「平和に暮らしている人たちは、守られるべきです」。シンにとっての「真実」から始まったPAST。シンの目から見た戦争と、シンが知ることのない戦局。その違いを描くことで、一瞬の凪よろしくタメてきた20話です。
■PAST
あくまで他人ごと口調から始まったシンの語り。ウズミ政権の下で平和と安寧を甘受しながら暮らしていた日々。そんな束の間の平和が揺れたその刹那、一瞬にして砕け止まった時間…。動かない時、消えない痛み、固まってゆくシン的真実。
ウズミにとっての真実、三隻連合にとっての真実、アズラエルにとっての、クルーゼにとっての、パトリックにとっての、その他の名もなき人々にとっての真実。たった一つの「現実」から派生したにもかかわらず、いくつも存在しながら交わることなく争いを生み出しつづけていくそれは、そのどれもがありのままの形ではシンに届かず(←もちろんシン以外にも)、いわれなき家族の死という現実の前には意味も力も持たない(←むしろその原因になっているくらい)。
信じるものは力。力がなければ理想なんて意味がない。戦ってこそ大切な存在は守れるんだ。それが、全ての人間に共通する「現実」がシンに見せた「真実」。現実という樹から派生した真実という枝。その枝を樹と見誤り、自分正義は絶対正義だと信じて戦いに身を投じ、任務遂行と共に殺戮をつづけるシン。そんなシンに、一つの出会いはどんな真実を見せるのか。ステラとの出会いを前にいい感じでタメてきましたよ〜。一気に動き出していく予感です。
■自分解釈
シン的には、今回描かれた前種戦史についての詳しいところはまったく知らず、ニュースや父の言葉を介して自分解釈している状態です。ましてや旧主人公たちがどんな思いで戦争を乗りこえてきたのかなんて知る由もなく、戦争下でおこった現実をあくまでシン的真実に変換して理解しているにすぎません。また、亡くなった家族の願いにしても(←オーブ将校さんが代弁)、シン的には無意識のうちに即全否定。自分解釈するまでもなく憎しみに囚われて思考停止し、軍に入隊して「大切なものは戦って守る」と言っているわけです。
そこからもう一歩進んだものがサトー隊長的復讐論なのでしょうが、程度に差こそあれ、自分解釈&思考停止して他者否定な殺戮を繰り返しているという点ではまったく同じで、憎しみの連鎖に囚われまくり。20話では内容的にこの「自分解釈から生まれる現実曲解」を特に伝えたかったのか、他の台詞や行動を見ても自分解釈絡みのものがかなり目立つんですよね(←シン以外も)。
前回のレビューで「非対称な情報所有が〜」と書きましたが、今回の内容を見るかぎり、エンタメ的な盛り上げ云々だけでなく、憎しみの連鎖の正体としてもこのあたりをピコっと深めていきそう。とりあえず今のシン的解釈では「俺の家族は、アスハに殺されたんだ!」「オーブが残って、また花が咲いても、マユも父さんも母さんも、もう帰らない」「ならば俺は戦う、戦って、今度こそ、大切な全てを守ってみせる」なわけですが、裏を返すと「戦うことで大切な全てを失う」状態になる感がますます強まります。はてさて生贄は誰になることやら。
■カラミティとフリーダム
あれ、直接的にはカラミティのビーム射撃でアスカ一家が死んだってことでいいのかな。1話を見直してみると、カラミティビーム射撃→同時にフリーダム七色ビーム→閃光&爆裂→アスカ一家死亡でしたから、今まではどちらとも取れたわけですが。
もちろん間接的にはあんなところで戦闘したフリーダムも悪いのですが、少なくとも「直接的犯人」ってところではカラミティということで納まったかと。問題はそれをシンが知るわけもないことで(←おそらくキラも)、ここでも「自分解釈」が元でシンvsキラになるんだろうな。まぁ種のことですから、直接的犯人でなければ断罪されたりはしないと思いますけどね。
■オッサン
シンを助けたオッサン渋カッチョイイなぁ。エピソード的にも中々オモシロで、特に反応させられたのが「君だけでも、助かってよかった。きっとご家族は、そう思っていらっしゃるよ」ですよ。これも一つのオッサン的自分解釈。もちろんシンの家族もそう願っていたでしょうが、シンの家族が仲良さそうなことを知っている視聴者はともかく、それを知らないオッサン的にはあくまで推測にすぎません。
そんなオッサン的自分解釈によってシンは救われたのか。仲の良かった家族を思い出して哀しむだけだったのか。そんな家族を殺した連合やオーブ&AAへの憎しみをたぎらせたのか。まだ見えないこの部分のシン的真実が、次につながるスパイスになりそうな予感。
先読みすると、このオッサンなりに思うところがあってシンをプラントへと送り出したわけですが、オーブの現状を考えると、オッサンも連合&新生オーブの一員としてプラントと戦うことになるのは自明。オッサンの思いを自分解釈しているシンが、このオッサンと戦場であいまみえることになる流れですよ。となると、ステラと同じようにこのオッサンも、シンが見せられるもう一つの真実に関わってくるんだろうなぁ。敵兵の命や異なる正義の存在はもちろんのこと、シンの家族が心の底から願ったであろうシンの幸せとかも。そんな真実にシンがどんなリアクションを示すのか。今から楽しみで楽しみで。ワクワク♪
■次回予告
海辺で裸で出会いキタ━━━(゚∀゚)━━━ッ!そんなところでもアスラン先輩と同じ道を辿るのか?いやでもキラとカガリは兄妹だったし、Zよろしくお兄ちゃん路線とか?
ただ、願わくば単なるラブリー路線にはなりませんように。ステラがクローンや強化人間などの開発に関係してそうなんで、そんな「力」としての存在にどう接しどう人間性を見出すのか的な話にもってきそうな気配。もちろんデフォとしては「敵兵の命や思い」「戦うことで大切な全てを失う」といったことに気づかせられる方向でしょうけどね。まぁどんな展開になるにせよ、上手いところ調理しておくれやす。
■超深読み (視聴の楽しみを損なう恐れがあります。ご注意ください)
今のところの話を大ざっぱに整理すると、旧主人公的正義(憎しみの連鎖(・A・)イクナイ!)を前置きとしておいて、けれども憎しみの連鎖から生まれる力でも守れる存在や貫ける正義があることをアピール。前作的善悪観にアンチテーゼを唱えつつ、前作的正義とシン的正義のズレ&そのズレを生みだす自分解釈&思考依存に照準を合わせてきた、ってところかと。憎しみの連鎖(・A・)イクナイ!を一歩掘り下げて、憎しみの連鎖を生みだす原因部分と結果部分にピコっと深みを持たせてきたわけですね。
ここ数話特にクローズアップして描かれましたけど、争いの根底には自分解釈のズレと思考依存があり、そこに気づかずに思考停止&カテゴライズして他者を否定することが争いを広げ、それを第三者が煽ることで争いは止まることなく加速しつづけていく。けれども、その中から生まれる「力」によって守れるものもあり、貫ける正義もたしかに存在する。自分解釈フィルターを装備せず、ありのままの現実をしっかり見据えて使い方を間違えずに用いさえすれば、「力」にも意味はあるんだ、ということでしょうか。
けれども、今のシンは「シンは自分解釈フィルターを装備した。呪われてしまった!はずそうとしてもはずせない!」状態なんですよね。たしかにその状態でも戦うことはできますし、与えられた任務を成し遂げていくことも可能でしょうが、もう戦闘コマンドは「戦う」しか選べないわけで、モンスター=敵=殺してOKなわけで、けれどもRPGと違って敵はモンスターではなく人なわけで。
となると、セオリーどおりに考えて次にくるのは、「自分解釈フィルター」を外すためのイベントなんですよね。ただし、ドラクエと違って教会に行けば外せる代物ではなく、自分が気づかないことには一生はずれない強力な呪い装備ですから、実体験をもってはずし方を学びとるしかありません。要するに「戦うことが大切な全てを守ることにつながる」というシン的信念の基軸に対して、「戦うことで大切な全てを失う」という実体験をぶつけて打ち砕く、ということになるはず。某ブログで別ネタで言われていましたが、シンにとっての「神を討つ(by太宰治)」ことになるわけですよ。
ということでステラ登場なんでしょうが、シン的に絶対正義であるデュランダル議長、シン的に憎むべき存在であるAA、姿形を変えて連合とともに戦火を拡大させるオーブなど、多方面にネタふりしたかいあって、シン的自分解釈にアプローチしていける要素はステラ以外にも盛りだくさん。話の流れとしてはオーソドックスながらも堅実な作りなわけで、ここまで小マメにタメてきたストーリーをどんな展開&演出で爆燃えに導くのやら。当面はデスティニーガンダム発進の瞬間が爆燃えになるのでしょうが、シン以外にもAA側旧主人公サイドの正しい答え探しやキャラ同士の人物対比→人間ドラマ構築など、いろいろと見どころ多くなりそう。残り30話、楽しみだ〜♪
■おまけ
第1クールまとめレビューより
種の場合は決定的な欠点があって、最後まで確定的な解説をフォローしないので、見る人によって色んな解釈ができちゃうんですよね。解釈のしようによっては「矛盾」「意味不明」と捉えたり、回想を通じて暗喩的に描かれたストーリーやキャラを「そんなものは描かれてない」と誤認してしまったりすることもあるわけで。そのあたりの補完を最終的にしていればもう少しわかりやすく楽しめると思うのですが、はてさて。
どこかしらで補完した方がいいと思いますし、せっかく総集編を入れるならそのあたりの補完を中心にやった方がいいとも思いますが
別に作画枚数が多い=良いアニメというわけでもありませんし 地でいく回になったので個人的にはかなり好評価。話の進展どうこうではなく話の整理という意味で今回は良かった♪これから総集編を入れるにしても、こんな感じで整理してくれないかなぁ。
ってか、デスティニーガンダムキタ━(゚∀゚)━ッ!とかシン=ステラ邂逅キタ━(゚∀゚)━ッ!とか、新規ネタとしては本編以外にワクワクできるネタふりが多発するって、ど〜ゆ〜こと…?それに、一話丸々回想&挿入って、制作の遅れが激しそう。まぁ内容的に新規カットがいらない話だからそこまで気にはなりませんけど、16話相当に総集編もってきておいての今回ですから、制作的にはそうとう切羽詰まってそう。3〜4クールとか戦闘が多くなるんでしょうけど、大丈夫か?
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