空の軌跡SC発売まで、あと一週間を切り、感想かきあげるのが難しくなってきて焦ってるぐらすです。こんにちは。時間もないんで、さっそく「英雄伝説IV 朱紅い雫」について語っていこうと思います。
というか、全感想アップがSC発売に間に合わないのはほぼ確定なわけですが、一度はじめた手前、意地もありますんで、時間がかかっても最後まで書き上げようと思ってみたり。
■プレイ環境について
IIIの感想にも書きましたが、移植による変更点が多いガガーヴ・トリロジーの中でも、特に変更が大きかったのが、この「朱紅い雫」になります。
まず1996年にPC98版の英雄伝説IVが発売され、その4年後、2000年にWin版が発売されるのですが、リニューアルの過程でシナリオ、システムともに大幅な変更がなされた上、PC98版では鬼だった難易度(敵の強さ)も、かなり緩和されました。詳しくは後述しますが、これらの変更によって、英雄伝説IVは、路線そのものを大きく変えることになるんですよ。
ちなみに、98年にはプレステ版も発売されているのですが、こちらでは武術レベルがMAXになると操作不能になるバグが発生するらしいので、シナリオやシステム以前に、ゲームとして成立してないじゃん、みたいな。
ということで、最新の移植作となるPSP版については未プレイなのでわかりませんが、少なくともPC98版とWin版については、共通するのは物語の大筋くらいのものなんですよ。PC98版をプレイした方と、Win版をプレイした方とでは、英雄伝説IVについて抱いているイメージは別物と言ってもいいかもしれません。
今回はガガーヴ・トリロジーとしてのIVを語るため、ガガーヴ・トリロジーとしての側面が色濃く出ているWin版をベースに語っていきたいと思います。結果、PC98版をプレイした方とは噛みあわない部分も出てくるでしょうが、PC98版とWin版は別物なんだということで、一つご理解をいただきたく。
■ネタバレについて (注意!!!!)
IIIと同じように、感想を「ネタバレあり」「ネタバレなし」に分けます。お好きな方をドゾー。
■世界設定(地理)
ではまず、地理的な説明を。舞台となるのは「エル・フィルディン」という世界で、IIIの舞台となったティラスイールの西に位置しています。
とはいえ、ティラスイールとの交流は皆無。ティラスイールとの間には、大地には大きく開いた断崖「ガガーヴ」があり、海には「混沌の渦」と呼ばれる異常な潮流があるため、一切の交流はできず、それどころか互いの存在すら知らない関係にあるわけです。
これはVの舞台となるヴェルトルーナとの関係についても同じことが言えます。北にエル・フィルディン、南にヴェルトルーナが存在しているのですが、その間には天高くそびえる山脈、大蛇の背骨が横たわり、二つの世界の交流を阻んでいるわけですね。
■世界設定(時間)
IV本編→5年経過→V本編→50年経過→III本編。こんな感じです。推奨プレイ順についてはIIIの感想にまとめてありますので、そちらをご覧くださいな。結論だけを言うと「III→IV→V→再III」です。
■英雄伝説IV 簡単サックリ導入編
では、地理と時間の関係を把握していただけましたなら、お次はサックリとした内容紹介をば。
時間にして、ガガーヴ・トリロジー3作品の中で、最も早い時代。エル・フィルディンに、一人の青年がいました。青年の名はアヴィン。
子どもの頃は、妹の「アイメル」と一緒に、聖地カテドラールで暮らしていたのですが、ある「事件」を境に二人は離れ離れとなり、アイメルは行方知れず。
以降、賢者「レミュラス」の下で17歳になるまで育てられたアヴィンは、レミュラスが老衰のためにこの世を去ったのをきっかけに、旅に出ることを決意します。レミュラスの下で知りあった「マイル」という親友と一緒に。アイメルを探すために。それがIVの物語。
■光の神バルドゥス、闇の神オクトゥム
そうして旅に出たアヴィンとマイルの二人ですが、彼らの旅を語る上で、欠かすことのできない一つの設定があります。それは、光の神バルドゥスと、闇の神オクトゥムの存在。
時間にして1000年以上も昔のこと。ある意味1000年ほどしか経ってないとも言えますが、エル・フィルディンの地では、光の神バルドゥスと、闇の神オクトゥムが戦いを繰り広げていました。
この戦い、最終的には光の神バルドゥスが闇の神オクトゥムを封じる形で決着がついたのですが、ただ単にオクトゥムだけが封じられたわけではありません。オープニングでも語られることですが、光と闇は対を為す不可分な関係にあるため、闇の神オクトゥムを封じたことで、光の神バルドゥスもまた、力を失うことになります。光の神バルドゥスも、その体を六つに砕かれ、永い眠りにつくことになったんですね。
こうして神々の争いは終わりました。ですが、それから1000年以上もの間、神々の眠る地、エル・フィルディンでは、二つの勢力が争い続けることになります。
一つは、光の神バルドゥスの信奉者たちが集う、バルドゥス協会。闇の神オクトゥムが封じられた「封印の地」の真上に「正神殿カテドラール」を築き、さらに、カテドラールとは別に「聖都ヴァルクド」も建設して、エル・フィルディン全土に光の神の教えを広めることとなります。
もう一つは、闇の神オクトゥムの信者が集う結社、オクトゥムの使徒。こちらはバルドゥス協会とは違って本拠地を定めることはなく、歴史の陰に隠れながら、その力を蓄え、機をうかがいつづけたと言われています。
こうして均衡していた両者の関係が崩れたのが、IVの本編から遡ること8年前のこと。闇の神を奉ずる「オクトゥムの使徒」たちが「正神殿カテドラール」を襲撃し、占拠してしまったのです。以降、カテドラール周辺には闇の結界が張られ、オクトゥムの使徒以外は立ち入ることのできない「禁断の地」と化しました。
ということで、お気づきになられたかもしれませんが、主人公「アヴィン」と妹「アイメル」が生き別れた「事件」とは、この「カテドラール陥落」のことなんですね。
■ドゥルガーの娘
ただし、アヴィンとアイメルは、偶然その場に居合わせたのではありません。
カテドラールを襲撃したオクトゥムの使徒たちは、カテドラールの地下に存在する「封印の地」を押さえ、封じられた闇の神オクトゥムを眠りから呼び覚まそうとしているのですが、それだけでなく、彼らにはもう一つの目的がありまして。
それは「ドゥルガーの娘」と呼ばれる、一人の人間を掌中に治めること。
ドゥルガーというのは、精霊たちの神にして、光にも闇にも与することなく、生と死を司る冥府神。オクトゥムの使徒は、生と死を司るドゥルガーの力を用いてオクトゥムを復活させようと考え、そのために、人間世界におけるドゥルガーの代行者である「ドゥルガーの娘」を必要としていたのです。
そして、そのドゥルガーの娘というのが、アヴィンの妹、アイメルでした。
つまり、オクトゥムの使徒によるカテドラール襲撃は、カテドラールの地下に存在する「封印の地」を押さえることと、ドゥルガーの娘である「アイメル」を掌中に納めることを目的としたものだったわけですね。
結果から言えば、幸いにして、アイメルはオクトゥムの使徒の追撃から逃れることができました。ただし、逃れることはできたのですが、オクトゥムの使徒からすれば、アイメル(ドゥルガーの娘)は喉から手が出るほど欲しい存在ですから、その居所が知られれば、またいつオクトゥムの使徒に襲撃されるかわかりません。
そこでバルドゥス協会は、アイメルの行方を秘中の秘とし、兄であるアヴィンにすら伝えずに隠し通すことにしたのです。それが、アヴィンとアイメルが生き別れることになった理由。
■旅立ち
それから8年。成長したアヴィンは、アイメルを探すため、親友である「マイル」とともに、エル・フィルディン全土を巡る旅に出ます。
どんな時でも挫けず、強い心を持ち続けて、最後には必ず村に戻ってくる。
本当の我が子であるかのように接してくれたマイルの両親と、ウルト村のみんなと、そう約束を交わし、約束の証であり、村のみんなとの絆の証でもある「護りの鈴」を携えて、村を旅立つアヴィンとマイル。
行く手に待つ過酷な運命も知らず、ただ素晴らしい未来だけを夢見て、育った村を旅立つ二人。二人を支えるものは、互いの絆。故郷で待つみんなとの絆。旅先で出会う人たちとの絆。そして、エル・フィルディンのどこかでアヴィンを待っている、アイメルとの絆。
そうして、この物語は幕を開けます。英雄伝説IV、朱紅い雫。その「絆」の物語が、幕を開けます。
■神宝
そうして旅立つアヴィンとマイルですが、彼らの旅を語る前に、もう一つ触れておかなければならないものがありまして。それが「神宝」と呼ばれるアイテムの存在。
アヴィンは、育ての親である賢者レミュラスが息を引き取る直前に、彼から「神宝カベッサ」というアイテムを託されることになります。
この神宝というアイテム。伝承によると、神々の戦いの最後、オクトゥムを封じる際に砕け散ったバルドゥスの神体の一つと言われるステキアイテムでして。ちなみに「カベッサ」は「バルドゥスの頭」と呼ばれています。
ただし、このアイテムは、武器や防具、回復アイテムとしての実用性ではないため、とりあえずは持っているだけ。その用途も存在意義もさっぱりわからない謎アイテムと言えるでしょう。
アヴィンからすれば、育ての親から託された由緒正しそうな逸品なので、何だかわからんけど大切に保管している、といった感じに扱っていると思われ。プレイヤーとしても、当初はその程度の認識でスルーしておいて問題はないと思われます。当初はね。
■親友マイル
すげーいーヤツです。
妹と生き別れた後、暮らし慣れたカテドラールを離れ、賢者レミュラスが暮らすウルト村(近辺の庵)で生活するようになったアヴィンは、当初、悪い方向にシスコンっぷりを発揮するのですが、そんなアヴィンが立ち直れたのは、この「マイル」の存在があったからこそでしょう。特に、冒頭に用意された「お札流し」のイベントは必見です。
願いを書いた札を川に流し、それがそのまま流れていけば、札に書いた願いが叶う。
そんなウルト村の祭事なのですが、この祭事、たいていは成功するようにできているんですよ。ところが、アヴィンが「アイメルに会えますように!」と書いて流した札だけが、見事に轟沈。
それを見たマイル。
アヴィンが、アイメルに会えますように! つД`)・゚・。・゚゚・*:. 。..。.:*・゚
ちなみに、この時点のアヴィンとマイルは、まだ「友だち」というほどの関係でもなかったもんで、そこまでしてくれるマイルの行動を見て、アヴィンは戸惑うわけですよ。そんなアヴィンに放たれたマイルの台詞がコレ↓
僕のお願いは、もうかなってるから。去年のお祭りのときにね。
友だちができますように、ってお願いしたんだよ。 つД`)・゚・。・゚゚・*:. 。..。.:*・。・゚゚・*:. 。..。.:*・゚
マイル いーヤツだ! スゲーいーヤツだ!!
■サクサクモード
さて、そんなこんなで基本的な世界設定をご理解いただけましたら、そろそろアヴィンの旅について語っていこうと思うのですが、この旅、実際に旅をしているアヴィンやマイルの目線から見ると、どこにアイメルがいるのか、まったく手がかりがありませんから、しんどい旅だと思われます。
とりあえずはエルフィルディンを一周するように街々を巡り、アイメルの行方を聞いて周ることになるのですが、8年前に生き別れたわけですから、成長してどんな容姿になっているか、わかりません。また、露骨に「ドゥルガーの娘」なんてキーワードを出してしまえば、それを聞きつけたオクトゥムの使徒に襲われることになりかねませんから、そのあたりにも気を配って探すことになるわけです。
また、しばらく進むと、行く手を阻むように「オクトゥムの使徒」も現れ、アヴィンたちが持つ「神宝」を狙ってきたり、アヴィンたちが訪れる街々で悪さをしたりしますから、そういう意味でも難儀な旅に感じることでしょう。
ただし、それはアヴィンたちの目線から見た感覚であって。プレイヤーとしては、早い段階でアイメルの手がかりがつかめるわ、そのままスムーズに再会することができるわ、再会してから良い方向にシスコンっぷりを発揮するアヴィンが微笑ましいわで、なんともポワポワ〜ン♪な印象で物語は進みます。
オクトゥムの使徒にしても、悪さはしますが、誰かが死んじゃうとか街が壊滅しちゃうとか、そんな感じの悲劇的な結末を迎えるよーな悪さはしでかさないんで、全体的にアッサリした印象を受けるかもしれません。
アイメルと再会した後も、アイメルと神宝を狙うオクトゥムの使徒から襲われることにはなるのですが、仲間の協力とラブラブシスコンパワーによって、アイメルと神宝を守護。勢いに乗って聖都ヴァルクドの隣町まで一気に到着し、あとは聖都ヴァルクドに向かって歩を進めるのみ!って感じで、ノリノリモードで旅は終わろうとします。
■襲撃
が、ここでBIGアクシデンツ。
ヴァルクドに到着する直前。アヴィンたちの前に、ベリアス卿が登場します。
平たくいうと、ラスボスです。
えっと
アヴィン気絶、アイメル拉致、マイル死亡…
■神
気がつくと、そこは聖都ヴァルクド。マイルはいません。アイメルもいません。
目に映る聖都。バルドゥスの神殿。
神を信じた。神を祈った。けれど、神は応えてくれなかった。
応えるどころか、その戦いにマイルを、アイメルを巻き込んで…
■ルティス
そうして落ち込むアヴィンの前には、一人の少女。名をルティスといい、アヴィンの持つ神宝を狙てアヴィンの後をつけまわしてきた、オクトゥムの使徒。
だったのですが、彼女を完全なるオクトゥムの使徒にしようと考えたベリアス卿の命令で、ギアという街で技師見習いをしていた「ルカ」というルティスの弟が狙われた事件がありまして。
その事件を契機に、結社のやり方に疑念を抱き、葛藤をつづけたルティスは、結局、アヴィンたちがベリアス卿の襲撃を受けた際、アヴィンたちをかばって気絶。以後、オクトゥムの教えが正しいのか、他に道はあるのかを考えるため、ルティスは結社を離れ、アヴィンの旅に同行することになります。
■マドラム
そしてもう一人。アヴィンの前に現れたのは、修羅の道を歩む男。名はマドラム。バルドゥス教会にもオクトゥムの使徒にも属さない、神出鬼没の復讐鬼です。
アイメルの先代となる「ドゥルガーの娘」に「ドミニク」という少女がいたのですが、15年前、彼女はオクトゥムの使徒に襲われ、非業の死を遂げました。
ドミニクの護衛役であり、幼馴染であり、想い人でもあったマドラムは、その事件以後、彼女の死に関わった人間と、彼女を戦いに巻きこんで死なせてしまった神に復讐を果たすべく、そしてなによりも、彼女を守ることのできなかった自分自身を許すことができずに、生きつづけてきたわけです。
その意味では、マドラムは、復讐の相手を探しながら、復讐の方法を考えながら、自分自身の死に場所を求めていた、と言えるかもしれませんね。
■二度目の旅
大いなる二神。その間で揺れ惑う人という存在。その運命。
初めての旅の果てにそれらを垣間見、失意と絶望の中にあったアヴィンでしたが、似た境遇にあるマドラムとルティスに導かれるようにして、アヴィンは再び旅に出ることになります。ある意味、ここがアヴィンにとって本当の旅の始まりと言えるでしょう。
旅の目的は、カテドラールを覆う闇の結界を突破する方法を見つけること。闇の結界を突破し、カテドラールに囚われたアイメルを助け出すこと。そして、新たに加わった仲間、ルティスの進む道を見つけること。
そうしてアヴィンとルティスは、エル・フィルディン全土を巡る旅に出ます。
妹を守れず、友を死なせてしまった、哀しい旅の終着点から…。
ということで、ポワポワ〜ン♪な印象で進んだ序盤は、旅の最後に訪れる哀しい結末に気づかせないためのフェイクだったわけですね。
■神宝を求めて
アヴィンは、闇の結界を突破する方法を求め、エル・フィルディンを旅することになるのですが、そこでポイントになるのが、エル・フィルディンの北西部に存在する「真実の島」の遺跡。
この遺跡、実はIIIに登場した「魔法の鏡」と同じ種類のもので、見る者に「未来の可能性」を伝えるステキ装置でして、これがアヴィンに、闇の結界の突破方法を教えることになります。
闇の結界を突破する鍵は「神宝」にあるのだ、と。
光の神オクトゥムの、砕け散った体の一部。頭部カベッサ、胴体クエルポ、右腕デレブラ、左腕イスプラ、右足デレピエ、左足イスピエ。その全てを集めることで、闇の結界を突破することができる。
それが、真実の島の「遺跡」がアヴィンに見せた啓示だったのです。
■真実の島
さて、こうして物語の本題は「神宝探し」へと移っていくことになるのですが、同時に、この「英雄伝説IV 朱紅い雫」という物語は、ここで軽く「英雄伝説III 白き魔女」との接点を持ったと言えるでしょう。
というのは、アヴィンが啓示を授かった真実の島の「遺跡」です。
アヴィンは啓示を授かるに際して、謎の魔法使い「ミッシェル」の協力を受けるのですが、ミッシェルの台詞から、この遺跡はティラスイールに存在する「魔法の鏡」と同じ系統のものであること、古に存在した「青の民」と呼ばれる一族が残した遺跡であることが判明するんですね。これが大きな意味を持つことになるんですよ。
なぜ、ティラスイールに存在するのと同じ種類の遺跡が、交流がないはずのエル・フィルディンに存在するのか。IIIやIVの時代には存在しない、高度な技術によって作られた魔法の鏡、真実の島の遺跡。それらを作った「青の民」とは何者なのか。
というのがポイントです。とりあえず今は軽くスルーしますが、これらは「朱紅い雫」のみならず、ガガーヴ・トリロジー全体に関わる問題ですので、軽くでいいんで押さえておいた方がよろしーかと。
ミッシェル、という名前と一緒にね♪
■絆
さて、物語本編に戻りまして。神宝探しの旅ですが、この旅には二つの見所があります。
一つは、マドラム物語の行方。
ドミニクの墓所の地下には、最後の「神宝」が隠されているのですが、アヴィンを追って墓所の地下に入ったマドラムは、ドミニクを殺した仇であるボルゲイドに復讐を果たします。己の命と引き換えにして…。
ただし、それは怒りと憎しみだけに彩られた哀しい最期だったわけではなく。アヴィンの道を切り開くため、ドミニクに生かされた「命」を燃やして消えたマドラム。自分の命を悔いなく使った。そんな表情を浮かべていたと言います。それはたぶん、15年前のドミニクと同じ表情…。
命を賭したマドラムの援護を受けて、最後の神宝を手に入れ、神宝に秘められていた光の神バルドゥスの御霊を甦らせたアヴィンたち。
バルドゥスはアヴィンの剣に宿り、闇の結界を切り裂く力を授けるのですが、カテドラールへの潜入手段を得たアヴィンたちは、地上にあるドミニクのお墓を再び訪ね、今度はマドラムの安らかな眠りも祈ることに。そこで墓に花を供えたルティスは、こう言うのです。
花に託された人の想い。
私たちは、想いと想いの狭間に生き続ける存在なのかもしれませんね。
その在りようを、絆と呼ぶのでしょう。 つД`)・゚・。・゚゚・*:. 。..。.:*・゚
闇を切り裂く力を手に入れたアヴィン。自分の進むべき道に気づき始めたルティス。墓を後にする一行。 その背後には、墓前で静かにたたずむ二人の霊。その表情はきっと…
つД`)・゚・。・゚゚・*:. 。..。.:*・゚
■絆2
ということで、カテドラールへの潜入が可能になったアヴィンたちですが、その少し前、五つ目の神宝を探す過程に、この旅のもう一つの見所があります。
えっと
マイルが生きています。
というのも、ベリアス卿の襲撃を受けた際に、実際にマイルの死を確認している人間はいなかったりして。アヴィンたちを襲撃したベリアス卿が、大量の血を流して気絶したマイルをアイメルと一緒に拉致っていったため、残された人間が現場に残された大きな血痕を見て、彼の死を「推測」したにすぎなかったわけです。
それが、実際には死んでおらず、生きてアヴィンたちの前に現れたわけですよ。
ただし、ベリアス卿に操られているため、マイルとしての人格は失われている模様。金色だった髪も銀色に染まり、怪しいオーラを身にまといながら、魔術を使ってアヴィンたちの妨害までしてくるマイル。そこでアヴィンたちは、マイルをベリアス卿の支配から切り離し、元に戻そうとするわけです。
カテドラールに潜入してアイメルを救い出す、ルティスの進む道を見つける。そんなアヴィンたちの旅の目的に、マイルを元に戻す、マイルとの絆を取り戻す、という新たな目的が加わった形ですね。
■鈴
マドラムとの「絆」に支えられ、マイルとの「絆」を求めて、闇の結界を切り裂き、カテドラールに突入したアヴィンたち。カテドラール陥落時に亡くなったバルドゥス教会の最高導師、エスペリウスの霊に導かれて、地下へと潜ることになるのですが、そこでベリアス卿と遭遇。ベリアス卿が放つ最強の刺客、銀髪のマイルと戦うことに。
戦いそのものはアヴィンたちの勝利に終わります。ですが、ベリアス卿に操られたまま、マイルは止まることなく攻撃をつづけ、そんなマイルの攻撃を受けてアヴィンは崩れ落ちます。駄目か!?
そう思われた刹那、アヴィンの胸からこぼれ落ちる、一つの品。微かに聞こえる、軽やかな音色。
それは、護りの鈴。マイルの父と、母と、村のみんなと交わした、約束の証。絆の証。その音色は、絆は、呪いに縛られたマイルの心を揺さぶり、動かし、そして…
つД`)・゚・。・゚゚・*:. 。..。.:*・゚
物語の初めにネタフリされ、終始一貫して描かれてきた「絆」という伏線が、物語のクライマックスで見事に昇華。幾重にも重ねて描かれた「絆」が集約された燃えと、アヴィンとマイルの絆の深さに、ただただ涙。そして、心から思います。
アヴィン! マイル! おめでとう!!!
ただ、マイルの髪は銀色のままなんですけどね…
■ベリアス卿
この後、アヴィンたちは、アイメルが連れて行かれた「冥府門」へと向かうことになります。
道中、冥府門から漏れ出る瘴気によって異常に強化された魔獣や、オクトゥムが復活しかけていることでパワーアップしつづけているオクトゥムの使徒に遭遇。行く手を阻まれることになるのですが、旅の仲間たちが集い、その「絆」の力を見せつけてくれるわけですよ。
そうして何とか「冥府門」へと辿りつき、最終決戦!となるわけですが、そこでベリアス卿の口から、全ての真実が告げられることになります。
実はベリアス卿。もとは光の神バルドゥス教会の神官、それも次期最高導師との誉れも高い人物だったのですが、ある時「真実の島」で啓示を授かったことにより、光を捨てて闇へと奔っていたりして。
ここで問題になるのが、ベリアス卿が授かった「啓示」の内容です。ちなみに、ベリアス卿の説明からポイントとなる単語を抜粋すると、こんな感じ。
大いなる災厄 1000年前 青の民 ガガーヴ
英雄伝説IIIをプレイした人間であれば、これで大体の概要はつかめると思います。そう、啓示によってベリアス卿が知った真実とは「ラウアールの波の再来」です。
IIIの感想にも簡単に記しましたが、ラウアールの波とは、1000年前にも一度現れた、世界を完全に消滅しうるほどの破壊のエネルギー波でして。その絶望を乗り切るために。そして、ラウアールの波を生み出すような不完全な現行世界の破壊と、完全なる新世界の再生のために、ベリアス卿は闇の神オクトゥムを復活させようとしていたわけです。
この瞬間、この「英雄伝説IV」は、ガガーヴ・トリロジーとしての側面を持つに至ったわけですね。
■「あなたがここまで来れたのは、それだけじゃない!」
そしてベリアスは、アヴィンやマイルに協力を求めます。世界を救うためには、神に頼る他ない。闇の結界を突破するために、アヴィンがも神(神剣)の力に頼ったように、人は神に頼らなければ生きていけないのだ、と。
答えられないアヴィン。ですが、そんな不完全なアヴィンの主張を補完するのは、ルティス。
結界を破ったのは、神の剣だけど… あなたがここまで来れたのは、それだけじゃない!
あなたは、それを知っているはずよ! そう叫ぶルティス。一人では何もできなかったに違いない。でも、みんながいたから、ここまで来れた。今も、アヴィンの足りない言葉を、ルティスが補完してくれている。絆。それが、ルティスが見つけた、自分の道。
つД`)・゚・。・゚゚・*:. 。..。.:*・゚
そんな在りようによって正当性を示すアヴィンとルティスを前に、人ではなく「神」の力によって異形の怪物と化すベリアス卿。それはあたかも、アヴィンたちを試すかのようで…。
■最終決戦
戦いの勝者はアヴィンたち。
ですが、自分はアヴィンたち「人」に敗れたのではなく、神剣に宿った「神」に敗れたのだと言い張るベリアスは、アイメルを生贄に闇の神オクトゥムを蘇生。そして、最終決戦が始まります。
人の絆。神の力。どちらが勝るのか。 激闘の勝者は…
■理想の代償
戦いの勝者は、人。
もっとも、アヴィンたちは独力で勝利したのではありません。戦闘前のエフェクトを見ても、神剣に宿ったバルドゥスの加護があったことは明らかです。ですが、それでも、ルティスがベリアスに叫んだように、それは皆がいたからこその勝利。皆がいたからこそ為しえた奇跡だったわけですね。
そんな人間の強さを認め、神が不要になったことを宣言し、次元の彼方へと去っていくオクトゥム。そして、オクトゥムの力を失ったベリアスは、アヴィンたちの選択を認めた上で、己の信念を貫き、塵と消えます。
マイルとともに
■消滅
マイルは、ベリアス卿の襲撃を受けた際に、すでに死んでいました。
ですが、圧倒的な力を見せられてなお立ち向かってきたマイルの精神の強さを惜しんだベリアスは、マイルの体にオクトゥムの力を注ぎこみ、死んだはずの肉体を生かしたのです。それがマイル生存の真実。正気にかえった後もマイルの髪が銀色だったのは、それが原因だったと思われ。
アヴィンたちには隠していましたが、マイル自身もそれを承知でアヴィンを助け、オクトゥムを討ったわけでして。そして今、肉体を生につなぎとめていたオクトゥムが去ったことで、マイルの肉体は死を迎えます。
微笑みながら、その瞬間を迎えたマイル。あとに残ったものは、またしても、たった一つの鈴…
■朱紅い雫
慟哭するアヴィン。
その時、突如として光り輝く神剣。バルドゥスの御霊。人の輝きを、想いの強さを教えてくれたアヴィンに、バルドゥスはこう告げます。
冥府門を、今一度開こう。 成功する保証などなく、失敗すればアヴィン自身も命を落とすかもしれない。それでも、躊躇せずに飛び込んだアヴィン。無事を祈る旅の仲間たち。
薄暗い冥府。マイルの姿は見えず、道もない。ただ冥府の底へと堕ちていくアヴィン。
その時、アヴィンの前に姿を現す一人の老人。賢者レミュラス。レミュラスはこう言います。
思い出せ、お前とマイルの絆のあかしを… そうすれば…必ず取り戻すことができる。 その言葉を聞いて、マイルとの「絆の証」を取り出すアヴィン。護りの鈴。 それは、全ての人が持つ、命の雫。
朱紅い雫 つД`)・゚・。・゚゚・*:. 。..。.:*・゚
雫はマイルの肉体を成し、再会する二人。その時、どこからともなく聞こえてくる声。それは旅の仲間の声。仲間との絆の証。雫となった仲間たちの声が、人の想いが、絆が、一つの「朱紅い雫」となった時
…人が持つ、熱い想い… 命の雫…
ひとつひとつは小さくても… 響き合えば、波紋は大きくなる…
紅くたぎる雫が…冥府を照らす時…
奇跡は…起きる! つД`)・゚・。・゚゚・*:. 。..。.:*・゚..。 。..。.:*・゚・゚゚・*:. 。..。.:*
これまでの物語を通して、幾重にも重ねられた仲間たちの絆。その絆が集って生まれた「朱紅い雫」が冥府の底を穿った瞬間、そこには物語の全てが集約された「燃え」があって、ただただボロ泣き。最高に良かった!
■巣立ち
そうして現世に戻った二人。祝福する仲間たち。そんな「人」の旅の終わりを見届けた「神」は、姿を消します。それと同時に現れる、もう一つの神、精霊神、ドゥルガー。
ドゥルガーは全ての真実を告げました。
光と闇は表裏一体。元々は一つの存在。光をバルドゥス、闇をオクトゥム。人間がそう呼んでいただけで、実際には同じ存在。一人では生きていけない人という不完全な生き物が、光と闇という分かりやすい器に依存して、それぞれを自らの居所としていただけのこと。神が区分したわけではない。その代償として相争うようになっただけのことで、元々は争う意味など存在しなかった。
そんなドゥルガーの言葉を、真実を、誰よりも深く理解したのは、ルティス。
与えられた敵を倒すことで、かりそめの充実感を得ながら生きていたルティス。結社を離れた後、光も闇も関係なく、そこに在る絆こそが最も大切なものだと気づいたルティス。そんなルティスだからこそ、理解できる真実。
ドゥルガーは言います。
怖れるのも無理はありません。 まるで、親に見捨てられた、幼子のような心境でいることでしょう。 それでも、ドゥルガーは言います。
でも…きっと大丈夫です。 朱紅い雫を輝かせるとき… 人はもはや、無力な存在ではないのだから。
それが、神が知った、人の真実。 そんな人間たちの姿を見届け、バルドゥスとオクトゥムの後を追うように、眠りにつくドゥルガー。
バルドゥス教会の教典には、こんな預言が記されています。
かの剣を手にする者、妙なる輝きをもって 永きにわたる光と闇の相克に終止符を打てり。
人、大いなる巣立ちの季節を迎えん。
■ルティスの道
その後、それぞれに自分の生きるべき道へと進んでいく旅の仲間たち。
ルティスもまた、絆を信じ、結社の残党にベリアスの死と争いの終わりを説いてまわろうと、新たな旅へとその身を投じます。
それが、ルティスが見つけた、ルティスの道。
■旅の終わり
それから2年。ウルト村近くの庵にて。
おかえり、ルティス ただいま… アヴィン…! つД`)・゚・。・゚゚・*:. 。..。.:*・゚
■旅の始まり
大いなる災厄、ラウアールの波。 その過酷な運命を知り、それでも力強く生きようと願う、アヴィンとルティス。マイル。アイメル。旅の仲間たち。
支えてくれる神はいない。けれど、支えてくれる絆がある。故郷で待つ皆との絆がある。旅先で出会う人たちとの絆がある。そして、いつどこにいても、アヴィンを信じてくれる、ルティスとの絆がある。
アヴィンとマイルがウルト村を旅立って2年。
神から巣立った人の旅が、今、始まります。
神々が消えた時代。
巣立ちを迎えた人々は 夜明け前の暗がりに迷っていた。
道を照らすのはただひとつ。
胸の奥で輝く、朱紅い雫。
たとえ小さな雫でも 想いと想いを重ねれば…
奇跡を起こす流れとなる。
■テーマ 光と闇
以上が、ガガーヴ・トリロジーの中で、最も早い時代に位置する、IVの物語になります。
物語の機軸に据えられたものは、光と闇の二神の間で揺れ惑う「人」の姿と、その波を乗り越えて進もうとする人の強さ。その強さを支える、人と人との絆。
ウルト村から旅立ったアヴィンとマイルが、訪れる先々で交わす人との交流。旅の中で交わされてきた「絆」が、神がアヴィンに突きつける運命を切り開く力となり、最後の最後、冥府で「朱紅い雫」として結実し、一気に昇華する。そういった物語構成になっているわけですよ。
ただし、そういった「絆」が光り輝くためには、それ相応に「闇」が濃くなくてはなりません。神に突きつけられた運命の過酷さ、一人一人の人間が持つ心身の不完全さ。そういった「闇」があってこそ、クライマックスで凝縮される「光」の輝きが、どこまでも鮮烈に感じられるのでしょう。
その意味では、この物語のテーマは確かに「絆」だとは思うのですが、同時に「人の弱さ」「運命の過酷さ」といったものも、物語を総括する上で欠かすことのできないファクターになってくるかと思われ。主に前者がアヴィンとマイルの物語、主に後者がルティスとマドラムの物語なんでしょうが、そうやって見ると、一つの物語から、それぞれ違うものが見えてくるかもしれません。
物語の中では「光の神と闇の神は表裏一体」と描かれ、それによって光と闇の相克が表現されていますが、物語の構成部分をメタに見ると、光である「絆」と、闇である「運命」「人の弱さ」の関係もまた、光と闇の相克を表していると言えるでしょうね。
■テーマ テクノロジーへの警鐘
そして、もう一つ。この物語を語る上で欠かせないのが「神」の存在です。
神とは原理であり、原理(数式)に入力する人の「想い」によって、出力される結果は異なってくる。それが、英雄伝説IVで描かれた神の姿でした。つまり、神そのものには良いも悪いもないわけですね。
寓話的にとらえてみると、これは「神」に限った話ではないと思われます。神や宗教だけでなく、現実世界になぞらえるなら、それは「システム」「テクノロジー」の象徴という側面も持っているのではないでしょうか。たとえば、イセルハーサ編の女神フレイアがそうであったように。
その意味では、システムやテクノロジーの扱い方を問うような寓話的側面も、この英雄伝説IVには込められていたように思えます。これは女神フレイアの存在が一つのポイントであった英雄伝説IIにも言えることでしょうし、おそらくですが、まもなく2作目が発売される「空の軌跡」シリーズにも言えることでしょう。
ただし、このテーマは、それ単体で存在するようなテーマではありません。光の神バルドゥスが闇の神オクトゥムと表裏一体であったように、システムやテクノロジーといったものも、それを受けとめる「人」という存在と対になることで、初めて意味を持つテーマなんですよ。
それは、システムやテクノロジーというテーマだけでなく、もう一つの「絆」というテーマについても言えること。
システムやテクノロジーへの警鐘は、それを受けとめる「人間」が存在してこそのテーマであり、絆の強さは、それによって支えられる互いの「弱さ」があってこそのテーマでしょう。
その意味では、この英雄伝説IVという物語は、システムやテクノロジー、絆というテーマを描くことで、その反対側に存在する「人間」「人の弱さ」といったものにスポットをあててきた、と見るのも、一つの解釈かもね。
■テーマ そして英雄伝説Vへ
なーんてことを考えながら、ぐらすはこの物語を味わっていました。そして、この物語で描かれた「絆」「システムやテクノロジーへの警鐘」というテーマは、時代的にガガーヴ・トリロジーの出発点となるIVから、途切れることなく次代へと紡がれていくことになります。
一つ目の「絆」というテーマは、IIIやVのキャラクターへと受け継がれ、二つ目の「システムやテクノロジーへの警鐘」というテーマは、ガガーヴ・トリロジー三作品をつなぐ謎の核となって、いよいよその全貌を現します。
青き民 ラウアールの波
いよいよ明かされる真実。IV本編から5年後の世界。舞台はヴェルトルーナ。物語のタイトルは、海の檻歌。
ですが、時は移り、舞台は変わっても、交わされた絆は、受け継がれる想いは、色あせることなく、いつまでも、いつまでも…。
■ゲームとして - 二つの英雄伝説IV -
さて、長くなりましたが、というか、あいかわらず感想というよりも内容整理に偏った文になってしまいましたが、内容的には、そんな感じの英雄伝説IV。
全体を通した印象としては、光を際立たせるための「闇」が濃い目に用意された物語だったんで、プレイ中にウッキウキな気分で楽しめることが少なかったかも。その分、タメにタメられたストレスが解放される瞬間、爆発的なカタルシスが感じられて、かなり気持ち良かったっす。
その意味では、人によって好き嫌いが分かれるゲームだとも思いますけど、そういった物語部分だけでなく、ゲーム全体をトータルで見てみると、これは正直、プレイ環境によって大きく異なると思われます。
PC98版について
ぐらすは二種類プレイしているのですが、まず、PC98で登場した初代の英雄伝説IV。これは正直、ファルコムの英雄伝説シリーズとは思えないゲームでした。
というのも、ゲームバランスが悪いんですよ。とにかく敵が強い。レベルを上げるため、サブイベント等に時間を費やすことになるのですが、ダンジョンや敵の種類がワンパターンで飽きやすい。雑魚でも強く、街以外ではセーブもできないので、全滅する可能性もあります。ゲームオーバーになれば、リトライする分、余計に時間がかかってしまうわけですね。
結果、本編の進行以外に多大な時間がかかってしまい、物語そのものに集中しづらくなってしまったんですよ。感覚的には、レベルアップの合間にピコっと物語を進めている感じ。本末転倒、みたいな。
もっとも、これは難易度調整や物語性向上に比重を置いてきた英雄伝説シリーズとしては???な作りなのですが、そういったベクトルで評価して済むかと言えば、そうとも言えないところもありまして。
というのも、この英雄伝説IV(PC98版)というゲーム。オープンシナリオというゲームシステムによって、サブイベント満載なゲームになっています。そうすることで自由度を高め、物語以上に、冒険することそのものを楽しんでもらおうとしていたような。そんな印象を受けるんですよ。
ただし、自由度の高いゲームとして見ても、出てくる敵が同じようなグラフィックの敵ばかりだったり、変わり映えしないダンジョンばかりだったりで、どこに行って何をしていても同じような印象しか得られず、サクッと飽きてしまう作りでしたけどね。
というのが、ぐらすの英雄伝説IVに対する認識でした。PC98版が発売された当初は。少ない小遣いをやりくりして購入したゲームでしたから、意地でクリアはしましたけど、物語も何もどーでもよくなっていて、一回クリアした後はノータッチ。記憶からもスッポリ削除したような扱いでした。というか削除していました。
Windows版リニューアル
それが、2003年だったか04年だったか。別の用事で大阪の日本橋に行った際、ふらっと入ったPCゲーム屋で、Win版の英雄伝説IVを発見。懐かしくなって購入。プレイ。
つД`)・゚・。・゚゚・*:. 。..。.:*・゚
敵の種類もダンジョンのパターンも画一的。オープンシナリオを廃したため、旅の自由度も低下していますから、あいかわらずゲーム性の面では褒められたものではないというか、自由度は下がっているというか。
ただし、PC98版の英雄伝説IVを従来の英雄伝説シリーズと同じベクトルで評価できないのと同じで、Win版の英雄伝説IVも、PC98版の英雄伝説IVと同じベクトルでは評価できないわけですよ。
オープンシナリオを廃し、サブイベントを大幅に削除したということは、その分、本編そのものの比重を高めてきたことを意味します。敵の強さも調整され、英雄伝説IIIと同じように、物語に沿って戦闘を消化していけば無問題。本編の物語一本に集中できるゲームへと大幅リニューアルを遂げたのが、Win版の英雄伝説IVでした。
物語的に見ても、基本的にはIV単体で物語は完結していますが、ポイントごとにIIIとVとの関係性を示唆する描写が加えられ、ガガーヴ・トリロジーとしての側面も強められています。幾重にも重ねられた「絆」の描写を見れば、丁寧に編み上げられた物語であることは十分に理解できるかと。
つまりですね。それまでの英雄伝説シリーズからの脱却を図ったのがPC98版。そこから逆に、それまでの(特にIIIのような)英雄伝説シリーズに戻したのがWin版。といったところなんですね。
フィードバック
PC98版からWindows版への変化。これは、PC98版で目指していたと思われる「自由度の高い冒険を楽しんでもらう」という新しいコンセプトが頓挫し、それを受けるようにして、原点である「物語ること」にファルコムが重点を置きなおした、つまり原点回帰したことを表しているのではないでしょうか。
ゲームの内容としては、IIIやVとWin版IVを比べても、それほど大きな変化はありません。多少のマイナーチェンジは施されていますが、劇的な変化はなく、基本的には同じベクトル上に存在していると言えるでしょう。
ただし、自由度を追及してゲーム性を高めたPC98版と、物語性を売りにして原点回帰したWin版。基本コンセプトが異なることで、一つの物語から二種類のゲームが生まれたのが、この「英雄伝説IV」です。
その二つの反響をフィードバックすれば、必然的に、どのレベルでゲーム性と物語性のバランスを取れば良いのかが見えてくるでしょう。そして、その結果として生まれたものが、以後の英雄伝説シリーズ、つまり「空の軌跡」というわけです。
自由度の面では、IVのオープンシナリオを進化させることで、VIでは「ブレイサークエスト」というシステムが生まれました。ですが、そういったサブイベントを盛り込みながらも、本編から意識を脱線させることなく、幾重にも伏線を織りこみながら、物語を展開させてきます。
英雄伝説IVの二度にわたる開発、試行錯誤を通じて、英雄伝説IIIの開発時点では不完全だった「ゲーム性と物語性のバランス」が、一気に向上したわけですね。
その意味では、結果的にですが、この英雄伝説IVの開発は、後の英雄伝説シリーズの進化&原点確認に大きな影響を及ぼしたように思えます。もちろん(特にWin版は)内容的にも楽しめるゲームですけどね。
■最後に
ということで、長くなりましたが「英雄伝説IV」語りは終了です。次回はいよいよガガーヴ・トリロジー最後の作品、海の檻歌について語ることになります。
トリロジー最後の作品だけあって、IIIやIVで明かされなかった謎が回収されることになりますから、そういった伏線回収も大きな見所になりますが、それだけでなく、IIIやIVで描かれたテーマの行方にも注目したいところ。
ぶっちゃけ、ぐらすの感想もどきを読むよりは、実際にプレイした方が実感をともなって理解することができると思いますが、それでも、読んでくださる方がいらっしゃいましたら、軽い参考程度にしていただければ幸いです。
それでは、また次回―。
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