ジ: | 新しい事業は、バイオ関連と聞きました。 |
ア: | さすがに耳が早い。ゆくゆくは伝統的科学と、先進的生物学の統合を考えています。 組織というのは、日々進化しないと死んでしまう。未来を開くためには、新しい血が必要なのですよ。 あなたもおわかりでしょう。 |
ジ: | ええ。ですが、 僕は未来に向かって闇雲に歩き出すより、過去の落とし前をつける方が重要だと考えるタイプですから。 ご存じないでしょうが、初代の当主もそういう人物でした。 |
ア: | ほう、初代のジョエル・ゴルドシュミットが。叶うならば、是非お会いしてみたかった。 ゴルドシュミットが謎の一族と謳われるのも、なるほど、そういう家風によるところなのかもしれませんね。 |
ジ: | 我々は生きて息をし、老いていくただの人間です。 |
ア: | 人間は傷つけば血を流す。 |
ジ: | 落とし前をつけるためには、代償が必要なのは当然です。 |
ア: | 時には、大きすぎる代償がね。 |
ジ: | 踊ることを諦めた代わりに、耳にする喜びを得ましたから。 |
ア: | 秋に我が社で公演しているオペラが、METで開かれます。今度こそ、招待状をきちんと送らせましょう。 |
ジ: | いえ、自分でチケットを買わなければ、楽しむ資格がない。 |
ア: | なんとも律儀な方だ。 |
ジ: | では、ニューヨークでお会いしましょう。 |