論することが難しくなる。他社との比較をされた際に用いる潰し営業トークの典型だったり。


■デュランダルの最終目的

力に適したポジションに民を配置し、想い=個人の思考や欲求を極力排除することで、自我のぶつかり合い=争いを起こりえなくする徹底した管理社会の実現。今週の話を見るとそんな感じですが、さらに29話も併せて見ると、何らかの意図で遺伝子技術も併用する模様。妥当なところでは遺伝子エリートを管理&統括のサポート役に配置する感じかなぁ。

今回の話と29話ラストの「己のできること、己のすべきこと、それは自身が一番よく知っているのだから」をあわせて考えると、己のできることやすべきことは自身が一番よく知っているけれど、想いが不純物となってそれを実行する妨げとなるから、この際、想いを取り除いて適材適所に配してあげるね、みたいな。

イメージ的には映画『マトリックス』の世界観が近いかも。デュランダルがアーキテクトもしくはデウス.エクス.マキナ、レイやシンがエージェント、オラクルがラクス、旧主人公がザイオン。似たような話は色々とありますけどね。

ただ、個人を適材適所に配置するというのなら、ぶっちゃけ、コーディネート技術は不要な気が…。次世代が生まれづらいことも解決していなさそうですし。議長がタリアと別れたのも「遺伝子操作→子どもが生まれない→婚姻統制」が原因のようですから、議長としてはむしろコーディネート技術の普及を嫌ってもおかしくないような…。一部の監理用エリート育成のために使用することはあるでしょうけど、全体的には不要じゃね?


■戦士の条件

勝手な理屈と正義で、ただ闇雲に力を振るえば、それはただの破壊者だ。俺たちは軍としての任務で出るんだ。それを忘れさえしなければ、確かに君は優秀なパイロットだ。(17話より)

上手いこと「戦士」というフレーズを引っ張ってきたなぁ。愚直に任務を遂行することが戦士の条件、任務遂行の上では個人の想いは不要。ただ、大元の「命令」に疑問を抱いた時、軍や政府の命令こそが勝手な理屈と正義であると知った時、あるべき「戦士」の姿とは?…みたいな。

デュランダル的にはそれでも「想い」を捨て「命令」に殉じて戦うことができる者が「戦士」であり、AAサイド的にはその時に「想い」を抱き「命令」に対して戦うことができるものが「戦士」であり。そうやって二つの価値観を示して問題提起してきたわけですが、その上で決断を迫られたアスランが出した答えは、後者的「戦士」である道。その道を選んだアスランが再びシンに「戦士の条件」を問うことになるであろう次回、激熱ですよ〜。

順当に行けば、シンは「デュランダル的戦士化→オーブでvsカガリ→葛藤→???」というルート、アスランは「撃墜→想いだけでも力だけでも→IJゲット」というルートっぽいですけどね。


■ジブラルタル(反ロゴス)⇔ヘブンズベース(ロゴス)

反ロゴスがジブラルタルに集合する一方、ジブリールはヘブンズベースとやらに移動。次はそこが戦場になりそうですけど、キサカが再登場したところを見ると、その次がオーブ。んで、ドラグーンシステム搭載のレジェンドがあるってことで、最後に宇宙かな。ストーリー的に考えれば、ヘブンズベースでカテゴリー依存&役割依存をアピールして現実サイドへの傾きを強め、オーブで現実サイドに傾いた状況を理想サイドに振り戻して均衡させ、最終決戦は宇宙で、みたいな。


■なんかこう、落ち着かないわね→そうですね、もうあれは、敵とすりこまれている感じで

馬鹿なことを言うアーサーたんに萌えつつ、さりげない会話に燃え。カテゴリー依存って怖いなぁ。


■大丈夫かね、体の方は

ものすご〜くアッサリ流されましたけど、クルーゼ同様、レイも老化や不調の問題を抱えているってこと?


■いえ、生きています、彼を殺さないかぎり、胸の中で

これ、ものすご〜く意味深。胸の中で生きている者と、現実に生きている(いた)者。胸の中で生きている者は、その言葉や生き様を受け取った者が自分解釈した結果、現実に生きている(いた)者とは微妙に違うんですよね。それが、視野を自分にとって都合の良い形へと歪め、私怨へとつながり、争いを生んでいるとも言えるわけで。

そしてもう一つ。アスランの中で生きている者、シンの中で生きている者、キラの中で、ラクスの中で、カガリの中で、デュランダルの中で生きている者。ならば、レイの中で生きている者は?


■手を差し伸べる

ウマウマ〜。ミーアの差し伸べた手を振り払い、誰かに依存せずに自らの意志で動く道を選んだアスラン。そんなアスランの差し伸べた手を振りほどき、自分も人も偽りながら役割を演じる道を選んだミーア。逆に、アスランの差し伸べた手を握りしめ、勢い優先ながらも自らの想いに殉じる道を選んだメイリン。この違いがハッキリクッキリ。2クールのアスラン女難+ルナマリアのミーアへの疑惑+ミーアのラクス演技+メイリンの内気なアスランチェック=36話、という流れもしっかりしていて、見ていて嬉しくなりますよ。


■ミーア&メイリン

メイリン←ルナマリア→ミーア、自発←中間で葛藤→依存。メイリンは勢いで突っ走った感があり、ミーアも完全に割り切ってはいないようですが、方向性としてきっちりメインフレームに重ねてきましたね。前作もヘリオポリス組エピソードをメインフレームの「脱カテゴリー&相互理解」に重ねていましたが、種は重層描写がうまいなぁとつくづく感心しきりです。

と同時に、メインフレームとして「自立⇔依存」というお題があることを改めて認識。前作では「カテゴリー」に対する依存に重点が置かれていましたが、デス種では種族や平和というカテゴリーへの依存だけでなく、アスラン&カガリの相互依存、パトリックに依存したユニウス7テロ、真ラクスの存在と議長の言葉に依存したミーア、といった様々な「依存」が描かれてきました。それらを見るに、デス種では種で描かれた「カテゴリー依存(・A・)イクナイ!」をもう一段階広げてきたという印象です。きっちり続編していて良い感じ。


■偽者だっていいじゃない

なんというかですね、物語上でも意味を持ったステキな台詞なのですが、もう一つの見方として、これは「ラクスを偽ったミーアを演じている田中理恵さん」の台詞なわけで。偽ものバンザイ。


■アスラン脱走

議長の演説前後から少しずつAAサイドへの揺れ戻しが見られていたアスランが、高確率モードを経て前兆モードへ到達。あとは規定された前兆ゲーム数をこなせばボーナス確定ですよ〜。まぁ、前兆ゲームもかなり長そうですけど、あとはボーナス確定=種割れまで一直線。ハマリ回数が長かった、というか天井まで逝ったっぽいですけど、その分だけBIG連荘→爆裂させてくれそう。万枚万枚〜♪

種最終話:BIG終了&連荘ならず→デス種9話:高確率モード→13話:ボーナスorチェリーの二択でチェリーを引く→24話:低確率モードへ転落→34話:高確率モード到来→36話:前兆モード昇格→???話:ボーナス確定=種割れ。こんな感じ?

パチスロの話がわからない方は、とりあえず「アスラン種割れ近し」ということで。


■小ネタ

コンピュータを使ったメイリンのアスランデータチェック、7話の射撃上手なアスランをここにつなげるかぁという印象。MSバトル関係とは違って、このあたりはネタふりしてくるなぁ。


■俺は許しませんよ、ギルを裏切るなんてこと!

と言いながら、メイリンがいることをスルーして銃弾を放つレイ。現状では「ギルへの忠誠>戦友への情」であることが垣間見え、シンへの友情もさらに怪しくなってきましたが、最終的にはどうなることやら。

というか、各所で「メイリンを拉致ったのはアスランなのに「撃つな」というのは自己中」という意見を見ますが、アスランが差し伸べた手を取ったのはメイリン自身の意思(←意志ではなさげですけど)であり、強制拉致ではないのですから、無問題だと思うんですけどね。


■アスランが…そんな…なんで!?

ん〜、自分解釈全開。シンからすれば、アスランのAAへの拘りや議長への反感はそれほど大きくないと考えていたんでしょうね。しかも「レジェンドを与えてもらえるほど評価してもらってもいるのに!?」みたいな。

上の「彼らは言葉を聞かないのだから」の項でも触れたように、言葉を聞かないというより使っている言葉が違う、その違いに気づいてない。だから、自分にとっては大したことがないように思えることが、実は相手にとってとても重大なことであることに気づかない(←逆も然り)。

自分の論理(言葉&文化&価値観&行動)こそがスタンダードだ→それに適さない他人の論理(言葉&文化&価値観&行動)は暴挙だ→アイツは馬鹿だ→バトル。シン目線と視聴者目線を分けて考えないと混乱するところではありますが、そんな自分解釈盲信型他者否定の流れがハッキリしていてグッドです。


■Find the way

種49話までのEDラスト

♪ Find the way 輝く宇宙に 手は届かなくても 響く愛だけ頼りに 進んだ道の先 光が見つかるから You'll find the way

種50話のEDラスト:

♪ Find the way 言葉なくても 飛ぶ翼はなくても 乱す風に負けぬ様に 進んだ道の先 確かな光を見た… You'll find the way

種49話までのEDラストが「光が見つかるから」で、種50話のEDラストだけが「確かな光を見た」なのが熱すぎるところかと。視覚的にも「光を見た」に「光=アスラン&カガリ=人とのつながり」を重ねているのが激熱。歌と重ねてはいませんが、ディアッカやイザークたちも「光」を見ているのもプチ熱(←ディアッカたちのは物理的にはレイダー=力だけに依存した存在の爆発光ですけど)。


■ラクス⇔デュランダル

種47話ラクス:
私たちは間に合わなかったのかもしれません。平和を叫びながらその手に銃を取る、それもまた、悪しき選択なのかもしれません。でもどうか、今、この果てない争いの連鎖を、断ち切る力を!

デス種36話デュランダル:
戦いを終わらせるために戦うというのも、矛盾した困った話だが。だが仕方ないだろう、彼らは言葉を聞かないのだから。


■リセット&再起動終了

矛盾(ネガ)を抱きつつも「進んだ道の先」にある「確かな光(=人との絆=ポジ)」を信じて生きる。

そんな前作の帰結に回帰し、前作の「矛盾=力による平和獲得(ネガ)」の延長線上こそがあるべき未来だと説くデュランダルサイドvs前作で示した「光=人の想いやつながり(ポジ)」の延長線上に未来を求めるラクスサイドという対立構図を以って、デス種最終クールへ。こういう長期的な伏線処理をしてくるところが種の熱いところなんですよね。

これまではDESTINY本編を描くための前作価値観リセット&再起動パートでしたが、次回、アスランのシンへの問いかけ→シンの確信的なデュランダルサイド化を以って盤上がすべて整うはず。ようやくガンダムSEED-DESTINY、本編開始ですよ〜。前作でキラたちが「見た」「光」を、「光」の先に待つ世界を信じて…。熱いよ〜熱いよ〜!

というか、次回タイトルの「雷鳴の『闇』」。中島美嘉「Find the way」の「光」も掛けてるような…。


■ストライクフリーダム

の意味を考え中。原点回帰ってことかなぁ。元はと言えば、友や仲間を守るために剣をとったのがキラですから、そこに回帰して(争いを止めようと動く人たちを)守るために戦う、みたいな。ついでに発進シーンも考え中。デスティニー&レジェンド起動と同じ構図か、種34話のフリーダム起動と同じ構図か、種1話のストライク起動と同じ構図か。思いつくところで3つですけど、個人的にはストライク起動と重ねてほしいっす。格納庫炎上→Sフリーダム起動、とかなったら激熱なんですけどねぇ。


■見方の違い

いくつかの考察サイトとここの板を見ていて思うのは、特にここ数話、見方の差が露骨に出始めているような。

シン←アスラン→キラ、デュランダル←カガリ→ラクスのように、極の二人とその間で動く一人を配して、そんな三者の関係性全体を通じて「真と偽」「想いと力」「自立と依存」といったテーマを軸に一貫したストーリーを構築&問題提起してくる長編物語がデス種かと。るろうに剣心が「剣心」「斉藤」「志々雄」「蒼紫」「縁」といった各キャラの主義主張を取りまとめる形で問題提起→解を示したのと同じような感じですね。というか、調べていて「夷腕坊」の声優が八嶋智人さん(へぇへぇの人)と知ってプチ驚き(←公式プロフィールにはないのですが…別人?)。

考察サイト系にはそんな感じでストーリー全体を意識しながら各話を読み進める人が多く、逆に、ここの板や批判系の多くはキャラクター単体をもって楽しめた(or楽しめなかった)という感じの人が多いかと。自然さよりも役割重視のキャラクター造形、単話&単クール完結よりも長編展開に重きを置いたストーリー構成ですから、その辺を意識して追いかけた方が楽しめると思うのですが、はてさて。

ちなみに、デス種考察でしたら、自分の知るかぎり「ランゲージダイアリー」「蒼穹のぺうげおっと」「ネタ置場 あじ(いろいろだらだら話内)」なんかがオススメです(敬称略でスンマソン)。ランゲージさんや蒼穹さんのTBから進めるリンク先にもオモシロ考察サイトがかなりあるので、肯定派/否定派を問わず、一度目を通してみてもが良いかも。



そんな感じで36話感想終了。今まで散りばめておいた伏線が良い感じに一本化→生きはじめてきた感じ。これがあるから種視聴はたまらんよ。次かその次くらいから最終クールが始まりそうですけど、一気に駆け抜けてくれ〜♪



機動戦士ガンダムSEED DESTINY 第37話 〜 雷鳴の闇 〜

自立と依存。そんなテーマ描写を深めるためのサブエピソードだと思いきや、さらに「妹の死(?)」によってシン的正義への問題提起ファクターとしても立ち上げてきたメイリンネタ(シンの妹←シン←キラ、ルナマリアの妹←ルナマリア←シン)。さらに重ねられて熱い、というか厚い。そんな37話の感想です。

というか、最近、脳内雛見沢(ひぐらしのなく頃に)→脳内フェルガナ(イース〜フェルガナの誓い)と、住まいを点々としながら各世界にドップリなのですが、ファルコム製RPG(英雄伝説&イースシリーズ)と種シリーズって話の構成が似ているよなぁと感じまくり。と同時に、そんな仮想世界ドップリな生活って人としてどうなのよ、と感じまくり。現実世界でもがんばろっと。


■デスティニー発進

順当にダークモードでの地味発進&初戦闘。いかにも「議長の命令どおりに動く人形」なニュアンスが漂い、燃えも光も派手さもない「闇」モードな発進です。議長への絶対依存モードへと突入し、想いをなくした駒として戦うシンですが、それでも己の(というか議長の)正義を信じて種割れ。今回のアスラン撃墜と次回のヘブンズベース攻略をもって完全に議長サイド化しそうですが、そこからどう覚醒へと至るのか(or議長サイドを突き進むのか)、要注目。

ちなみに、レジェンド起動シーンによると、今回の新ガンダムシリーズは「Unsubdued Nuclear」という技術を使用しているとのこと。辞書を調べてみると「抑えられた核」という意味っぽい。どう見積もっても、開発には数ヶ月以上かかるわけですが(←というか一般には数年〜十年単位ですけど)、そんなものをいつから用意していたのやら。


■中間キャラ

シン覚醒に関しては、確かな信念をまとったカガリ&同じように妹を失った(と思っている)ルナマリアが鍵になりそうですけど、最近つくづく「中間キャラ」が重要だなぁと。

キラ←アスラン→シン、ラクス←カガリ→デュランダル、メイリン←ルナマリア→ミーア。中間にいたキャラクターが両極の間で揺れ動く→そこでの葛藤を経て覚醒→両極の見方を知るからこそ出せる解を提示→極キャラが刺激を受けて覚醒。

二つの見方、考え方を知るからこそ、道を選ぶことができる。二つの見方、考え方を知るキャラクターの問いかけだからこそ、共感できるところがある。前作種から「相互理解のためには同じ視野&知識&体験が必要」と語られてきましたけど、それがデス種になってから「中間キャラ」の役割として実践されてきた感じ。いいわぁ、こういう流れのはっきりした続編もの。


■アスラン←シン→レイ

アスランが完全に「自立&意志」サイドに立つことで、今後の「自立⇔依存」「意志⇔諦観」の対立項において、直接的な対立関係として「アスラン←シン→レイ」という構図が登場。中間キャラであるアスランが「依存&諦観」を促す議長の真意に気づいて覚醒した結果ですけど、解を示した中間キャラが、新しい対立項において中間キャラに語りかけ。イイヨイイヨ〜、順調だよ〜。


■人質ではない

躊躇せずにアスランの手をとったメイリン。アスランに思考を依存したのではなく、メイリン自らの意志で選択。自発的思考⇔思考依存という対立項が細かい台詞にもまぶされていて、静かに燃え。


■彼らの言葉は、やがて世界の全てを殺す

回想という「自分解釈」に閉じこもるのではなく、脳内で回想していた「自分解釈」を相手に伝えるため、回想=自分解釈に頼った「起+回想+結」という一方通行言語から抜け出し、相手にも伝わるように「起+承+結」の揃った共通言語で語りかけるアスラン。そんな台詞構成の変化に燃えつつ、直後に「俺はそれを…」と語っているように、前大戦の「敵を撃つ→憎しみ拡大→殲滅戦争」という顛末を知るアスランならではの台詞内容に燃え。

加えて、表面&ストレートな意味では「敵を撃つ→憎しみ拡大→殲滅戦争」という危険性を語りかけつつ、ここ数話の流れの中で、裏面&含意的に「思考依存→想い放棄→人とのつながり消滅=『世界』の消滅」と意味を持つのがステキすぎ。昨年流行した『世界の中心で愛を叫ぶ』では、世界は自分が認識する範囲であり、人とのつながりを以って広がっているもの、その中心は自分自身であると描かれていましたが、そんなプチ哲学的な含意が「彼らの言葉がやがて世界の全てを殺す」にも感じられて、さりげなく良かったっす。


■聞け!シン!⇔シン!聞くな!

カガリとアスランの相互依存、パトリックの言葉に思考依存するユニウス7テロリスト、ミーアの言葉に思考依存するプラント市民、といったように、依存の対象を「カテゴリー」から「他者(の言葉)」へと広げてきたデス種。3クール終盤では「自発的思考⇔思考依存」の対立項がより強烈にプッシュされていますが、そんな対立項を〆くくるようにして、アスランの「聞け!シン!」とレイの「シン!聞くな!」が重炸裂。厚いよ〜厚いよ〜。


■議長サイドのポジション

この「シン!聞くな!」からも窺えるように、議長サイドは、自分の頭で考えることを否定&阻害しようと動くポジションですね。さらに、レイの「議長とそれに賛同する人々の想いが無駄になったらどうする」を聞くに、想いを抱くのはトップだけ、ボトムが想いを抱いても場を混乱させるだけ、という考えでもあるようです。

これまでの議長セリフにも、何度か「仕方ないだろう」というフレーズが登場。グフ撃墜後のレイも、メイリンを殺したことを葛藤するシンに「任務だから」「敵だから」と語りかけ、葛藤を放棄させようとしているのですが、考えても仕方ないだろう、がんばっても仕方ないだろう、想いなんて捨てようぜ、諦めようぜ、と、明に暗に語りかけ。それは同時に、自分の頭で考えることを肯定&促進しようと動くポジションの人々を盤上=世界から排除しようとする行為にも直結。キラ、ラクス、AA、そして、オーブ。話がつながってきましたよ〜。


■種割れ

で、そんな思考依存&放棄させようとする議長サイドのセリフによって、どんな敵とでも戦う、戦ってやると、シンの思考放棄終了。戦う理由、信念の在り処、それらを議長に依存しならがも、それこそが己の正義だと信じて種割れ。ダース・シン、誕生の瞬間です。種のキラやアスランもそうですが、考える材料を与えた上で(一瞬とはいえ)一人で考えるパートを用意し、回想や一人ザワールド状態を通じて解へと至る丁寧さが良いっす。


■携帯電話

と、力や役割に傾倒し、依存&諦観の向きを強めるシンですが、ラストではメタグッズ「携帯電話」が久々に登場。上で「シンの思考放棄終了」「ダース・シン、誕生の瞬間です」などと言いましたが、首の皮一枚で理想サイド(想い、真実、自立、意志)とつながっている模様。

現実サイド(力、偽、依存、諦観)が正しいと思いつつも、だからといってメイリン殺害を「任務だから仕方ない」と完全に割り切ることもできない。ルナとの泣きシーンもそうですが、現実サイド化が終了する一方で示された、わずかな理想サイドの匂い。今後、それをどう活かしてくるのかに注目でしょう。地味にタメていますよ〜

というか、これまでの「カガリとのシンクロナイズド壁叩き」「君は本当はオーブが好きなんじゃないのか?」「止めようとしたのに!」といった描写を見るに、実はシン君、ベースとしては理想サイドの匂いが強い人なんですよね。ワクワクドキドキ♪


■レイの胸に生きている者

最近「レイってデュランダルを妄信しているのかな?」と思うことがあったりなかったり。テーマから「力優先=思考依存=偽り=諦観」を象徴する者が誰なのかを考えてみても、デュランダルよりクルーゼの方がより近いポジションにいるような。29話感想でも触れたように、デュランダル自身が「血の道」を選んだ以上、その根底にあるのは「運命への諦観」ではありませんしね。

そこに前回の「生きています」発言ですよ。我ながら勘ぐりすぎとは思うのですが、妙に秘めた含意が漂いまくっているような…。ぶっちゃけ、クルーゼは生きているような…レイの胸の中で。デュランダルよりもレイの方が怪しいと思う今日この頃。


■「議長っ!」「少しお話させていただきたいんですが」

タリアさん、かなり議長に反感を抱いている模様。実はこの人もアスランと同じような立ち位置にいて、理想サイドに傾倒もせず、かといって現実サイド一色になるでもなく、両者の間をフラフラフラフラしているキャラクターなんですよね。メイリン←ルナマリア→ミーアネタと共に、マリュー←タリア→ネオ?という具合に「自立←葛藤→依存」を示す構図になってきそうですが、サブであるタリアさんエピソードをどうメインフレームに重ねてくるのか、か〜な〜り〜期待しています。議長の真実とも関係深そうですしね。


■ミーア葛藤

前回で依存サイドであることを選択したミーアですが、地味に葛藤中。流れ的にルナマリアとの絡み(←♀×♀じゃないですよ)が見たいところですけど、どう転んでいくことやら。ただ、ストーリー上に「偽ること=悪」という価値観が漂っていますから、最終的にはもう一転び→中間点まで戻ってきて、そこで「ミーア・キャンベルとしてでも、ラクスとしてでも」と動いてもらいたいなぁ。


■妹を奪った者、妹を奪われた者

生死の淵をさまようメイリンたんですが、そのことを知る由もないミネルバで、シンとルナマリアが遭遇。妹を失ったルナ&妹を奪ったシン⇔妹を失ったシン&妹を奪ったキラ。戦争をなくすための戦いの中でシンの妹を奪ったキラ⇔戦争をなくすための戦いの中でルナの妹を奪ったシン。この対比&二層構図が気持ちいい。ここをシン的正義への問題提起の起点として、家族の本当の想い、ステラの本当の想いに気づいてもらいたいところです。


■泣いて哀しめってんですか!祈れってんですか!(35話)

任務だから仕方ない。そう諦観し、ただ泣いて哀しむルナマリアとシン。謝る→許す→泣いて哀しむ。改めて「それも一つの答えだよなぁ」と。ここで引っ張ってくるかぁという感じで、さりげない台詞重ね→一つの解提示がキレイすぎ。イイヨイイヨ〜。

加えて、ルナマリアに「任務だから仕方ない」という諦観モードが見え隠れ。冒頭でも、きな臭くなったジブラルタル基地内で「船に戻った方がいいのかな?ねぇ、どうしよう?」とヨウランに思考依存していますし、メイリンのスパイ疑惑裏づけ資料を見て「そんなはずはありません、あの子がそんな、そんなの何かの間違いです」と思考停止もしています。偽ラクスを知っても動くことができないでいる、という伏線がここで活きてくるとはビックリ驚き。色恋がらみ以外では依存&諦観の向きが強いキャラなんでしょうね。色恋奥手&いざという時に自発的に動いたメイリンの逆かと。

事情聴取をシーンを見るに、議長サイドがメイリンのスパイ行為を捏造し、撃つことの正当性を示して「任務だから仕方ない」という諦めを誘ったんでしょうけど、自らの意志で自発的に行動したメイリンと諦観して思考依存したミーアの中間で、今は諦観&依存サイドに傾いている模様>ルナマリア。しばらくは諦観&依存サイドに傾くのでしょうが、意志&自立サイドへの揺れ戻しはくるのかな?サブエピソード、順調に進行中です。


■話し合えることなら、それに越したことはないのだが、本当は

言葉が通じるのなら攻めることはしない、だが、言葉が通じない、だから攻める。という論理を掲げつつ、実は「一方通行言語」で語りかけ。実際には「聞く耳もたず」なんですよね。やっていることは、同じく「一方通行言語」で呼びかけた9話の連合とクリソツ。要求内容も「一、先に公表したロゴス構成メンバーの即時引渡し、二、全軍の武装解除、基地施設の放棄」と似せまくっていますが、一見すると理性的な「言葉」「話し合う」というフレーズも、使い方一つで極乱暴なフレーズに早がわり。言葉、怖ぇっす。


■キサカたん燃え、シモンズたん燃え、オーブ回帰燃え!

オーブへ オーブへ! オーブへ!!!

議長は「想いを掲げて自発的に行動する者」であるオーブを叩くため、セイランのロゴスつながりを利用して攻めてきそうですけど、8話「ジャンクション=立体交差」から道を分かちながら進んできた者たちが、再びオーブの地に集結。スタート地点への回帰は基本中の基本ですが、それぞれの正義に陰りが見つつ光も見えつつのタイミングでスタート地点=オーブに戻るのがメラ熱い。原点に立ち返ることになるオーブの地。そこで見るものとは?知ることとは?くぅ〜、燃え!


■ED前カットイン

今回のED前カットインを見て「これまでマジメに見ていて良かったなぁ」と改めて感じまくり。

クルーゼに抗い、人の定めに抗しながらも、クルーゼの預言した終末へと突き進む世界

そんなクルーゼ理論を「シンvsキラ」によって再現することで
SEED物語のリセット&再起動&再構築を終えた今、
物語はその先を描くべく、最終章へと移行する

シン、キラ、ラクス、カガリ、ミーア、アスラン…
それぞれに物語を紡いできた登場人物たち

それぞれに不毛な争いをなくそうと、
それぞれに平和な未来を手に入れようと、
舞台はオーブへ、そして宇宙へ

SEEDの先を、DESTINYの答えを求めて

機動戦士ガンダムSEED-DESTINY

今、本編スタート!!!!!

くぁ〜熱い!メラ熱い!第3クール終了とあって、話を進めるよりも話を整理してきた印象が強かった36話ですが、ED前の各キャラカットインに見られるように、位置づけとしては、それぞれの思惑が交差しつつ最終章へと突入していく「最終章前夜」でしょう。闇は明けるのか、朝は来るのか、光の先に待つ世界は。燃え転げながら最終クールへ!次回は新OP&EDかな…かな?



機動戦士ガンダムSEED DESTINY 3クールまとめ

放送中は書かずじまいだったのですが(今は2006年2月)、ページレイアウトの変更にあわせてサックリ語っちゃうと、3クールは「旧主人公サイドの否定」ですな。

2クールの最後らへんもそうですが、キラたちの戦場乱入は何の成果も生まず、逆に23話で描かれたように死体袋の山を築く始末。その後も「問答無用!」と言わんばかりにアスランセイバーを解体しちゃったり、ステラを殺すことでしか止められなかったり。

前作最終話でのクルーゼ戦もそうでしたが、結局キラは「殺したくない」「力だけが僕のすべてじゃない」と言いながらも、クルーゼが指摘したように「力」によって相手を倒すことしかできていないわけです。

言葉の上ではクルーゼを否定しながらも、結局はクルーゼが預言したとおりの結末を迎えてしまったキラ。DESTINYに入ってからの彼は、まさにクルーゼが預言したとおりの運命を辿り、その果てに「半クルーゼ化」してしまったとも言えるでしょう。その上で、今作のキラポジションとも言えるシン(ステラを弔った後の表情なんて前作最終話のキラそのもの)の手で、クルーゼの最期を思わせる結末を迎えたということになります。

また、もう一人の旧主人公、アスランはと言うと、彼は前作で脱カテゴリーこそ果たしましたが、父の呪縛やカガリへの依存という問題点を抱えたままに今作へと突入し、縛られる相手こそ変遷していきましたが、確固たる自分のポジションを掴めないまま、今に至ります。

そして、そんなフラフラ状態であるがために、前作42話の脱走劇とは異なり、今度の脱走劇は失敗に終わってしまったという。キラと同じようにして、シンに討たれたわけですね。

こうして旧主人公サイドは没落し、その一方で絶頂を極める議長サイド。これがDESTINY第3クールの結末ですが、旧主人公サイドは「力」「依存」とは対極にあるような「仲間」の助けで、間一髪、窮地を逃れています。逆に議長サイドはと言うと、思考停止するように種割れしてアスラン&メイリンを討ったシンですが、それでもどこかに割り切れないものを抱えているようです。

仲間(相互理解)の力で逆襲へと転じる旧主人公サイド。割りきれない想いが喉につかえた小骨のように引っかかっている現主人公サイド。第4クールを見る上では、このあたりに目を向ければ楽しめると思われ。




感 想 一 覧

機動戦士ガンダムSEED DESTINY

 Phase-25 罪の在処
 Phase-26 約束
 Phase-27 届かぬ想い
 Phase-28 残る命散る命
 Phase-29 Fates
 Phase-30 刹那の夢
 Phase-31 明けない夜
 Phase-32 ステラ
 Phase-33 示される世界
 Phase-34 悪夢
 Phase-35 混沌の先に
 Phase-36 アスラン脱走
 Phase-37 雷鳴の闇

 SEED-DESTINY 3クールまとめ



 SEED-DESTINY 1クール分
 SEED-DESTINY 2クール分
 SEED-DESTINY 4クール分
 SEED-DESTINY まとめ感想